- ホーム >
- 闘病記 >
- がんになった著名人 >
- スペシャルインタビュー
飄々とした生き方こそがんとの付き合い方の見本 俳優・藤村俊二 × 鎌田 實
人間ドックの開院祝いに行き「胃がんです」と言われた

鎌田 かなり大きな手術でしたね。気胸は今は手術しないで治します。脱気だけで治ることも多い。胸腔鏡で治すこともあります。簡単になりました。その後に胃がんですか。
藤村 そうです。実は私は45歳頃からウインドサーフィンをやっていました。あるとき、千葉県の鴨川で行われたウインドサーフィンの大会の審査員を頼まれ、可愛い女の子もいっぱいいるからと言われて、出かけていったんですが、そこで亀田病院の次男(現理事長)と友だちになったわけです。しばらくすると、その次男の方が幕張にクリニックを出したという案内が来ました。
鎌田 たしか人間ドックを専門にやるクリニックでしたね。
藤村 そうです。パチンコ屋の開店ではないから、花を贈っても面白味がない(笑)。そこで、「粗末な身体ですが差し上げますから、先生、診てください」と言って、人間ドックをやっていただいたところ、「がんです」と言われたんです(笑)。「がんですか」「胃がんです」「どうすればいいですか」「切ればいいです」「じゃあ切ってください」というやりとりだけでしたね。
鎌田 もう1カ所調べてもらうとか、さらに精密検査を受けるとか、そういうことは一切しなかった。
藤村 しなかったですね。
鎌田 それが藤村流の生き方なんですね。
藤村 そうかもしれないですね。それで鴨川の亀田病院で手術を受け、胃の3分の2を切除しました。56歳のときですね。
胃がんの手術をしたが深刻にはならなかった
鎌田 胃がんと言われて、不安は感じなかった?
藤村 感じなかったですね。私たちの年代はとくにそうかもしれませんが、とにかく他人に病気であることを覚られたくない、という気持ちでした。身体の調子が悪いというのは、かっこよくないと考えていましたからね。当時、よく海外取材をしていましたから、「ちょっと海外ロケに行ってくる」と言って、鴨川に入院したんです。そして、手術から3週間後には、非番の看護婦さんを連れて、ウナギを食べに行ってました(笑)。
鎌田 当時としては、術後3週間でウナギを食べるというのは、過激ですね(笑)。
藤村 先生には、「僕は知らないよ」と言われました(笑)。こちらは、途中で倒れたって、看護婦さんが7人も一緒なら、何とかなるだろうと(笑��。
鎌田 手術で胃を取ってから、ワインの量は変わりましたか。
藤村 全然、変わりませんねぇ。むしろ余計に飲めるようになったかもしれない(笑)。
鎌田 食事は?
藤村 クスリと思ってどんどん食べていましたからね。同期の医師にも、「どんどん歩いて、どんどん食べろ」と言われていましたから。
鎌田 結局、胃がんの手術をしても、後遺症はなかった。
藤村 全然ありませんでしたね。後遺症はないし、やり残したことは何か、などと考えたこともありません。知らせなくて済むものなら、家族にも知らせないで手術しようと、気楽に思っていましたから。
鎌田 がんの深刻さに落ち込むことはなかった。
藤村 まったくありませんでした。
鎌田 がんにも落ち込まなかった藤村さんが、5年前の70歳のときに自律神経失調症を患われている。
藤村 何なんでしょうね。病気には強いけれど、ストレスに弱いんでしょうかね(笑)。
大動脈瘤の手術のあとにタバコをやめ葉巻党に
鎌田 平成11年、64歳のときに、大動脈瘤の手術をされていますね。
藤村 人工血管にしました。
鎌田 大手術ですね。
藤村 これも人間ドックで調べてもらっていたら、大動脈瘤が見つかったのです。血圧が上がると、いつ破裂するかわからないからと、手術を勧められました。しかし、私たちの仕事はたいてい半年後まで決まっていますから、半年待ってもらって手術しました。
鎌田 その手術をきっかけにタバコをやめられたとか。
藤村 「タバコはやめなさい」と言われたので、葉巻に替えました(笑)。先生からは、「いい加減にしろ」って言われちゃいました(笑)。
鎌田 それから葉巻を。
藤村 ずっと吸ってます(笑)。葉巻はワインと合いますよ。もう依存症ですね(笑)。
鎌田 大動脈瘤の手術後、心臓の冠動脈の狭窄があって、カテーテル治療をされていますよね。
藤村 心臓の弁が良くないんです。性格と同じで、締まらないんですよ(笑)。
鎌田 閉鎖不全のことですよね。
藤村 はい。締まらないで、漏れるんです。それで弁を取り替えようということになったわけです。その前に、大動脈梗塞を起こし、血管がぼろぼろになっています。
鎌田 足の付け根にステントを入れ、カテーテル治療を行っているということですね。
藤村 いまでも結構大変なんです。
鎌田 長く歩いたりすると、足がしびれたりする。
藤村 しびれると言うか、痛くって……。なるべく歩くようにと言われていますから、歩いてはいるんですが。こういう仕事ですから、他人様の前ではきちんと歩きますが、1人になるともたもたします。
鎌田 僧帽弁も人工弁にしたんですか。
藤村 去年、取り替えようということになって、カテーテルを入れ、ステントも入れました。
鎌田 冠動脈は大丈夫なんですか。
藤村 いや、大丈夫じゃないんです。去年、冠動脈のバイパス手術もやろうとしたのです。
鎌田 冠動脈と弁と両方やったんですか。
藤村 いえ、結局、全身麻酔されて手術室に運ばれたんですが、そこで手術の成否は5分5分だということになったらしい。飛び散って脳に行っちゃう可能性もあり、「100パーセント成功するとは限らない」と、家族が言われたらしいのです。私はもう眠っているから、その状況はわかりませんよ。それで協議の結果、弁の手術は止めようということになったわけです。
同じカテゴリーの最新記事
- 人間は死ぬ瞬間まで生きています 柳 美里 × 鎌田 實
- 政治も健康も「あきらめない」精神でがんばりたい 小沢一郎 × 鎌田 實
- 自分を客観視する習性が、がん克服に導いてくれたのだと思います なかにし礼 × 鎌田 實 (後編)
- 人間を診ないロボット医師にいのちを預けるわけにはいかない なかにし礼 × 鎌田 實 (前編)
- 検査しないまま収監されていたら、帰らぬ人となっていたかも知れません 鈴木宗男 × 鎌田 實
- 治ると思ってがんに対峙するのと ダメだと思って対峙するのとでは全然違う 与謝野 馨 × 鎌田 實
- 病気にはなったけど 決して病人にはなるまい 田部井淳子 × 鎌田 實
- 神が私を見捨てないから 難治性乳がんにもへこたれない ゴスペルシンガー・KiKi(ゲーリー清美) × 鎌田 實
- 原稿も旅行もゴルフもできるうちは好きなようにやって生きていきたい 作家・高橋三千綱 × 鎌田 實
- 5年、10年と節目をつけ、少しドキドキしながら、娘を見守っていく 女優/タレント・麻木久仁子 × 鎌田 實