前立腺導管がんの治療法の発明は「撰難楽」の精神で 治療法が確立されていない導管がんになった発明王・ドクター中松博士(86歳)

取材・文●吉田健城
撮影●村山雄一
発行:2014年10月
更新:2018年3月


全米がん撲滅協会の名誉会長に

熟考の末、策定した5大目標は次のようなものだった。

1. がん撲滅運動と新治療法の発明をする。

2. 福島原発事故による放射線問題を解決する発明(新エネルギーの発明を含む)をする。

3. 現在のビッグデータ時代における問題点「大ストレージと高速リトリーバルの発明」をする。

4. 次世代乗り物の発明をする。

5. 後世への発明法の伝授と発信をする。

中松博士はがんを告知される前に、偶然全米がん撲滅協会の名誉会長と、ディズニーフロリダ小児がん病院の名誉院長の就任を依頼され、5月に就任式のため渡米し、すでに米フロリダ州で小児脊髄腫瘍の患者とその家族を支援する活動を開始している。

「ディズニー小児がん病院は、世界中につくっていく予定で、広いロビーの中にディズニーの人気キャラクターで埋め尽くされた一角がありミニ・ディズニーランドのようになっているんです。入院している子どもたちは、そこで遊べるようになっているので、入院していても楽しそうです。日本にも、ディズニーと『がん』をドッキングさせるような発想があってもいいと思います」

その一方で、全米がん撲滅協会の名誉会長として、治療費を出せない小児がん患者の親に資金援助する活動に精力的に取り組んでいる。

「9月に、ハーバード大学でのがんに関する基調講演、マサチューセッツ工科大学、スタンフォード大学の講義と共に、アメリカでは6,000万円かかるがん患者のため、5つ星ホテルのウォルドルフ・アストリアで2,000人を招待して、資金集めのチャリティパーティー『ドクター中松レセプション』を開催します」

子どもたちからもらった色紙を持って。現在、全米がん撲滅協会の名誉会長として、小児がんの支援事業にも積極的に取り組んでいる

大ストレージ=大量情報の記憶装置 高速リトリーバル=大量の情報から速く検索する技術

新たな治療法の発明へ

「『撰難楽』の精神で、困難な道に立ち向かって導管がんの新治療法を発明する」と話す中松博士

前述のように現在治療法が無いと言われているので、中松博士は導管がんの新治療法の発明に挑戦しようとしている。

「導管がんは典型的な希少がんで、日本ではもちろんのこと、アメリカでもほとんど知られていない。僕が、ある医師に『ダクタルキャンサー(導��がん)になった』と言ったら『ダクタルキャンサー?それって、乳房にできるがんじゃなかったっけ?』と言われる始末です。それほど症例の少ないがんなのです。

治療法や治療薬がわからないのは、患者が少なく放射線治療も重粒子線治療も効果がなく、製薬会社などが資金を費やして開発しても元が取れないからです。となると患者である僕自身が僕の身体を使って発明するしかない。『がんロボット』を試作実験中で、その他の発明を複合的に組み合わせた新治療法を発明中です」

今こそ「撰難楽」を実行すべき

ハーバード大学での144歳説の論文で、Igノーベル賞栄養学賞を受賞した身としては、「がんで来年末に死んでしまうと宣告されたことは、青天の霹靂だった」と話す中松博士。しかし、「がんになって、しょげたり、やけになったりしていても仕方がない。『撰難楽』の精神で、困難な道に立ち向かって新治療法を発明する」と話す。

新治療法を発明することは自分の命を救うと同時に、同じ病の患者さんの命を救うことになる――。

「やさしいテーマではなくて、難しいテーマでやりがいがあります」

やさしい道と難しい道があった場合、難しい道を選び、楽しんで克服するという中松博士。頭の中は、もう新たな治療法の発明のことで一杯だ。

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