若くして乳がんになっても、私は、生・き・る

取材・文:吉田健城
発行:2010年7月
更新:2019年7月

初発38歳
同年代の患者仲間にとても元気づけられた
嘉松紀子さん(48歳)

平成13年、38歳で乳がんがみつかり、がん専門病院で全摘手術。初発から4年半後に、再発。その後、骨転移。若年者乳がんの会ひろばに参加し、現在も他の患者さんと交流を深めている

30代で乳がん。そして再発

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初めてがんがみつかったのはちょうど10年前、38歳のときでした。乳房にしこりがあることに気がついて看護師として勤務する病院で診てもらったところ、悪性腫瘍であることがわかりました。当時、結婚はしていましたが、子供はいなかったので、「出産経験を終えてからの発症だったらよかったのに……」と落ち込みました。

実は数年前にしこりができて診てもらったら、良性の乳腺線維腺腫だったんです。良性であってほしいと思っていたので、結果を聞かされたときは『まさか……』と大きなショックを受けました。手に触れる部分は1センチにも満たない小さいしこりでしたが、浸潤がんでタチの悪いものでした。

このときは、がんの専門病院で全摘手術を受けました。中心部分が1センチでしたので今なら温存手術が可能だったかもしれませんが、温存手術が不安で目に見えない広がりを考慮に入れて全摘手術を自ら選択しました。私自身も再発が怖かったし、主人も「手術をすれば治るんだから」と言ってくれたので、再発のリスクを考えて全摘手術を受けることを決めました。

しかし、その後、再発を経験してしまいます。主治医が他の病院に移ったので、新しい病院で検査を受けたところ、再発がみつかりました。幸い、遠隔転移はなく、がんも1カ所だけでしたので主治医からは「そんなに心配することはない。1つなので、切ってから放射線治療と化学療法をすれば大丈夫」と言われました。それでも再発ですから、ショックはかなりありました。

再発後は、放射線治療を行ったあと化学療法に入りました。その後、ホルモン剤に変わり、体が楽になったので落ちた体力を取り戻そうとジムに通い始めたところ、股関節が痛みだしたんです。診てもらうと、骨転移でした。幸い、化学療法が効いて、ホルモン剤に変わり、現在も薬物治療を試行錯誤中です。

パートナーがいて救われた

私は看護師を職業としているため、患者になりきれないことが1番苦しかった。医療の現場にずっといて医療を提供する側の大変さをよく知っているので、そうなってしまうんです。

そこで、主治医から誘われた若年者乳がんの会ひろばに参加することにしました。自分は医療従事者だけれども純粋な1患者になるためには、他の人との交流が大切だと感じたからです。一方、初発治療後すぐに仕事に復帰し、生活パターンを変えないことが大事と信じていました。けれど、乳がんという病気は世代によって病気に対する考え方、とらえ方が異なります。実際、会に参加し、真に共感し合える同年代の患者仲間たちと交流することでとても元気づけられました。

若い乳がん患者は独身の方も多いんですが、30代での初発、再発を乗���越えられたのは主人の支えがあったからだと思っています。つらくて余裕がなくなってあたってしまっても、主人は優しく受けとめてくれます。また、主人の何気ない会話に癒やされることが度々あります。家にはだいぶ前からテレビがないんですが、2人だけの会話を大事にしたいとの考えからです。


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