つらさの終わりは必ず来ると伝えたい 直腸がんの転移・再発・ストーマ・尿漏れの6年

取材・文●髙橋良典
写真提供●佐々木香織
発行:2024年12月
更新:2024年12月


局所再発手術で尿漏れに

「放射線治療もしているのに、『また局所再発かい、しつこい奴がおるわ』という感じだったですね」

今回は術前化学療法を行い、手術に臨んだのだが、子宮の奥にあるがんが取れないということで、子宮を摘出することになった。その際、膀胱が若干癒着していて、放射線照射の晩期障害で膀胱や小腸が脆くなっていたため、それを剥がすときに膀胱の壁に傷が付き、膣から尿が常に漏れる状態になった。

「ですから現在、排尿障害に苦しんでいて、オムツとパッドを常時、使用している状態です。この状態は死ぬまで続けていかなければならなくて、とてもつらいです。その状態を軽減する方法はないか探ってみました。しかし、それらはすべて絶たれてしまい、これが私の新しい体で、これが私の排尿スタイルなんだと受け入れることに決めました。旅行にも行きますが、オムツが嵩張って大変です。私の使用しているオムツはそこらのかわいい尿漏れ用ではなく、介護用の大きいものでないとダメだからです」

先日ひとり旅した奈良・橿原神宮の朝に

オムツをするような生活になってからは、ストーマについて佐々木さんはどう思っているのだろうか。

「とくにオムツ生活になってから、ストーマになっていることに何も感じなくなりました。オムツに比べたらストーマはこんなありがたい話はないです。私はつらい排便障害を経験してからのストーマなのでそう思っているのかもしれません。ですから最初のスタートがストーマの人は受け入れ難いかも知れませんが。外出時は、オムツをその都度捨てなくてはいけないので、そのためのゴミ箱探しで大変ですが、赤ちゃん用のトイレはオムツを捨てる場所があるので助かります。尿は次々と作られて、それを溜めておくのが膀胱なんですが、私の膀胱は溜めることができないので、チョロチョロ出てくるのです。尿取りパッドは2時間持てばいい方ですね。ですから外出するときには大量の尿取りパッドが必ず必要になります。それを持って外出することはとても煩わしいですね」

つらさの終わりは必ず来る

佐々木さんは現在、女性のための大腸がん・消化器相談コニュニティー「ピアリング・ブルー」の代表を務めている。

「乳がん・婦人科がんのコミュニティが7年前から立ち上がっていて、そこで使用していた専用のアプリを使って会員登録した人たちが匿名で書き込みをしたり会員同士でのやりとりができる。そこで患者同士が言葉での支え合いを行なっているという活動なのですが、乳がん・婦人科がんの患者同士では存在していたのです。私は大腸がんに罹患したときにその存在を知っていたので、私も入会したいと希望したのですが、大腸がんだったので入会は叶わなかったのです」

そこで、佐々木さんはYouTubeで大腸がんの経験を語る「大腸がん カロリーナ」というチャンネルを立ち上げた。

YouTubeで大腸がんの経験を語る「大腸がん カロリーナ」

「そのうち、ピアリングに私だけでなく、他のがん種の方からも入会したいという声が寄せられてきて、そのなかでも大腸がんの人からの声が多く、ピアリングからカロリーナとタッグを組んで、ブルー(ブルーは大腸がんのシンボルカラー)をやりませんか、というお話をいただいて、2023年4月に『ピアリング・ブルー』がスタートし、5月から代表として活動しています」

2024年11月現在、会員数は約900名。入会資格は本人が大腸がんなど消化器がん患者であることが条件となっている。

「どうして女性だけかという疑問は常に持ってはいるのですが、女性同士という安心感は何物にも代えがたい。とくに排尿、排便についての悩みや生殖器にも関わるので、女性だけの会という安心感があってこそ成り立っている組織でもあるのです。男性版も考えてはいるのですが、月々のサーバー代等の費用や実務面などを考えると簡単なことではないというのが現状です」

会の運営費用は、大学や企業の研究等に協力するなどして捻出しているという。

佐々木さんには、自分の体験から得たことで読者に伝えたいメッセージがある。

「がんのイメージはどこかで死と繋がっていると思いますが、元気でもがんに罹ることもあるし、たとえ、がんであっても元気でいられることもあるということをまず伝えたいのです。とくに大腸がんであれば、カメラをお尻から入れて検査をすれば、ごく早期で発見できる臓器でもあるわけです。だから私は大切な人には大腸内視鏡の検査をするように勧めています。私は大腸がんに罹って6年になりますが、その間、肉体的にもさまざまな障害も出てメンタル的にも落ち込んだりしましたが、でも、そのつらさは一生涯続くことではなく、必ず立ち上がれるときが来るのです。いまはつらくしんどい思いをしている人がいれば、どこかでつらさの終わりは必ず来る、と伝えたいのです」

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