膵がんステージⅣ「余命7カ月」の宣告。絶望から這い上がり完治した男の物語「ゴミになってたまるか」(後編)

取材・文●髙橋良典
撮影●「がんサポート」編集部
発行:2018年12月
更新:2020年2月


「がんで悩んでいる人のお手伝いをしなさい」

川嶋さんはインスリンが不足して糖尿病の症状が悪化、腫瘍マーカーが上昇したことで、「本当の治療はこれからだ」と考えるようになった。

まず、がんとの闘病のときには肉を抜いて野菜中心の食事を摂ることを心掛けていた。糖尿病になってからは野菜中心の食事は変わらないものの、炭水化物を抜いて肉を多く摂取するように心掛けている。

「今まではお医者さんの手術と薬がメインで、自分が食事や運動に気を配るのはサブ。これからは自分自身が主治医で、生活習慣、食事、運動など日常生活すべてが自分の責任だと思うようになりました」

川嶋さんの病前(2006年:74㎏)、病中(2007年:51㎏)、病後(2016年:56㎏)の体重の変化

また川嶋さんは、がんと闘病中から社会参加と奉仕活動に積極的に参加している。NPO法人の代表などを務めているが、取り分け、がん患者から相談を受ければ何をおいても最優先にしているという。

「私がこうして生かされているのは、『がんで悩んでいる人たちのお手伝いをしなさい』という神様からのご命令だと思っているんです」

川嶋さんは、がん患者さんを対象にした「笑って歌いましょう会」の設立準備中。そこには10数人の仲間が参加の予定。

「この3月に私と同じ膵がんステージⅣで手術が出来ず、余命3カ月と宣告された60代の女性ですが、もう6カ月経つのにお元気で私と一緒にカラオケをやったりしているんですよ。そういう人がいてくれると私も元気を貰います」

『すい臓がんステージⅣから還ってきた男』の出版パーティーで。ロータリー合唱団と共に歌う川嶋さん(左から2人目)

人生100年への挑戦

「病気のことばかり考えると、心まで病気になってしまいます。体の病は仕方ないとしても、心まで病気になってはいけないと思います。暇があるからクヨクヨ考える。暇を作らず、何かに没頭する生活を送るのが一番」と話す。抗がん薬治療を終えた今も「出来るだけ暇をつくらない生活」を心掛けている。

川嶋さんががんと共に歩んだ11年間の日々を振り返って、学んだことは以下のことだという。

①いままでの自分の考え方を変える
②がんは生活習慣病だから生活習慣を見直す
③自分の健康づくりは自分でする
④前を向いて生きる
⑤「ありがとう」の実践

2017年12月19日、ついに川嶋さんはがんでの定期検診を終了していいと言い渡された。

がんとの決別の瞬間であった。血糖値も安定しているいま、川嶋さんは人生100年へ挑戦すべく、「食事の健康」「体の健康」「頭の健康」「心の健康」を大切に年齢に合わせた生活習慣と社会奉仕に邁進している。

そしていま、青森県内で「すい臓がんステージⅣから還ってきた男の『健康探しの旅』」というタイトルで講演活動もしている。

「余命7カ月」と宣告された男の新たな挑戦がいま始まった。

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