臓器横断的に効果が望める免疫チェックポイント阻害薬 課題は投与対象の絞り込み

取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2016年11月
更新:2019年7月


<肺がん>非小細胞肺がんにオプジーボの適応拡大 費用対効果の問題も

肺がんでは、北里大学医学部新世紀医療開発センター・横断的医療領域開発部門臨床腫瘍学の佐々木治一郎さんが解説した。肺がんに関しては肺がんの約9割を占める非小細胞肺がん(NSCLC)に対して、15年12月にオプジーボの適応拡大が承認されている。オプジーボを使った治療は、再発転移での延命とQOL(生活の質)の維持が目的となる。

PS(全身状態)が0か1のような患者に使用するが、間質性肺疾患や重篤な口内炎も発現してくるので全身管理が大切になる。結核の症状がひどくなったケースや膵炎の発症もあったという。

今後の展開としては、効果予測因子が必要であるとした。佐々木さんは「オプジーボを使用してもPD(進行)が40%以上と、効かない人が4割もいるということで、効果を見極めていく必要がある。費用対効果の問題もこの過程で片付いていくと考えている」とした。

<腎がん>分子標的薬との併用に期待

腎がんについては、秋田大学腎泌尿器科の羽渕友則さんが発言した。オプジーボは16年8月に根治切除不能または転移性の腎細胞がんに対して適応拡大されている。

オプジーボが既存薬のアフィニトールと比べて優れているのは、予後不良、貧血、治療開始までの時間とされる。

今後は分子標的薬との併用が期待される。血管新生阻害薬(スーテント)と免疫チェックポイント阻害薬(オプジーボ+ヤーボイ)との第Ⅲ(III)相試験が日本を含めて行われている。羽渕さんは「腎がんではTKI(チロシンキナーゼ阻害薬)との併用の可能性がメインになる。尿上皮がんでは化学療法との併用が研究されている」とした。

アフィニトール=一般名エベロリムス スーテント=一般名スニチニブ

<婦人科がん>未開の領域だが抗がん薬との比較試験進む

婦人科のがんについては近畿大学産婦人科の万代昌紀さんが説明し、「婦人科でも多くの研究がされているが、まだ開発途上であり、臨床経験がない。まだまだ始まったばかり」と今後の展開への期待から話を始めた。

婦人科における免疫チェックポイント阻害薬の開発では、万代さんらが11年から第Ⅱ(II)相試験を行った。13年に発表された結果では、抗がん薬が効きにくい明細胞腺がんが、「非常にきれいに消失していて驚い���」(万代さん)という。その後も卵巣がんと子宮頸がんで、抗がん薬との比較試験が進められている。

万代さんは、治療集団をいかに小さくするのかが課題とした。「医療自体の考えが変わってきており、OS(全生存期間)を伸ばしても仕方がない。QOLのいい状態でのサバイバルでなければ意味がないのではという時代になり、薬価自体も効かなければ支払えないという方針だ」と述べた。

<頭頸部がん>免疫チェックポイント阻害薬が効果発揮の可能性 対象の絞り込みが課題

頭頸部がんでは神戸大学附属病院腫瘍血液内科の清田尚臣さんが報告した。

一般的に頭頸部はリンパ球が少なく、抗原提示能力が低いなどの特徴がある。中咽頭がんではHPV(ヒトパピローマウイルス)が関係しており、PD-L1の発現強度が強いと言われている。予後との関係はPD-L1の発現が高いほど悪い。免疫チェックポイント阻害薬が頭頸部がんに効果を発揮する可能性があると考えられる。

オプジーボが適応追加に向けて動いている。「対象の絞り込みが課題。治療戦略においてどう位置づけるかが課題」と述べた。

<消化管がん>大腸がんでの感受性の高さに期待

食道・胃・大腸がんなど消化管がんについては愛知県がんセンター中央病院薬物療法部の室 圭さんが報告した。

食道がんでは、日本で行われた第Ⅱ(II)相試験では奏効割合が17%だった。胃がんでは、キイトルーダなどの免疫チェックポイント阻害薬が注目されている。第Ⅱ(II)相試験では、全奏効率でキイトルーダが22%、オプジーボは14%だった。

大腸がんは、感受性の高さからかなりの奏効が期待できるという。「課題はバイオマーカー。どういったことが必要かは今後検討されるべき」と述べた。

キイトルーダ=一般名ペムブロリズマブ(抗PD-1抗体)

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