ICIとPARP阻害薬の併用療法が日本で初承認 進行・再発子宮体がんの新たな治療が今後も次々と!

監修●西川忠曉 東京慈恵会医科大学産婦人科学講座講師/診療医長
取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2025年2月
更新:2025年2月


dMMRとpMMRとは?

ここで、DUO-E療法の違いで先ほど出てきたdMMRとpMMRについて説明しておきましょう。

MMR(mismatch repair:ミスマッチ修復機能)とは、DNAがコピーされるときに生じるコピーミスを修復して正常な遺伝子情報を維持する機能です。ところがMMRに変異が生じるとMSI-highになりがん化すると考えられています。

MMR機能が欠損している状態をdeficient(dMMR)、正常な状態をproficient(pMMR)と言います。dMMRはHot tumor(熱い腫瘍)、pMMRはCold tumor(冷たい腫瘍)と呼ばれています。

「pMMRはT細胞が少なく、免疫抑制性T細胞(Treg)によって免疫反応が抑制されていて、免疫チェックポイント阻害薬が効きにくい腫瘍です。pMMRの人にDUO-E療法を用いるときには、TC療法+イミフィンジ後の維持療法にイミフィンジ+リムパーザが保険で承認されました。それはあくまでもpMMRの方だけです」

イミフィンジ+リムパーザの維持療法をDUO-E Triplet(トリプレット)、イミフィンジ単剤の維持療法をDUO-E Doublet(ダブレット)と言います(図4)。

「卵巣がんはほとんどがCold tumorなので、卵巣がんと比較すると子宮体がんはICIの恩恵を受けやすいですし、他のがん種と比べても子宮体がんはICIの恩恵を受けやすいがんだと思います」(図5)

MMRは腫瘍を切除したとき検査するのですか?

「DUO-E療法のTripletかDoubletか、つまりリムパーザを上乗せできるかどうかを見るには、手術検体から免疫染色法で判断します。進行・再発例に関してはMMRを調べますが、Ⅰ期やⅡ期で全摘後に化学療法を行うときは、検査は保険適用になっていないのでMMRの検査を行うことはできません」

DUO-E療法の副作用はどのようなものがありますか?

「TC療法の副作用は、圧倒的に末梢神経障害の痺れです。がんが治癒しても痺れが半永久的に残ってしまうこともあるため、ここをなんとかしたいと考えています」

ICIのirAE(免疫関連有害事象)については、多種多様なものがあり、「irAEの対処法に対しては患者さん自身で解決できる問題ではないため、施設が組織としてマネジメントをしなければいけない副作用です」と西川さん。

DUO-E療法の場合は、基本的にはTC療法の副作用と、ICIのirAEが単純に足されたものになります。

「pMMRの方はリムパーザが加わるので、リムパーザの副作用も熟知しておく必要があります。一般的には、悪心、食欲低下、骨髄抑制による貧血などが出ます。長期的に見たときに急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群などの血液がんを発症することが知られていますが、頻度は1〜2%と低いことが分っています」

いつまで維持療法を続けるのですか?

「DUO-E療法の場合は、イミフィンジもしくはイミフィンジ+リムパーザを効いている限りは使い続けます。一方、NRG-GY018療法では維持療法でのキイトルーダは化学療法パートと合わせて最大2年となっているので、6週間ごとの投与の計14回で終了になります」

効いている限り続けるのは大変ですね。

「そうです。ですからたとえば、よく効いて3年4年と腫瘍の増悪がないときに、薬を延々と続けるのかということは経済的なこともあり、これから我々が向き合わなければいけない問題だと思います」

そして、西川さんは子宮体がんの早期発見についての話で締めました。

「子宮体がんは初期症状に限らず、不正出血につきます。子宮内膜に腫瘍ができると早くから出血が起こります。ですから8〜9割は不正出血で見つける機会があります。現在、子宮頸がん検診が自治体で行われています。そのときに実費にはなりますが、不正出血のない子宮体がんも見つけられる可能性がありますし、ぜひ超音波検査(エコー)を受けていただきたいですね」

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