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期待が高まる免疫療法 いよいよオプジーボが承認!
エビデンスのある2次治療から使うべき
オプジーボは今回、切除不能な進行・再発非小細胞肺がんに対して適応になった。ということは、進行した状態で見つかった非小細胞肺がんに対し、初回治療で使われることもあるのだろうか。
神田さんは、「保険適用上は使える状況にあります。しかし現段階において、第Ⅲ(III)相試験という信頼できるデータで有効性が証明されているのは、『初回治療を受けたあとに進行した非小細胞肺がんの2次治療の薬として、タキソテールよりも効果がある』ということです。まずはこの条件を満たす患者さんに投与し、効果と副作用の経験を積み重ねることが大切と思います。
そもそも、初回治療では現在の標準治療である*シスプラチン+タキソテールなどのプラチナ製剤併用療法の奏効率は30%以上で、*パラプラチン+タキソテール+*アバスチンでは60%にも達します。オプジーボの奏効率はどちらの臨床試験でも20%程度。単純に比較してもオプジーボ単剤を使う意義は少ないと思います」と述べる。
副作用の問題もある。
「副作用の少ない薬剤とされていますが、免疫に作用する薬剤なので、私たち医師も慣れていない免疫関連の副作用が出る可能性はあります。少数ながら、症状が重篤になる患者さんも出ています。
治験では、肺炎や自己免疫疾患のある患者さんや全身状態(PS)の悪い患者さんは除外されますが、治療現場では様々な方に投与することになります。そのとき、どんな副作用がどれだけ出るか予測がつかない段階なので、やはり効果が証明されている2次治療の患者さんから使ってもらうことだと思います」
現状で確認されている副作用は、疲労感、食欲不振など一般的なものに加え、甲状腺異常や下垂体異常、免疫の異常から発症すると思われる大腸炎、肝機能障害、腎機能障害、皮膚炎など(表4)。

「一番心配な有害事象は薬剤性の肺障害です。Checkmate017試験や057試験でも4%程度は起こるとされますが、日本人は抗がん薬などで肺障害を起こしやすい人種と言われ、注意が必要です。オプジーボでは肺障害は起きても軽症で済むことが多いと思われますが、死亡例が出た報告もあります。肺障害のない患者さんから使い始め、慎重に見ていく必要があると思います」
また、薬価も大きな問���だ。オプジーボは2週間に1度、点滴で投与されるが、1回の薬価は約130万円。1カ月で260万円にもなるという。もちろん、高額療養費の対象になるので、患者さん自身の負担は収入に応じ約25,000円~140,000円となるが、これまでとは桁違いの薬価となる。慎重に使い、重篤な副作用を起こさないようにすることは、薬を使い続ける、つまり「育薬」の観点からも大切という。
*シスプラチン=商品名ブリプラチン/ランダ *パラプラチン=一般名カルボプラチン *アバスチン=一般名ベバシズマブ
併用療法での有効性と 有害事象のデータの蓄積を
単剤では従来の抗がん薬より効果が高いことが検証されたオプジーボ。今後は併用療法での効果の検討が望まれる。なぜなら、いくつかの基礎研究で、抗がん薬や放射線治療ががんに対する免疫応答を賦活化させることが報告されており、こうした治療法と免疫チェックポイント阻害薬とが相乗的に作用する可能性があるからだ。もし併用療法が確立されれば、初回治療から使えるようになるかもしれない。
国立がん研究センター中央病院呼吸器内科でも、神田さんのチームが進行非小細胞肺がんを対象としたオプジーボと標準化学療法との併用の第Ⅰ(I)相試験を、世界で最初に実施している。
これは各群6人の患者に4つの併用療法を実施した小規模試験で、最大の目的は安全性の確認。4つの試験のうち3つを初回治療で実施し、1つを2次治療で実施した。
初回治療の3つとは、❶シスプラチン+*ジェムザール、❷シスプラチン+*アリムタ、❸パラプラチン+*タキソール+アバスチン、の3つでそれぞれオプジーボと併用し、2次治療ではタキソテールとオプジーボの併用療法を行った。その結果について、神田さんは次のように説明する。
「肺障害、肝機能障害、甲状腺異常、下垂体異常などの有害事象が出ましたが、いずれもオプジーボ単剤と同じくらいの割合でした。血液毒性(白血球減少、貧血、血小板減少など)についても、抗がん薬単剤と同程度です。この試験から、併用療法でも安全に使えるという結論が出ました(図5)。今後は第Ⅱ(II)相、第Ⅲ(III)相試験で症例数を増やし、有効性と有害事象のデータの蓄積を目指すべきだろうと思います」

単剤での臨床試験に比べ、オプジーボと他の療法との併用試験は国際的にも少なく、現状では第Ⅰ(I)相、第Ⅱ(II)相といったところとのことだ。
*ジェムザール=一般名ゲムシタビン *アリムタ=一般名ペメトレキセド *タキソール=一般名パクリタキセル
どういう症例に効くのか 解明・測定していくことが必要
まだまだ未知数の部分が多いオプジーボだが、神田さんはいう。
「Checkmate試験の結果を見ると、扁平上皮がんではほぼオプジーボの成績が上ですが、非扁平上皮がんの場合、必ずしもオプジーボが優れてはいません。しかし、一部に非常に長く効く患者さんがいます。私の患者さんにも治験に参加し、2年以上病勢に悪化がなく、副作用もごく少ない方がいます。これは従来の抗がん薬にはなかった効き方だと思います。非扁平上皮がんには肺がんで最も患者数の多い腺がんが含まれますから、少数とはいえ、そういう患者さんがいるのは希望があると言えます。
この論文では、効果予測因子にPD-L1が挙げられ、PD-L1分子の発現があったほうが、オプジーボの恩恵が強かったという解析もされています。また、遺伝子変異の量が多いとの解析もあり、遺伝子変異の多いがんは免疫療法で抗原性が高まりやすく、効果が高いとする別な論文もあります。オプジーボが適応になったメラノーマも扁平上皮がんも遺伝子変異の多いがんであり、この解析と矛盾しません。ほかにも多くの因子が絡んでいる可能性が高く、それを今後解明、測定することが必要です。
現状ではPD-L1も遺伝子量も簡単に測定できませんが、因子を特定し、測定・診断できるコンパニオン診断薬が開発されれば、免疫チェックポイント阻害薬の可能性は大きく広がると思います」
さらなる免疫チェックポイント阻害薬の研究・開発が待たれる。
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