舌がんになった医師が、再発予防のため辿り着いた結論とは 16時間の空腹時間を作ってみることを勧めます
空腹の時間を作ることはがん予防になる⁉︎
体内にある40兆の細胞は日々、分裂を繰り返して生まれ変わっている。しかし、何らかの原因でDNAが傷つけられると細胞のコピーミスが生じ、がん細胞が生まれるきっかけになる。また胃や腸などの臓器の表面に傷がつき、その傷が修復される際にミスが発生してがん細胞が生まれることもある。ただ人間の体内には免疫細胞を始め二重三重に防御システムが働き、がん細胞を除去してくれる仕組みがあり、がん細胞から守られている。
しかし、加齢などにより修復機能や免疫機能が衰えてくると、がん細胞は生き残り増殖を始める。
では、空腹の時間を作ることでがんを予防することができるのだろうか。
青木さんに訊いた。
「空腹によってオートファジーが働くと、がん細胞を発生させる原因の1つである活性酸素の働きが抑制されます。活性酸素の多くは細胞内のミトコンドリアで作られており、古く質の悪いミトコンドリアから活性酸素が多く発生し、新しく質の良いミトコンドリアでは活性酸素の発生が抑えられています。『空腹の時間を作る』ことでオートファジーが働き、古くなったミトコンドリアが新しく生まれ変われば、活性酸素も減るのです。このように『空腹の時間を作る』ことこそが、がん予防のためには効果的なのです」
青木さんはさらに続けて「現代人は1日3食、食べていますが、そもそも食べ過ぎなのです。食べ過ぎだから糖尿病や高脂血症などの動脈硬化性疾患、脳出血や脳梗塞、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患、がんの原因にもなるのです。古くは、縄文人は数日間の絶食は当たり前で、ほとんど病気がなかったと言われています。江戸時代でも1日2食。日本人が食べ過ぎるようになった昭和40年以降からがんや糖尿病、高血圧などの生活習慣病が急激に増加しているのと軌を一にしています」と話す。
選択肢の1つとして考えてみてもいいのでは
では、既に今がんに罹っている患者さんがこの方法を実践したらどうなのだろうか。
「ただ、気をつけなければいけないのは、すでにがんが体内に発生している場合には空腹の時間を作ることが逆効果になる怖れもあるということです。
それは、空腹の時間を作ることでオートファジーが働くと、自分で栄養を作り出すためがん細胞が生き残りやすくなってしまうからです。ですから、すでにがんを発症している患者さんは医師の指示に従うようにしてください」
と言いながら、でも、と青木さんは更に続けた。
「大腸がんの初期で内視鏡でがんを取り切った人とか、太った乳がん患者さんの場合などは試してみられたらどうでしょうか。食事を制限するのは、その状態に慣れるまではある程度ストレスがかかります。そのストレスがホルミシス効果(過度にかかると有害だが少しであれば人体に有益な効果をもたらす現象のこと)があっていいのかなと思います。
病院から匙を投げられた患者さんで���、まだ元気で太っているのなら慢性炎症も抑え、活性酸素の働きも抑え、ミトコンドリアの活性は上がるし、免疫力を上げ、ホルミシス効果も期待できるし、オートファジー以外では、がんを叩く方向に向かうのだから選択肢の1つとして考えてみてもいいんじゃないでしょうか」
この生活を9年続けて、いたって快調です
最後に青木さんはこう締めくくってくれた。
「よく断食道場に行く人がいますが、僕はまったく意味がないと思いますね。だって1週間なら1週間、断食しても道場を出てしまえば、また普段の生活に戻るわけですからね。それでしたら、日頃から空腹の時間を設けて体の代謝状況を変えていったほうが絶対、健康のためには有益ですよ。お金もかからないしね。
食道がん、大腸がん、閉経後乳がん、子宮体がん、腎がん、これらのがんは明らかに肥満によって増加しているがんなので、これらのがんに罹った患者さんは、もし患者さんが太っている場合には減量するという意味でも、16時間の空腹時間を作ってみることはいいことではないかと思いますよ。
空腹の時間を作ることによって、普段の体の代謝状態がかなり変わってきます。体の代謝状態が変わることによって、今あるがんの状態に変化が表れることは充分に考えられますから、いろんなものを試しても、どれもうまいこといかなかった場合には、断食道場なんかに行かなくて、まずはご自宅で16時間空腹の時間を作ることから始められたらどうでしょうか。
最初のうちは我慢するのが難しければ、合間にナッツ類を食べて空腹をしのぐのも手です。『長時間ものを食べない生活』は慣れるに従って、ナッツ類も食べなくてもいい体になっていきます。まずは2カ月でも3カ月でも試してもらってもいいのではないでしょうか。大事なことは無理せず、長く続けることです。私はこの生活をもう9年も続けていますが、いたって快調ですよ」
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