「必ずまた、戻ってくるから」 第5回
6月28日 キビシイカードが揃う
病名:子宮頸部扁平上皮がん、膣微小浸潤扁平上皮がん
なんと2つのがんに侵されていたのですな~
病理検査結果:摘出子宮にがんの遺残あり、膣に微小浸潤扁平上皮がんがあり(完全に切除されている)リンパ節転移・右閉鎖節1個(生検リンパ節48個正常)
今後の方針候補案:
1.放射線療法:骨盤外照射50グレイ、*シスプラチンを併用(1回/週)
2.抗がん薬治療:放射線療法よりも治癒させる効果は弱い
抗がん薬として*タキソテール+シスプラチン(あるいはカルボプラチン)、*トポテシン+*アクプラ、6コースなどが推奨される
3.追加治療はしないで経過観察
副作用、後遺症はないが再発した場合の治癒率は低いというのが、病理検査結果を受けた 説明内容だった。
次にそれぞれの副作用と後遺症を挙げると放射線では先日、追加治療について悩んでいた際の記事に主だった後遺症を明記したので、その他特筆すべきことを挙げてみる。
1.直腸膣瘻(ちょくちょうちつろう):直腸に穴が開いて膣とつながり、便が膣から出てくることがある。人工肛門が必要となる
2.腸閉塞:放射線の影響で小腸が癒着すると腸の内容が通過しなくなる。ひどい場合は手術が必要になる。長期的には食事ができなくなり点滴食となる
3.膀胱膣瘻:膀胱と膣がつながって膣から尿がもれることがある。尿路変更術が推奨されることがある
4.水腎症:腎臓の機能がなくなり片側の場合は犠牲にし、両側の場合は腎不全となって腎臓に直接、管を挿入し、尿を排出することになる
5.リンパ浮腫:下肢、外陰に起きやすい
以上が放射線の副作用と後遺症として先日の質問から得た回答だ。
実は放射線と化学療法を組み合わせた場合、抗がん薬はシスプラチン少量だけなので、脱毛も少なく、週1回ですむ。かつては悪名高かったシスプラチンも、今では制吐薬も認可されて比較的楽ではあるという。しかし、シスプラチンには腎毒という大きな弊害がある。
次に治療計画で示された数種類の抗がん薬を用いる場合では副作用も激しく、毛髪もほとんど抜けてしまう。最も大きいのは手足のしびれだという。
今、目の前のことだけでなく 生きるために何を選ぶべきか?
とりあえずこれで、私が知りたかったことのすべてがわかった。1週間後の診察で、どう選択するかの返事を伝えなくてはならない。
入院中に見つけたのだけど、今年(2013年当時)の5月の研究発表記事によると、子宮頸がんのうち扁平上皮がんと腺がんがあるのだけど、比較的腺がんは予後(よご)が厳しいとされているが、再発した場合の予後においては「扁平上皮がんのほうが(予後が)困難」だとのデータが出ていた。
要するに上記3番目の「追加治療なしで経過観察」をして、再発した場合には延命はかなり難しいということだ。
自分が何を望むのか? どうしたいのか? 生きるとは? また死ぬとは? この難しい命題を踏まえて選択しなくてはならない。
おそらくどれを選択したとしても、100%後悔しないということにはならないだろう。
だからやっぱりどこで自分が納得するか、それしかないんだ。頭が痛いわな~~。
しかしながら、これらの副作用や後遺症がすべてのケースに必ず発症するというものではない。軽く出る場合も多く、必ずしもすべて重篤(じゅうとく)な発症になるということではない。しかし、開腹手術をした場合や子宮摘出した場合の障害の出方は、通常の3~5倍高まる可能性があるという説もある。
6月30日 最新の学会発表内容を判断材料にする
医療業界ではそういうときに使うのか~、と思いながら医師の話を聞いていた。
「やはり私たちの世界ではエビデンス(科学的根拠)を重視しますから」
要するに治療実績の科学的根拠のことだ。
先日もリンクした5月の産婦人科学会の発表のことだけど、これは捨て置けない事実だと思った。
子宮頸がんは、主に閉経以降の女性に多いとされる子宮体がんよりも若い女性に多いとされている。それだけに再発や転移のスピードも速いようだ。
日本産科婦人科学会第65回学術講演会で東京大学産婦人科学の佐藤雅和さん、川名敬さんが発表した内容から主たるところを抜粋引用してみる。(子宮頸癌根治手術後の再発症例では扁平上皮癌、骨盤内再発で予後不良な可能性【産科婦人科学会2013】2013/5/15 参照引用)子宮頸がんの手術療法施行例はI-II期であり、一般に再発率は低いが再発すると治療抵抗性となることが多く、再発後の予後は良好とは言えない。(略)
手術療法では、広汎子宮全摘術に加え、Ib2-IIb期には傍大動脈リンパ節郭清も施行した。
初回治療が手術療法のみだったのは10%で、術後放射線療法は63%、術後化学療法は27%に行われた。
再発部位は、骨盤内のみが33%、骨盤内+骨盤外は12%、骨盤外のみは55%だった。
再発後の全生存期間(再発OS)中央値は15.6カ月、5年生存率は19.1%となった。(略)
そのため組織型別に再発後OSを比較すると、一般的に予後が良好とされるSCC(扁平上皮がん)であるが、ひとたび再発した場合は有意に不良という結果になった。
再発後OS中央値はSCCで12.6カ月、non-SCCで39.9カ月となり、5年生存率はそれぞれ13.5%と30.2%となった。
骨盤内再発有で予後不良となる傾向が示された(p=0.0667)。SCC症例の再発部位別に予後をみると、再発後OS中央値は骨盤内再発有で11.5カ月、骨盤内再発無で18.5カ月、5年生存率はそれぞれ0%と25.4%となった(p=0.0211)。
SCC症例がnon-SCCと比べて有意に予後は不良であり、さらにSCC再発症例のうち、骨盤内再発を来した症例の予後は極めて不良であることが示された。
佐藤氏は「再発症例は、ほぼ全例で術後骨盤内外照射を施行されている。一般にSCCは放射線感受性がnon-SCCよりも高いが、それにも関わらず照射野内再発したSCCはnon-SCC以上に治療抵抗性が強いと考えられる。このようなSCC症例は、可能なら外科的摘出を考慮するか、化学療法の工夫や新たな治療法が待たれる」と話した。(引用終わり)
納得できる治療をするために
これは子宮頸がんの扁平上皮がんで手術をした後、放射線療法を受けた上で骨盤内に再発した場合、再発後全生存期間は1年を切るというデータで、かつ5年生存率は0%というかなりシビアな数字だというのが一目瞭然だ。
こういうデータを知りながらもこれから生きていかなければならないわけで、何ともつらいことである。
念のため付記すると、ネットにはどんな病気についてもいろいろな情報があり、私が書いていることを参考にされることもあるかもしれない。データや論拠の抜粋は参考にできるところもあるかもしれないが、基本、私が体験して調べている私的備忘録であることを改めて明記しておく。(続く)
*シスプラチン=商品名ブリプラチン/ランダ *タキソテール=一般名ドセタキセル *カンプト/トポテシン=一般名イリノテカン *アクプラ=一般名ネダプラチン