早期発見、治療が何より 早い処置が大切なのは政治も同じです 若き日に甲状腺がんの手術を受けた政治家・小沢一郎さん(71)
「ストレス? 感じません でも、あのときは……」
自民党時代から新党の代表としての現在まで、常に厳しい政治の世界に身を置き続けてきた。ストレスも相当のものだろう。
「病気はストレスが原因という人がいますね。がんもそれが原因ではという説もあります。私もそのような気がします。自分ではあまり感じないほうですが。人それぞれにストレスは違うのです」
あえて、一番ストレスになった出来事を聞いた。小沢さんは2009年に始まる政治資金をめぐる検察やマスコミとの〝闘争〟を挙げた。
「そうですね。検察にめちゃくちゃやられたときでしょうね。マスコミと一緒になって毎日、毎日だから。『何くそ、僕は何も間違っていはいない』と思っていても、毎日犯罪人みたいにやられたから。それ以外、政治闘争でストレスなんていうことはないですね。あれはひどかった。そういうときでも散歩は絶対にしていましたよ」
この件に関しては、強制起訴の議決に用いられた検察側の資料にねつ造があったことが明らかになっている。
原発事故後に増えている福島の甲状腺がん
今の政治状況についても聞いた。
「自民党政権になったけど、かつての自民党とは変質しましたね」
自分が主流派だったころからは、党の考え方が大きく転換したと指摘する。
「かつての自民党は国土の均衡ある発展、すなわち大都会だけでなく地方もみな同じように発展していくという考え方だったんですが、今は、東京一極集中、産業分野で見てもとにかく生産性・競争力の高い大企業をさらに大きくしている。地域間格差、産業間格差、会社間格差……。雇用形態もどんどん非正規社員の増加に向かっている。広がり続ける格差は日本を非常にいびつな社会にします」
生活の党・党首としての顔になった。
「医療もTPP(環太平洋パートナーシップ協定)の大きな影響を受けます。このまま政府の方針通りに進むと、国民皆保険は崩壊しますよ。米国みたいに医療機関にかかれない人がたくさん出てきてしまう」
大震災後の政府の対応にも、批判を強める。自らの若い時代のがん経験も根底にある。
「大震災での原発事故の影響で、甲状腺がんにかかる福島県の子供が増えているのです。これからさらに増えるでしょう。チェルノブイリの事故のときも3~4年以降に増えましたから。原発事故の後遺症は想像以上に深刻です。政府は信じられないくらい『大丈夫だ、大丈夫だ』と言っているけれど。とくに放射能による甲状腺がんの場合は小さな子供や若い人がなるから大変なんですよ」
節目の時を迎えた日本「次の総選挙までに……」

国民に求められることは何か。
「アベノミクスで経済は潤っているように言われますが、地方に行けばシャッター商店街や深刻な高齢化ばかりが目につきます。限界集落もだいぶ増えています。国民のみなさんの中には『のほほん』としている方も多いのですが、政治のやり方次第で社会は変わるのだから、もうちょっと考えていただきたいですね。自分たちのこととして。何となく日本人というのはそのときどきの惰性や雰囲気に流されてしまう。うまくいっているときはそれでいいんですが、今のように日本社会の転換、変質の恐れがあるという非常に危険なときに、事なかれ主義で雰囲気で流されていたら、結局自分たちに跳ね返ってきてしまいます」
2014年はどんな年になるだろう。
「日本社会そのものが大きな節目に来ています。このままだとあらゆる分野の格差が急速な勢いでどんどん広がり、非常に憂慮すべき危険な状況になると思います。それで消費税が上がったら一体どうなるのか。中小零細企業や商店は製品価格にも転嫁できずにすべて自分が被るわけです。
輸出中心の大企業は消費税を払っていません。そういう優遇措置の上に立って、儲かったと言っていますが、肝心要の日本がよって立つ人々が大きな痛手を被るわけです。日本社会が緩むことになるのではと心配しています」
小沢一郎はどう動く?
「自民党に代わる政権、受け皿をつくらなければならないと思います。民主党政権が失敗したので、国民はがっかりしていると思いますが、もう一度、自民党に代わる受け皿をつくりたい。多分国民もそれを望んでいるはずです。次の総選挙までには、新しい集団ができてくるのではないかと思っています」
規則正しい生活による健康管理と、早期発見早期治療を強調した小沢さんは言った。
「素早い手当が大切なのは政治にも言えます。政治でも何事でも、早く処置をすることですよね」
同じカテゴリーの最新記事
- 人生、悩み過ぎるには短すぎてもったいない 〝違いがわかる男〟宮本亞門が前立腺がんになって
- がん患者や家族に「マギーズ東京」のような施設を神奈川・藤沢に 乳がん発覚の恩人は健康バラエティTV番組 歌手・麻倉未希さん
- がん告知や余命を伝える運動をやってきたが、余命告知にいまは反対です がん教育の先頭に立ってきたがん専門医が膀胱がんになったとき 東京大学医学部附属病院放射線治療部門長・中川恵一さん
- 誰の命でもない自分の命だから、納得いく治療を受けたい 私はこうして中咽頭がんステージⅣから生還した 俳優・村野武範さん
- 死からの生還に感謝感謝の毎日です。 オプジーボと樹状細胞ワクチン併用で前立腺PSA値が劇的に下がる・富田秀夫さん(元・宮城リコー/山形リコー社長)
- がんと闘っていくには何かアクションを起こすこと 35歳で胆管がんステージⅣ、5年生存率3%の現実を突きつけられた男の逆転の発想・西口洋平さん
- 治療する側とされる側の懸け橋の役割を果たしたい 下行結腸がんⅢA期、上部直腸、肝転移を乗り越え走るオストメイト口腔外科医・山本悦秀さん
- 胃がんになったことで世界にチャレンジしたいと思うようになった 妻からのプレゼントでスキルス性胃がんが発見されたプロダーツプレイヤー・山田勇樹さん
- 大腸がんを患って、酒と恋愛を止めました 多彩な才能の持ち主の異色漫画家・内田春菊さんが大腸がんで人工肛門(ストーマ)になってわかったこと