大腸がんの検査、手術に関するインフォームド・コンセント事前説明を良く聞いて、自分に起きる変化に備えよう
毎日欠かさずに腸内洗浄
中心静脈栄養の点滴が開始したのは、カテーテルがきちんと入っているかレントゲンで確かめた翌日からです。禁食はもう2日続いていますが、ちっとも空腹感はありません。禁食を言い渡されたときから、空腹中枢といったものが機能停止したのでしょうか。
その日、主治医のS医師が回診に来て、白血球数が1840まで下がっていると告げられました。抗がん剤投与から1週間目で、平常値は4000~8000だそうです。白血球数を上げる注射G-CSF製剤のノイアップ(一般名ナルトグラスチム)を打ってくれました。
ちなみに翌日には4720と上がりましたが、それは薬効によるもので、次の日は3300に逆戻り。自分の体で白血球数を平常値にまで戻せるようにならないと手術は無理とのことです。
同時に腸内洗浄が始まりました。肛門から出ている管の枝分かれした所からお湯を2回に分けて500ミリリットル腸内に注ぎ込み、300ミリリットルは高圧ポンプで吸い出し、残りは袋に垂れ出るようにつなぎます。その姿を想像されると赤面の限りですが、透明な管にはいつも自分の腸内の便が流れ出るのが見えます。大腸が蠕動すると、便が管を通って排出され、ビニール袋に貯まります。
もちろん、貯まった便は看護師さんが定期的に捨ててくれます。
また、袋がむき出しでは具合が悪い思いをする患者さんが多いのでしょう、ビニール袋を覆うように布でつくったお手製の袋をかぶせてくれました。
腸の奥に管を通して1週間もすると、咳をするたびに肛門が締まって管に当たるため、肛門が痛み出しました。トイレのウォシュレットで洗うと多少痛みが和らぎますが、薬を頼みました。出されたのは痔の薬でした。
腸内洗浄は土曜日も日曜日も休むことなく、来る日も来る日も続けられました。しかし、腸内洗浄を始めて1週間が過ぎても、便が減ったような兆しは見られません。大腸内にどれだけ便が詰まっていたのでしょうか、チューブには断続的に便が送り出されています。
「人工肛門の覚悟を……」 医師に何度も説明を受ける
洗浄を開始して10日が過ぎた日、Y医師が下咽頭がんの治療もあるのであまり悠長にしていられない、手術は来週の火曜日が有力で、その日が迫ってきたことを告げてくれました。そして、腸内から高圧ポンプで出てきた湯の濁り具合を見ながら、「これがあと1週間で劇的にきれいになるとは考えにくい、一時的に人工肛門の造設は覚悟してもらわなければなりません」と言いました。
たまって��る便の影響で腸管同士がうまく繋がらず、縫合不全を起こすリスクを回避するためだそうです。もっとも、これは開腹して状態をみないとわからないそうです。一時的ということは、外すときも手術が必要なのですかと聞くと、「もちろん、入院してもらうことになる」と言われました。
人工肛門の造設については、急に言われてショックに感じないようにと、転科して1週間目にその可能性をほのめかされていて、さらにはこの後も3人の医師からくり返し言われました。
白血球数は、転科して2週間後には6100に戻っていて、菌と闘う役目を果たす好中球数が6~7割あるとのことで、手術に耐えられる体になっていたそうです。
手術前日の合併症についての説明
手術3日前になると、看護師が手術前後の説明をし、しおりが渡され、呼吸の訓練の道具を置いていきました。
入浴もできるとのことなので、入りました。シャワーを浴びたのが転科する直前のこと、2週間ぶりです。体と髪を自分の手で洗うのは実に気持ちがいいものでした。ただ、肛門からチューブが出ていてビニールの袋に繋がっている様は、無様としか言いようがありません。手術の前々日には、陰毛を自分で処理するように看護師に言われ、始末しました。ものの本では看護師が処理するとのことでしたが、これは違っていました。
そして、ついに手術を明日に迎える日がきました。O研修医は腸内洗浄に来て「これが最後です」と宣告しました。昼に手術室担当の看護師が当日の進行について、夕方には主治医のS医師とY医師、O研修医がカンファレンスルームで図を描いて手術の説明をしてくれました。さらに、合併症の可能性として次の8つを上げました。
①縫合不全→人工肛門②感染症③出血④血栓症⑤他臓器損傷⑥腸閉塞⑦アレルギー⑧その他
②の感染症については、抗がん剤によって免疫力が低下しているためで、肺炎を起こしたり、膿がたまる可能性があるそうです。⑦のアレルギーというのは手術中に使う薬に対するものだそうです。合併症率は他の人よりやや高く20パーセント、死亡率も1~4パーセントだそうです。手術は4~5時間で、人工肛門を造設する場合は30分さらにかかると説明されました。
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