自分がその治療に安心感を得られるかどうかが重要 4期の大腸がんを克服した開業医
実践した免疫強化法とは

鹿島田さんの実践したがん免疫強化療法とは、橋本敬三さんから教わった呼吸・食事・運動・ストレス管理・生活環境の5項目だ。
「がん細胞が好む状態は、『低体温・低酸素・高血糖』です。呼吸でいえば、浅い呼吸では体内に取り入れる酸素の量が少なく、低酸素状態になります。ですから、意識して深くて適度に速い呼吸法に改善できれば、がん細胞の嫌う『高体温・高酸素』な体に変えることができます」
「食事は肉を主体の食事から、魚を主体にした糖質控えめな食事にしました。
しっかり睡眠を取り、月曜日の朝食は抜くという『プチ断食』を行い、食べ過ぎないようにする。しかし、あまり厳密にやるとそれがストレスになるので、適度に実行するのがいい。
橋本敬三先生の理論ですが、一番大切なことは、『あとが気持ちいいは、体にいい』、ということです。それを食事に当てはめてみれば、『ああ、美味しかった』、という一言が出れば素晴らしい食事だったということです。それは食べている最中も美味しくて、食べ終わったあとも満足感があるということです。このような食事が理想だということです。食材についても、『ああ美味しかった』、という食材は、体にいい食材ですよ」
ストレス管理に重点を置いた生活を実践したのだ。
「それは一度崖っぷちに追い込まれ、人生に限りがあるとわかったので、これからは自分の気持ちに素直に生きようと思ったからです」
3カ所の肝転移が消えた
鹿島田さんがこのような免疫アップ生活を送った結果、退院から約8カ月後の2019年5月の検査の結果、肝臓に転移していた3カ所のがんのうちの小さい2カ所の腫瘍が消えていた。
さらに約1年後の2019年9月11日には造影CT検査の結果、残る1カ所の大きめのがんも消失していた。






鹿島田さんは驚いていた主治医に、「私みたいにがんが消えた例はあるのですか?」と尋ねると、「1回だけ抗がん薬治療を行って消えた例が1例だけありますが、鹿島田先生のようなケースは初めてで、医局で話題になっています」との答が返ってきたという。
実は、鹿島田さんは「がん免疫強化療法」の他にも2剤の薬を服用していた。
「抗がん薬としては承認されていませんが、私は医師ですので糖尿病治療薬として使用されているメトホルミン(一般名メトホルミン塩酸塩)とB型肝炎治療薬として使用されているセロシオン(同プロパゲルマニウム)を、主治医にも報告して服用していました。これらの薬を服用したのは、副作用がほとんどないに等しいからです。統合医療を行っているとよく起こることなんですが、結果的にがんが消失することはあるんです」
鹿島田さんはがん患者さんや家族のために是非心に留めておいてほしい、とこうアドバイスしてくれた。
「自分ががんに罹ってわかったのですが、誰に何をやってもらい自分で何をしたら一番安心できるか、その安心感を得ることが非常に大切です。ですから、いまかかっている病院の主治医が信頼でき、安心感が持てるのならそれでいいのです。そうでないなら、安心できる治療を探すしかありません。治療する側が内心、『完治は無理だな』、と思っている場合、そんな医師にすがって治ると本当に思えますか? ということです。ですから、そうなったときにどうするか、ということです。
何をすれば安心感を得られるのかは、個々人によってみんな違います。また、どういう基準でその治療をやるかやらないかを決めるのには、私自身はある程度有効性のあるエビデンス(科学的根拠)がないと信用できません。
次がQOLなんですよ。病気になるのも治るのも同じ順番で起きます。体調、機能(内科的検査値の異常・正常化)、器質(外科的異常の発生・修復)の順番です。
入り口の体調が良くならないと先はないのです。ということは、副作用が強い薬は最初から体調を悪くして自身のQOLを落とします。この条件に当てはまるものを探した結果がセロシオンやメトホルミンだったのです」
現在、半年に1回、検査を受けているが、体調は頗(すこぶ)るいいという。
最後に鹿島田さんは、医療の4つの目的についてこう語ってくれた。
「まず、治癒、次に延命、3番目が症状の軽減、最後が予防です。ほとんどの医師の頭の中ではこの順番で治療を選定しているのです。がん治療を例にとれば、治癒を目的として、まず病巣の切除手術が行われる。2番目に多くの場合、治癒ではなく延命が目的で患者さんがつらくても抗がん薬治療を行うことになります。3番目が緩和ケアなどの症状軽減が目的になります。世の中で行われている治療の大部分がこの3つですね。最後が予防医療なんですが、医療全体の中では軽く見られているのは残念です」
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