仕事優先で放射線治療+ホルモン併用療法を選ぶ 思い立ってPSA検査すると前立腺がん
照射前に尿量の調整で思わぬ苦労が

ホルモン療法開始から半年後、2023年5月から4週間にわたって放射線治療が始まった。
「放射線を照射しているのはたった1分くらいなのですが、それまでの準備がすごく大変でしたね」
五十嵐さんは放射線治療について知識が全くなかったので、面食らうことが度々だったという。
前立腺がんの場合、放射線治療を受ける前に、膀胱に一定量の尿を溜めておかなくてはならない。それは膀胱がある程度、膨らんでいない状態で放射線を照射すると、放射線が当たるため膀胱や腸に障害が出やすいからだ。
「ですから、放射線照射前には尿が一定量溜まっているかを見るためにエコー検査を行ないます。たとえば、治療が9時からスタートするとなると、8時までに水を飲んで、それからは排尿することができないわけです。私の家から病院までは30分くらい時間がかかるのですが、途中でトイレに行ってしまうと、エコー検査で尿が足りないと言われてしまうのです。そのときは、コーヒー缶を2本くらいと水のペットボトルを持っていって、尿が溜まるのを待つわけです。
しかし、なかなか溜まらず、尿が出そうになるギリギリまで待たなくてはダメなのです。それはものすごく苦痛でした。50ccくらい出してください、と言われてもそんなに器用に出せるものではありませんよ。それで膀胱が空になってしまって、また1時間くらい水を飲みながら我慢する、その繰り返しでした。放射線治療は順番があるので、自分の順番をパスしてしまうと、また待たなくてはいけない。適量が溜まったとしても、順番待ちがあるので思いもかけない苦労でしたね」
五十嵐さんの場合、放射線治療による後遺症としては、たまに尿漏れがある程度だと言う。
「たとえば、水道の蛇口をひねって水を出したりするとき、その水の音に反応して尿が漏れてしまうことがあります」
PSA値が2回続けて0.2を超えたら再発の疑いと

ミャンマー関係の仕事に従事していた五十嵐さんだが、頼まれていたレポートを提出後2023年4月に仕事から完全に撤退した。
「ミャンマーでは2021年2月にミャンマー国軍による軍事クーデターが起こったことで世情不安が勃発したことが大きな原因です」
現在、東南アジアからの留学生など、首都圏での住宅確保が難しい人たちのために住居を提供する友人の仕事に協力している。
前��腺がん治療後は、健康には留意している。
「その後、体重も増えているし、ラジオ体操をするため毎日会場まで往復7,000歩、歩いています。この1年間でも毎日1万2,000歩くらいは歩いています。お酒は、毎日飲んでいますよ。主治医に治療期間中は飲酒は控えたほうがいいか尋ねたら、その必要はありませんと言ってくれたので、大手を振って毎日飲んでいます。タバコはミャンマーに行ったときだけ1日15本くらい吸っていたのですが、4年前に止めました」
でも、最後にこうも話てくれた。
「3カ月に1度の検査では現在、PSA値は0.0001まで低下していますが、主治医からは、3カ月ごとの検診でPSA値が0.2を超えることが2回連続したら、再発を疑わなければいけない、と言われています」
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