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がん治療も自分で選ぶ時代に~菅原文太の膀胱がん治療体験に学ぶ~ 菅原文太(映画俳優) × 中川恵一(東京大学医学部放射線教室准教授)
臓器温存に消極的な日本のがん医療

「自分の体験したことがみんなの役に立つなら協力したい」
と話す文太さん
中川 僕は27年間、がんの医者をやってきましたけど日本って臓器の温存に対して一番消極的な国なんですよ。
菅原 それはなんでなの?
中川 いろんな理由があるでしょうが、外科医が多いということでしょうね。外科医が10万人に対して放射線治療医は1千名ぐらいですから。
日本ではがんと診断されたら外科のところに行きますからね。こんな国は先進国では日本だけですよ。胃がんが多かったですから。とにかく胃がんは切る。胃がんは王貞治さんみたいに全摘するならともかく、部分切除なら体にあんまり影響ないですからね。
それで今日までずっときたんです。日本は抗がん剤だって外科の先生が処方する。
例えば現在、食道がんの治療は圧倒的に手術です。しかし私が食道がんになったら化学放射線療法をやります。それは食道がんの手術をすると体が受けるダメージがもの凄く大きいからです。ところが放射線と抗がん剤を併用すると手術と遜色ありません。ダメージも少なくて済みます。
菅原 がんが高齢化社会の病気だとしたら、高齢になってからの大きな手術はしたくないしね。
中川 とにかく日本のがん医療は胃がんをモデルにずっと考えてきたんですよ。だから何でも手術なんです。例えば子宮頸がん、これを日本で治療すれば8割近く手術です。
でも欧米なら8割近く放射線です。まったく手術と同じ治癒率なんです。前立腺がんも手術と放射線では同じ治癒率なんです。だからどうしても患者さん側が治療法を選ぶ、あるいは比較するということをしなくてはいけません。まさに文太さんはそうされたわけですから。そのためにはちょっとだけがんの知識が必要なんです。
手術の他にも選択肢があることを学ぶ
菅原 そうです。お医者さんに望むことだが、臓器を取る方法と取らない方法と2通りありますよ、どっちを選びますか、という話が本当は担当医からあってもいいと思う。
それぞれの利点、欠点を正直に話してもらえればどちらを選ぶかを���めるのは患者本人だからね。
中川 子宮頸がんは手術も放射線も同じ治癒率です。しかも放射線は入院する必要がありません。医者はそういうことを患者さんたちにまったく話してないのではなく、患者さんの記憶に残るようには話していないのです。
だから、手術の他にも選択肢があるんだということを中学生の頃から学習しておくことが大切なんです。日本人の多くはがんになれば手術以外の選択肢はないと思っていますからね。ですから私はいま学校でがん教育をやるという運動をしているんです。
これからはがん治療も自分で選ぶ時代にならなくてはいけません。自身でがん治療を選択された文太さんに機会があれば是非ともご自身の体験を彼らに話してあげてください。
菅原 自分の体験したことがみんなの役に立つなら積極的に協力したいね。
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