細かいことを気にせず自分に合った生き方で日々を過ごしていけばいい 女優・大空眞弓 × 鎌田 實

撮影●板橋雄一
構成●江口 敏
発行:2013年1月
更新:2019年7月

いちばん時間のかからない全摘手術を選びました

2013_01_15_01

大空さんが主演したテレビ番組『愛と死を見つめて』を見て、「ものすごく感動した覚えがある」と話す鎌田さん

鎌田 そんな大空さんが、1998年に乳がんになったわけですね。

大空 左胸に固いしこりがあって、乳腺症みたいだなと思って、ずっと通院していたんです。でも、いつも「OK」「OK」で、「乳腺症はがんになりません」と言われてました。ところが、ある日突然、「今回撮ったマンモグラフィがちょっと気になります」と言われ、東京女子医大付属成人医学センターの横山泉先生を訪ね、検査データを診ていただきました。私が「しこりは良性と言われ、ただの乳腺症だと思っていたんですが……」と言うと、先生は戸惑いながら、「乳腺症ではありません。検査データを診るかぎり、乳がんが見つかっています」と言われました。

私は手術を覚悟しました。ただ、年末から年明けにかけて、舞台、テレビのスケジュールが詰まっていましたから、「来年2月になれば、手術の時間もとれます。それでいいですか」と言うと、横山先生から、「君はいのちというものを、どう考えているんだ!」と、厳しく怒られました(笑)。そのとき、そばにいた人が泣き出したんです。がんの告知を受けたのは私なんです。私、いつ泣けばいいんだろうって(笑)。

鎌田 それで手術は早めたんですか。

大空 12月に10日ほど「検査入院のため」という名目で、特別にお休みをいただき、手術を受けました。横山先生から紹介されて、東京女子医大病院第2外科で手術を受けたんですが、最初にいろいろ検査をしてくださった先生が、ものすごい二枚目で、「いやぁ、この先生と毎日会えるのかなぁ」と、嬉しくなっちゃった(笑)。

鎌田 いやぁ、ほんとにいい性格だなぁ(笑)。

大空 「どうします? 全摘にしますか、部分切除にしますか」と訊かれたので、「すいません、いちばん時間のかからないのを」と言って、全摘にしました。全摘なら、術後、何回も通院する必要はないということでしたし。

病院の匂い・雰囲気が好き入院す���とウキウキする

鎌田 乳がんの多くの女性は、できるだけ部分切除にし、加えて放射線治療をしてでも、乳房を残そうとしますが、残そうとは全然思わなかった?

大空 全然! もう58歳になっていましたから、もう仕事で水着になることもないし、まして全裸で写真なんて仕事もこないと(爆笑)。

鎌田 頭の中には、全摘のほうがいちばん治る確率が高いという判断もあったんですか。

大空 「全摘すれば再発・転移はないでしょう」と言われてましたから、それに越したことはないと思いました。

鎌田 手術のとき、「乳房再建はどうしましょう」と訊かれなかったですか。

大空 訊かれましたけど、「もういいです」と(笑)。もう面倒なんです(笑)。

鎌田 明るい性格ですね。

大空 明るいのかなぁ……。すべてにこだわらないんですね。

鎌田 それにしても、不思議な人ですね。それで、2001年に胃がんですか。人間ドックはちゃんとやっていたわけですね。

大空 私、病院大好きなんですよ。小さい頃はよく町医者にかかっていたんですが、その頃から、病院独特の匂いと雰囲気、そして白衣が好きなんです。だから、入院は好き。

鎌田 入院するとウキウキする?

大空 あぁ、入院できるんだと(笑)。入院すると、ゆっくり読書ができるでしょ。それと、病院の先生にあだ名を付けるのが好き。いちばんの傑作は「徳川時代の座敷犬」(笑)。私があだ名を付けると、周りの人たちは大抵、「あぁ」と納得してくれますよ(笑)。

魂を信じているから死ぬことは怖くない

鎌田 胃がんは早期だったんですね。

大空 そうです。だから取らなくて済んだんです。

鎌田 内視鏡による粘膜切除術で済んだわけですね。それがまた再発したんですか。

大空 2002年に胃がんが再発し、再び粘膜切除を行いました。

鎌田 そして2003年に食道がんが見つかった。食道がんは何回にも分けて手術したんですよね。

大空 6回です。

鎌田 大変だったでしょう。

大空 私、もともと食が細いので、食べられないのは全然平気なんです。「食べられない」と言われれば、食べなきゃいいと思っちゃう。でも、食道がんがいちばんつらかったなぁ。なんでだろう?

鎌田 放射線治療もやりましたよね。それは苦しくなかった?

大空 全然苦しくない。

鎌田 気持ち悪くなかった?

大空 なかった。何にもなかった。髪の毛は抜けない。気持ち悪くない。吐き気もない。グタッともしなかった。していたかも知れないけれど、自分ではわからなかった。ポケーッとしてたんでしょうね(笑)。

鎌田 最初に乳がんをやり、3年後に胃がん、その翌年に胃がん再発、さらにその翌年に食道がんでしょう。次々にがんになって、自分が死ぬんじゃないかとは、あまり思わなかった?

大空 死ぬということが、もうひとつ、あまり怖くないんです。

鎌田 それは子どもの頃から大病をしたからですか。

大空 それもあると思いますが、何でしょうか、魂というものを信じているのかな。小さい頃から、魂というものを何度か見てるんですよね。

同じカテゴリーの最新記事