合唱があるからがんと共存できる 膀胱がんと診断され5回の手術

取材・文●髙橋良典
写真●「がんサポート」編集部
発行:2021年12月
更新:2021年12月


最近5度目の手術を行う

緒方さんはこれまで空振りも含めて都合、5回経尿道的膀胱腫瘍切除術を受けている。

最近では今年(2021年)の4月のことだ。

2月頃から冷たい水などで手を洗ったりすると尿意を催すことが多くなり、なんかおかしいとは思っていた。しかし、それ以外の症状は何もなかったので安心し、毎月の検査に行くことも忘れていたぐらいだ。

しかし、頻繁に尿意を催すので「尿意がどうもおかしいのですが……」と主治医に訴えると、「それでは超音波検査をしましょう」と、膀胱と腎臓の超音波検査をすることになった。

すると検査をした主治医から「膀胱の中に異物のようなものがありますね」と言われ、はっきりさせるため内視鏡検査を受けた。そして、4月30日に第5回目の経尿道的膀胱腫瘍切除術を受けた。

現在は、再発予防のためピノルビンを注入する治療を月1度受けているという。しばらく続けてみて何でもないようなら、尿検査のみの経過観察に移る予定だ。

「私の膀胱がんの場合、モグラ叩きのようにがんが出来れば、早めに見つけて切除するしか方法はないのですね。がんが再発しないようにと現在使っている抗がん薬がある程度、再発予防にはなっていると思うんです。実際、抗がん薬注入を止めてしばらくすると再発していますからね」

合唱と出合う

緒方さんには仕事以外で熱心に取り組んでいる趣味がある。その1つが合唱だ。

現在、2つの合唱団に所属していて、その1つ「東京コール・フリーデ」という合唱団の団長を務めている。

「東京コール・フリーデ」の定期演奏会で。下段右端が緒方さん

緒方さんが合唱を始めるようになったそもそものきっかけは22~23年前に遡る。

その当時、緒方さんは信州諏訪で省エネの提案をするなどの仕事をしていた。

2月の寒い時期だった。街中に氷でコップを作り、その中にキャンドルを立てて火を灯す何とも幻想的な催しがアイスキャンドル祭りだ。そのイベントに併せるように、上諏訪駅前で音楽のイベントが行われていた。

その中に諏訪合唱団の人たちの合唱の歌声がなかなかいい響きに聴こえた。緒方さんはその響きに魅了され、すぐに諏訪合唱団に入団する決心し、バスのパートを担当することになった

「歌は好きでしたが、それまで合唱の経験はまったくありませんでしたが、本当にいい響きだったのでその響きに魅了されたのでしょうね」

それが、緒方さんと合唱の最初の出会いだった。

仕事には転勤がつきものである。諏訪を離れ、東京に戻るが1年で大阪へ転勤する。

「大阪では別の合唱団に入団しました」というくらい転勤先でも合唱団を捜���て入団するほどに合唱にのめり込んでいった。

趣味のスケッチ。八ヶ岳

がんと共存しながらいまを楽しむ合唱の魅力

緒方さんは合唱の魅力についてこう語る。

「みんなと声を合わせて歌うことは、結果的に自分ががんであることと共存しながらも今を楽しませてくれるありがたい存在ですね。合唱の魅力はやはりハーモニーが出来上がっていくことですね。最初はザワザワしたものだけど、練習を重ねるうちに段々とハーモニーが出来てくると最後はゾクッとする瞬間があり、それが魅力なんだと思いますね。それと声を出して歌うということは健康にいいと思います」

来年(2022年)1月23日、東京の浜離宮朝日ホールで東京コール・フリーデ第17回定期演奏会が開催され、団長として舞台に立つ。

「未来へつづけ」と題したその演奏会で緒方さんは団長としてモーツァルトの「雀ミサ」「サンクタ・マリア」、また日本の楽曲、「群青」「花は咲く」「時代」童謡・唱歌「ふるさと」「夕焼け小焼け」など、団員みんなと一緒にいいハーモニーを響かせるため、いま練習に励んでいる。

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