体調は徐々に回復するも、術後の痛みに悩まされる大腸がんの手術は無事に成功
術後すぐに歩行を開始
術後2日目の午前8時、I医師が手術創の消毒にやって来ました。鼻の酸素吸入器を外し、「痛みは今日までで、明日になるとラクになるでしょう」と教えてくれました。昼前に看護師がやって来て、「ベッドで寝ていると治りが遅くなるので、立って歩きましょう」といいます。普段は優しい看護師さんが、このときばかりはコワーイ顔に見えました。仕方がなく支えられて立ち、何とか廊下まで歩きましたが、痛みがきつく、すぐに引き返しました。立って歩いたことで、ふくらはぎを締め付けていたストッキングは脱ぐことができ、開放感を味わいました。
午後には看護師が体拭きと着替えを手伝ってくれ、今度は廊下の端まで歩きました。その夜は4時間ほど熟睡、夜中の3時ごろに痛みがぶり返しましたが、昨夜ほどではありません。
術後3日目には、点滴棒を引きずりながら廊下を1人で歩けるようになり、4日ぶりに看護師に洗髪してもらいました。
日付が変わって4日目の夜中、痰を肺から出そうとする咳が何度も出て、その度に痛みに身をよじらせました。これ以降、咳はできるだけ浅くするように努めましたが、痰を肺から出すには深い咳をしなければなりません。
この日から、1階のロビーの新聞売場まで、毎日歩いて行くようになりました。
尿道からカテーテルが抜け6日ぶりに放尿
術後5日目、38.5度という高熱が出ました。Y医師が回診のとき、中心静脈の針を抜きました。なぜかと聞くと、「中心静脈のチューブから細菌が入ったため感染症を起こしたのでしょう」とのことです。手術の跡の腹を押して離すと、離すときに響くような痛みがありました。念のため、採血してCTを撮りましたが、問題はないそうです。
術後6日目の朝、立って歩くと痛みの場所が昨日とは違います。痛みの場所を認識できたのは昨日あたりからですが、少しずつ移動している感じです。
腹筋に力を入れると、左下腹部と右腹部に痛みが走り、左腹部のドレーンからかなりの体液がしみ出してパジャマを汚しました。
午前9時、尿道に入れてあったカテーテルを抜きに、看護師がやってきました。本当は術後5日目で抜いても構わなかったそうですが、昨日は日曜日で何かあったときに医師が処置できないため、今日になりました。管を抜かれるときの違和感といったらそれはそれはひどいものでしたが、またもう1つ管から開放されました。12時過ぎに自力放尿、色は紅茶色でした。
お腹の痛みは強まったり若干弱まったりしていますが、持続しています。しかし、S医師とY医師がいうには、手術の傷が作用しているもので、腹内部に異常所見は見られないとのことです。その途端、腹下部が痛み出すのだから皮肉なものです。看護師に痛み止めを頼みました。
造影剤をお尻から注入して透視
術後1週間目、午前中にS医師、Y医師、I医師が勢揃いで回診。昨日と同���ように腹部を触診すると痛みは消失していました。Y医師によると、昨日までの痛みは腹筋が炎症を起こしたことによるかもしれないとのこと。S医師が縫合部に異常がないか、放射線科で大腸に造影剤を入れて撮影すると告げ、1時間後に放射線科に呼ばれました。O研修医が肛門から造影剤を注入し、I医師がお腹を押して造影剤を先に押し込みます。レントゲン台の上で、右に向いたり左に向いたりを20~30回くり返しさせられ、その度に激痛が走りました。途中から便意を催し、垂れ流しながらなおも造影剤を入れられます。この検査は結構、つらく苦しみました。
大矢さんは、病院によっては、術後の経過に問題がなければこれはやらないと言います。
「ドレーンの状態を見れば縫合状態が推測できますから、やらない施設が多いでしょう。ただ川本さんの場合、術後に発熱と腹痛があったので多少なりとも縫合不全が心配だったのでおこなったのでしょう」
検査が終わって主治医のS医師が「縫合部は大丈夫ですから、今日から水を飲めます」と告げました。Y医師がドレーンを抜き、I医師が手術で縫い合わせていた黒いビニール糸を抜糸しました。お尻の下に敷かれていたパットを外してもらい起きあがると、下に敷かれていたタオルはあめ色の便で汚れていました。手術で腸内洗浄をし、その後、何も食べていないのに排出物が色づいていることに、不思議な感じがしました。
その日から、水分300ミリリットルの摂取が許可。翌日には残った縫合ナイロン糸を抜糸、チューブと繋がった箱も取れ、飲料制限はなしといわれます。
さらに次の日には重湯に汁物、ジュースが出されました。味気ない食事ですが、それでも回復への第1歩には違いません。夕食を食べ終えると大腸がグルグルと鳴りました。
術後10目には3分粥となり栄養点滴も終え、さらに翌日には5分粥と進んで、回復は順調と思えたのですが……。
同じカテゴリーの最新記事
- 放射線治療に潜む得手、不得手がもたらす人生の悲喜こもごもショック!! 抗がん剤と放射線治療による味覚障害がこんなにつらいとは
- ただし放射線治療の影響で耳下腺機能が低下、口の中がカラカラに抗がん剤+放射線治療で手術を回避、声も温存
- 「拷問」と感じる患者の立場、淡々と管を挿入する医師の立場思いもかけない腸閉塞で事態は急変
- 体調は徐々に回復するも、術後の痛みに悩まされる大腸がんの手術は無事に成功
- 大腸がんの検査、手術に関するインフォームド・コンセント事前説明を良く聞いて、自分に起きる変化に備えよう
- 何でこんなに検査を受けるの?と思っても……不幸中の幸いをもたらしたPET検査
- きちんと疑問点をはっきりさせてから相談を受けることが大切夜の酒場でセカンドオピニオン ~わたしの場合~
- 情報収集し、疑問点をメモしてから受けよう知らないと損する!! セカンドオピニオンの上手な受け方
- がんに負けない強い意志を持ってまずは、「がん」という敵を知る!