治療は楽だが、副作用がつらい放射線治療味覚障害、食欲低下、喉の痛み……幾多の副作用を乗り越えて

監修●幡多政治 横浜市立大学大学院医学研究科放射線医学准教授
文●川本敏郎
イラスト●佐藤竹右衛門
発行:2010年11月
更新:2013年7月

これまでの1、2を争う苦しい診察

N医師がシリコンの留置をやってくれた日の午前、定例のY教授診察は、内視鏡をかなり奥まで入れてじっくりと診たものでした。内視鏡が患部に触れ、両眼から涙が出てせき込みましたが、それでも容赦なく続け、「イーッと言ってください」と続けました。6~7分経ってようやく内視鏡を抜き、首の両脇を軽く触診しました。今回の診察はこれまででも1、2を争うほど苦しく、痛い診察でした。せき込みながら「どんな具合ですか」と聞いたところ、教授はやや芝居じみて、わたしの肩をポンと叩いて「任してください」と答えてくれました。

放射線治療は残り10回から照射角度が若干異なりました。それまで頸部の上からと左右の3カ所に20~30秒ずつでしたが、今回からは両サイドから30秒ほどの照射に変わりました。

あっけないほどの退院決定

第2クールの抗がん剤投与でも白血球数は下がり、白血球数を上げるアンサー皮下注(一般名Z-100原液)を打つなどしながら、最終週の月曜日に点滴は終了しました。

そのころには、味覚はフレーバーの強いものや酸味について、かなり識別ができるようになってきました。嬉しいことに、他の味もぼんやりとですが、違いがわかるようになっていました。

あと5回の放射線照射を残すだけとなったラストウィークの6月15日、診察は中堅のT医師でした。彼が言うには、抗がん剤を投与してから副作用がなくなるまで最低でも2週間かかるので、退院はその先の様子を見て決めるそうです。わたしは、退院は6月いっぱいかかるのだろうと覚悟しました。

ところが翌日のY教授の定例診察で、思いもよらぬことを言われたのでした。内視鏡をみたY教授は、あっけないほど「来週の月曜日に退院で、1カ月後に検査入院です」と告げたのです。そして、わたしの自宅を聞いて、本院で再診するほうが近いからと、7月1日の外来予約まで決めたのです。

治療終了後2週間は経過観察になると思っていたわたしは、まるできつねにつままれたかのように拍子抜けした気分でした。

Y教授の診察をフォローするように、今後の予定について病棟長のN医師がやってきたのはその日の夜でした。

「これまで内視鏡で腫瘍を診てきましたが、完全に消失したかは生検をやらなければなりません。2泊3日の検査入院で、麻酔を打って組織を採取します」

放射線は治療が終わってもジワジワと効力が続くので1カ月後に生検をするのだそうです。

放射線治療最終日、この日もこれまで通り照射を受けました。8週間にわたるロングランはやはり長かったというのは偽らざる実感です。その日T医師は診察で、「あとは時間が解決してくれます」と言ってくれました。

そして、退院当日。T医師が再度生活に関するアドバイスをしてくれました。「体力が落ちているので急には無理をしないこと、こまめに水を飲むように、お酒は少しならかまいませんが、飲んだ分より多めに水分を摂るように」とのことです。

こうして、2月27日から6月22日まで、4カ月にわたる入院生活は幕を閉じたのです。

1 2

同じカテゴリーの最新記事