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免疫チェックポイント阻害薬で肺がん治療はさらなる進歩へ
分子標的薬との併用で効果が高まる可能性
これまで発表されている臨床試験のデータを見ると、薬物治療が効かなくなった患者さんに対して、抗PD-1抗体薬や抗PD-L1抗体薬を単剤で使用した場合の奏効率(がんが半分以下に縮小する患者さんの割合)は、ほぼ20%前後だという。
「従来の薬剤は、単剤では10%未満が普通ですから、それに比べれば非常に高い奏効率になるのですが、それでも5人に1人という割合です。そこで、治療成績を向上させるため、様々な併用療法の臨床試験が進められています」
免疫チェックポイント阻害薬と分子標的薬を併用する臨床試験も、すでに始まっているという。例えば、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)の*タルセバと、抗PD-L1抗体薬を併用する臨床試験が進行中である。また、まだ開発段階にある第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬と、抗PD-L1抗体薬との併用療法の臨床試験も始まっている。分子標的薬と免疫チェックポイント阻害薬を併用すると、どのような効果が期待できるのだろうか(図4)。

EGFRの変異がある患者さんのがんには、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬が効く。ところがそういうがんにも、もともと薬剤に耐性を持った細胞が実は存在している。そのため、多くのがん細胞は死んでも、耐性を持った細胞だけが生き残り、増殖してくる。これが、それまで効いていた分子標的薬が効かなくなった状態である。
この耐性を持つがん細胞は、PD-L1を発現しているので、活性化したT細胞が近づいても、その活性が抑えられ攻撃することができない。ここで抗PD-1抗体薬や抗PD-L1抗体薬を使用すると、T細胞の活性が抑えられずに維持され、がん細胞を攻撃できるようになるのである。
「EGFRチロシンキナーゼ阻害薬などの分子標的薬は、使っているうちに耐性ができてしまうという問題点があったわけですが、免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせることで、ご健在でいられる期間もより長くなり、場合によっては治癒も目指せるのではないかと考えられています」
また、併用療法としては、従来から行われてきた免疫療法(免疫細胞療法やワクチン療法など)との併用も、大きな可能性を秘めているという。免疫のブレーキを取り除く治療と、免疫の働きを高める治療との併用は、免疫による治療効果をさらに高めることになると考えられるのである。
*タルセバ=一般名エルロチニブ
現時点で重篤な副作用の報告は比較的少ない
免疫チェックポイント阻害薬による治療では、副作用として自己免疫疾患が心配されていたが、実際にはそうした重い副作用の報告は比較的少ないという。
「比較的よく起こる副作用は、皮疹や下痢などです。脳下垂体の分泌ホルモンの異常によって起こる下垂体炎など、普通の抗がん薬では起こらないような副作用の報告もあり注意が必要だが、全体としては、比較的副作用の軽い薬剤と考えていいようです。皮疹などの症状は、ステロイドを使用することで、コントロール可能と言われています」
今後大きな可能性を秘めている免疫チェックポイント阻害薬。臨床試験が進み、多くの患者さんに福音となるような結果が出ることを期待したい。
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