放射線治療に潜む得手、不得手がもたらす人生の悲喜こもごもショック!! 抗がん剤と放射線治療による味覚障害がこんなにつらいとは
歌詞の世界ではない、突きつけられた現実
わたしの放射線治療は、ゴールデンウィークが間にあったため、5日間のお休みが入るという変則なものでした。
連休が明けた5月7日が木曜日で、その日から再開して8回目の照射をしましたが、喉の奥がヒリヒリと乾燥して痛みを感じるようになりました。わたしがこの病院で治療を受けるきっかけをつくった友人は、本院の放射線科の医師です。彼に症状を訴えると、次のようなメールが来ました。
「痛みは正常組織の反応だから、病巣にも同等の反応が起きているので効いている証拠だと思って頑張ってください」
耳鼻咽喉科の若い医師は「これからは、唾液が出ないので食べ物を飲み込みにくいなどの症状が現れます」と言いました。
そして、ついにその日がやってきたのです。味覚障害が!
味がしない…… 食卓のカラフルな色が全て無彩色に
放射線照射は9回目を終えて、外泊許可を受けて家で夕食をとっていたときでした。食べ物の味がぼやけてわからなくなったのです。1週間ぐらい前から、味噌汁の味が薄く感じてはいたのですが、その日は刺身にしょうゆをつけても味がしません。味が淡泊なご飯などは、全くといっていいほど味がしません。
歌謡曲の歌詞に「砂を噛むような」という形容があります。砂を口に入れたことがないからわかりませんが、ジャリジャリしないまでも味がしないので「砂を噛むような」という言い方は合っています。
それよりも、味覚を色彩に例えて、こんな言い方のほうがよりわかっていただけるかもしれません。
食卓の上は実にカラフルです。明るい色、暗い色、極彩色や微妙な濃淡……、それらが徐々に薄れ、ある日を境にいっせいに無彩色になってしまい、濃淡もなくなってしまった。ニュアンスは伝わると思います。
しかも、口内乾燥は一層激しくなり、唾液が出ないので噛んでいてもモソモソ、飲み込みにくいことこの上もありません。
最初から味覚障害については聞かされていましたが、味がなくなるというのは相当ショックでした。放射線治療が終われば、味覚は元に戻るそうですが、長い人は1年近くかかるそうです。人生の楽しみの大きな部分を奪い取られた感じでした。
味覚障害はなぜ起きるのか
では、味覚障害はなぜ起きるのでしょうか。これについては、メカニズムや治療法は完全には解明されていないそうです。
味を感じるのは、舌の表��のつぶつぶした味蕾がセンサーとして甘い、塩からい、酸っぱい、苦いなどを感じますが、その際、唾液の水分が欠かせません。次に感受された味覚信号は、舌とのどをつなぐ舌咽神経を経て脳に送られ、味として感じられます。つまり、味蕾、唾液、舌咽神経の3つが揃ってはじめて味の信号が脳に到達して味覚と感じるわけです。
ふつう味覚障害で1番問題視されるのが味蕾ですが、この味蕾細胞の減少は、動物実験によると放射線の副作用として確認されていますが、抗がん剤の5-FU(一般名フルオロウラシル)が原因になっている可能性も高いそうです。
抗がん剤は分裂の早い細胞にダメージを与える作用がありますが、味蕾細胞は分裂が早いので標的にされ、それで味覚障害が起きるのではないかという説もあります。
また、味蕾細胞の再生には微量栄養素である亜鉛が必要ですが、抗がん剤で亜鉛の吸収を妨げられるため、新しい細胞ができにくいそうです。
先の説明のように、唾液が出ないため、味蕾が正常でも味を感じられないケースもあります。
つまり、味覚障害の原因は、放射線治療によるものか、化学療法によるものかはきちんと判別はできないようなのです。
対処法もなく、ただ時間が過ぎるのを待つしかないというのは、結構つらいものです。
まだ化学療法+放射線治療は半分も終わっていないのに、口の中には重大な異変が2つも生じてしまいました。今後どんな副作用が現れるのでしょうか。
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