悩んでいるのはあなただけではない 子宮頸がんは誰にでもあり得ます 子宮頸がんの手術を乗り越え活動するシンガーソングライター・笛田さおりさん(さめざめ)

取材・文●「がんサポート」編集部
撮影●向井 渉
発行:2014年6月
更新:2018年3月


シャイな女の子がミュージシャンになった

ライブで独特の世界を歌い上げる

笛田さんは、横浜市出身。小学校から恥ずかしがり屋で引っ込み思案な、クラスで目立たない存在だったという。

父親が元ミュージシャンだった。ギターがすぐ身近にあるような音楽に恵まれた環境に育った。笛田さんは小学生からエレクトーンを習い始めた。ピアノよりも、現代的な曲を弾けると思ったからだ。発表会ではそのときに流行していた楽曲を弾いた。

中学1年生から詩を書き始めた。思いつけば、授業中でも専用のノートに書き続けた。「思春期のフラストレーションを吐き出したら詩になったという感じでしょうか。恋愛よりも挫折やコンプレックスを思春期に感じたので、そういうことを書いていた内容は暗かった」卒業までに4冊のノートに思いが凝縮された。メジャーになった今を支える原点として、大事にとってある。

高校ではギターを始め、ポロポロ弾いては、作曲も手掛けた。「できたものは伝えたい――」。
4人組のバンドを組んでライブハウスなどで演奏した。笛田さんの役目は、作詞作曲、ボーカル。家でも、買い物先でも、帰り道でも、ふとした所で閃く。詩が浮かんだら、携帯に歌詞を入力。メロディが出てきたらボイスレコーダーに録音。

「さめざめ」に託した意味

「すごく長い道のりでした。バンドのあとにシングルでの期間もあって、『さめざめ』という〝プロジェクト名〟で今のスタイルになったのは、09年です。本当に伝えたいことを、ヒトにどう思われようが、伝えたいと思って始めました」

「さめざめ」は、「さめざめ泣く」という言葉があるなど、悲しい、切ないというイメージがある。「声を押し殺して泣くという意味があります。そういった女性の声を楽曲に活かして作りたいなぁと。深い意味を伝えられる日本語を大切にしたい」

言葉だけでない歌詞を読んで

「女の子が普段言えないことを伝えたい」

本当に伝えたいことは女性のホンネだ。題名も歌詞も刺激的で、「セックス」「キス」「コンドーム」などの単語が当然とばかりに現れる。

「女の子が普段言えないことを伝えたいという気持ちが強くあります。自分の思春期のころに影響されているのでしょうか」

しかし、それにもかかわらず、エロティックな香りがしないのが笛田さんの楽曲の特徴だ。

「下品な言葉は表わしたくない。単語だけ見れば、すごい歌と思われるかもしれませんが、歌詞を読んでもらえれば『こういう女の子もいるのかな』とか『昔、こ���いう経験したな』って思ってもらえるような、内容のある歌詞を意識しています」

検査よりも大切なこと 自分で守って

がんに対する啓発活動を続けたい。「健康な女性なら、自分はそうじゃないだろうという意識があるでしょう。しかし、検査を受けなければ、見つからないのです。私も、偶然見つかりました。忙しさを理由にせずに、時間を見つけて検査に行って欲しい。自分で守らなければ。そして、異常を感じたらすぐに病院に行くという心掛けも大切です」

笛田さんは、キスもセックスもタブーとせずに、ごくありふれたこととして詩に書き込んできた。そして、子宮頸がんもその流れに沿う。

「だれしもが罹る可能性のある病気なんです。検査を受ける勇気を持って欲しい。検査で足を開くことに躊躇を感じる人もいるでしょうが、それよりも大切なことがあります。まずは自分自身が偏見を持たないこと。ごく普通のことであることを訴えたい」

ミュージシャンとしての意識にも影響した。「私は早期でしたが、がんの苦悩を味わいました。そういう人がたくさんいるということを伝えたい。女性にしか感じられない痛みや普段は言葉にできない気持ちをたくさん伝えて、自分だけではないというメッセージをたくさんの人に聞いてもらいたいと思います。日本各地を回って、『さめざめ』の音楽を伝えたい」

これから一層の活躍に期待がかかるシンガーソングライターだ。

■リリース情報
ベストアルバム「さめざめ問題集」¥1,886+税 (ビクターエンタテインメント株式会社)

■ライブ情報
「さめざめ 秘密の新曲視聴会」2014年6月6日(金) 恵比寿club aim 開場19:00 / 開演19:30
全自由¥2,800(税込・ドリンク代別) ※本公演は、アコースティック編成での出演となります。
問い合わせは DISK GARAGE 050-5533-0888(平日12:00~19:00)

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