自分の体験をユーチューバーとして発信 末梢性T細胞リンパ腫に罹患して

取材・文●髙橋良典
写真提供●カルピンTV
発行:2024年8月
更新:2024年8月


がんに罹患して新しい発見が

ところが、退院して1カ月も経たないうちに再発した。熱が出たため、CT検査を行ったところ再発がわかったのだ。再発はしたが、3つ目に使ったイストダックスを通院で1~2カ月投与し寛解する。

「その後は抗がん薬を使用することなく自宅での生活が送れているのですが、移植後は免疫抑制剤を服用しなくてはいけないので、免疫力がかなり低くなっていました。丁度その頃に新型コロナの流行が始まり、週1回の通院以外は外出しない生活を3年近く送ることになりました」

悪性リンパ腫に罹患したときは、大学を休学して、退院して1年間くらいは授業はリモートで行われた。1年経つとリモートの授業も少なくなってきて、対面授業に切り替わったので、大学側に病気の事情を説明して、リモートで授業が受けられないか交渉したが、対応してもらえなかった。

「このまま自分の体を危険にさらしてまで、あまり興味の持てない授業を受け続けるのも意味がないではないかと、退院してから約1年後に退学しました」

退学後、「なるべく外に出ないで、自宅で何かできることはないか」と考えた末、ユーチューバーなら外に出なくてもできるし、うまくいけば収入が得られるとこの道に進むことにした。

ゲーム大好きがんサバイバーとしてYouTubeで発信し始める

「初めはゲームのプレイ実況を1年くらいやっていました。2年目くらいから顔出しして、自分のがん体験を語り始めました。チャンネルの方向性として体験談を発信するということがあったのですが、その体験談も話し尽くしたこともあり、現在では、がんになった人間がいまどういうふうに生活できているのか、を中心にやりたいことをやったり、したいことをしている映像を配信しています」

現在の体調は、目や肌の乾燥がひどく、目薬やローションは欠かせない。それに肝臓にダメージが出てきて、肝臓と闘っているという状態だ。造血幹細胞移植を行うと、移植後にGVHDに苦しむ患者が多くいる。彼の場合もそうだ。

そして現在も免疫抑制剤を飲み続けている。

「造血幹移植をした場合、免疫抑制剤はだいたい1年くらいで終わるというのが普通らしいのですが、僕はもう4年飲み続けています。だから外出時もなるべく人出の少ないところとか、マスクしたり消毒を頻繫にしたりとかして注意していたこともあって、新型コロナやインフルエンザには1回も罹らなかったですね。ですから、同じような免疫力の弱い人に自分の行動パターンが届けばいいなと思っています」

高等学校では令和4年度からがん教育は必修化されている。

「先日は県内の高校で、僕のがん体験談を1時間ほど話しました。こういった��験も楽しいな、といまは思うようになったのですが、ユーチューバーを始めた頃は正直いって喋りにはあまり自信がありませんでした。がんを経験して大きく変わったところは、自分が病気を経験したことで他人への配慮が以前よりはできるようになったと思います。

それと病気が寛解したことで、いまこうやって生きていられるので、1日1日を大事に悔いのない生き方をしたいと思っています。両親は僕のやりたいことには協力的で、『自分がやりたいことをやりなさい』と言ってくれています」

県内の高校で「がん教育」というタイトルで講演中

高校生にとっては、がんは年寄りが罹る病気と、身近に感じることはなかなか難しい。だから、カルピンさんのがん体験談は彼らの心に他人事ではない共感を呼び起こしたに違いない。

1 2

同じカテゴリーの最新記事