早期発見、治療が何より 早い処置が大切なのは政治も同じです 若き日に甲状腺がんの手術を受けた政治家・小沢一郎さん(71)

取材・文●西条 泰
撮影●向井 渉
発行:2014年1月
更新:2018年3月

自己診断と定期検診 早く見つければ怖くない

小沢さんはこれまで、何人もがんを患う人々を見てきた。義理の弟は急速に進行した食道がんで若くして亡くなった。一方で、ステージⅢの食道がんと診断されながら転移していなかったことが幸いして元気になった親しい知人もいる。大腸がんが進行して亡くなった人もいた。そのような周囲の様子と自分の体験を合わせて話す。

「胃や腸などの消化器のがんは便を見ればわかるといいます。基礎的な知識としてそれをわかっていなければならない。僕自身は普段から注意しています。初歩的な健康診断を自分自身でしています。そして、たまには医療機関で健康診断を受ける、そういうことが大切だと思っています。

僕が気にしているのは、便とのど。痔は鮮血だけど消化器からの出血は黒くなっていますよね。のどは、飲み込むときに違和感がないか。そういった基本的なことで、食べ物や体に気をつけていると、早く異常がわかるし、早くわかれば怖くはない。がんだって早く見つかれば、普通の病気と似たようなものです」

心臓疾患での入院を経て悟ったこと

40歳代で2年間自民党幹事長を務め、辣腕ぶりを発揮した。そんな1991年、心筋梗塞の症状に襲われた。

「どんな仕事でも同じと思いますが、とくに政治家の場合は病気で入院することを極度に隠したがりますよね。それが一番いけない。僕はすぐに救急車を呼んで、病院に行きました。そこでの処置で血の塊が溶けて血管が通るようになったから大丈夫だったんですけれど、やはり何でも早い手当てが大切ということでしょうね。そのことはしょっちゅう、いろいろな場で言っています。

小渕さん(故小渕恵三元首相)が倒れたときには、午後8時ごろおかしくなっちゃって、午前1時か2時ごろ医者に連れて行ったといいます。それも個人の車で。救急車を呼べば良かったのになと、残念に思います」

心臓を患っての入院を機に、いっそう身体に気を使うようになった。

「一番言われたのは、『何を飲んでも何を食べてもいいけど早寝早起きをすること』でした。それが健康の一番の源。ストレスも取れるし、ひと寝入りすれば、まずイヤなことも半分は忘れるから(笑)」

「早起きは三文の徳!!」大切な1時間

そして、もうひとつ始まった習慣がある。朝の散歩だ。「最初は30~40分ずつ歩きました。今は1時間です。健康のもとですね、規則正しい生活は。早起きは三文の徳というけれど、本当に昔の人の言う通り」

午前6時起床。体操をしたあとに、自宅の近所を散歩している。以前はもっと早く起きていた��、警護のSPが始発電車で来ても間に合わないため、少し遅くしたという。番記者に囲まれて住宅街を歩く小沢さんをTVで見たことのある人も多いだろう。政治記者は何かネタを取ろうとするが……。

「散歩のときは何にも考えてませんよ。隣近所の人がいっぱいいるから挨拶しながら歩いてます。考えたり悩んだりするのは眠れないとき。考えるから眠れないのではなくて、眠れないときにいろいろ考えたりするんです。朝は気持ちよく無心で歩きます」

規則正しい生活を〝応援する〟助っ人もいる。2匹の小さな犬だ。

「ワンコ(犬)に毎朝エサをつくってあげるんです。僕は生き物好きだからワンコだけでなくいっぱい飼っていて、ワンコの朝ごはんだけでなく、鳥や魚の世話をしたり、植木鉢の水やりなどをしてから家を出ます。いい時間ですね。ここでも何も考えずに」

衆議院議員会館の執務机にて

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