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群馬県で投与第1号の肺がん患者 肺がん情報を集め、主治医にオプジーボ治療を懇願する
主治医にオプジーボ治療を願い出る
セカンドラインの治療が終わった頃から、多くの情報を求めていた中、2015年12月に免疫チェックポイント阻害薬のオプジーボが、非小細胞肺がんで認可されるのも知っていて注目していた。
「もし、この治療を受けられれば、今までがんばってきた甲斐があるかもしれないと思いました。もう、これに賭けるしかないと……」
当初、主治医は森さんの申し出に対し、ADL(日常生活動作)やPSなどを鑑みて、治療は無理だと話した。しかし、2回目の診療時には治療を了承してくれた。
「治験のデータはあっても実臨床ではどうなるかはまだこれからの段階で、ましてや目の前の患者の状況を見れば、先生にとってもまさに賭けだったかもしれません。でも先生は『賭けてみようか』と言ってくれました」

2016年1月中旬より、4度目の治療となるオプジーボの投与が始まった。オプジーボが肺がんに認可されて、群馬県で第1号の投与患者が森さんとなった。
投与サイクルは、初回、15日目というように投与後2週間空ける。投与量は1回3mg/kg(体重)、1回の投与時間は1時間程度だ。
2クール目までは順調だったが、3クール終了後、副作用による薬剤性大腸炎が出現した。しかし、森さんは4クール目を希望し継続。そして4クール目が終了した3月に、大腸炎は深刻な状況になっていた。
「下血が続き、1日30回もトイレに行くありさまでした。PSは3にまで低下して、体重は45kgに激減し、BMIは15台に低下してしまいました。まるでパリコレのモデルみたいでした(笑)」
入院して、大腸炎を治療することになった。
ところが一方、肺がんはその間みるみる良くなっていた。このとき、森さんも主治医もオプジーボの効果を実感した。
そんな折、今度は肺がんと反対側の右上葉に気胸(ききょう)が起きてしまう。
「もともとの喫煙歴もあり、肺が脆くなっていたようです」
ドレーンを入れて薬を投与する胸膜癒着術を試みたが修復ができず、胸腔鏡下切除術で縫合した。5月に一度退院したが、その間、大腸炎の薬であるプレドニンを減薬したため、大腸炎が悪化し、10日後に再入院となった。
6月、大腸炎は快癒した。その間オプジーボは休薬していたが、肺がん���増悪は全くなかった。その後、大腸炎、肺がんともに通院による経過観察を行い、肺がんの無治療期間は約1年に及んだ。
車椅子に乗っていたことを思えば信じられない

ところが、2017年5月、肝臓及び腎臓周辺のリンパ節に転移が発覚した。そのため5回目のオプジーボ投与となった。6月には転移巣が増悪し、胸痛、CRP(C反応性タンパク)値急上昇、胸水の急増などの症状に襲われたため、6回目のオプジーボを投与し、さらに危機を切り抜けた。
それ以降は、経過を診ながら、標準の治療周期ではなく、オリジナルの方法により、3カ月ごとに治療を行っている。治療の2週間後に撮るCTではここ3回続けて、がんの大きさが変わっていないという状況だ。
2017年11月時点で8クール目の治療を行い、現在も経過を見ながら治療を継続している。最初の治療から3年、オプジーボ初回投与から2年あまりが経った。現在は、甲状腺ホルモンの減少と体の強張りが少しある。
「群馬県のオプジーボ投与1号患者がまだ生きていると評判のようです(笑)。サードライン後のどん底のことを考えたら、妻も家族も信じられないと思います。何より本人の私自身が信じられません。でも、治療をつなぐことによって何かが生まれるんだな、というのが実感です」
森さんの肺の腫瘍は、現在も消滅はしていない。しかし、ここまでがんばってきた実感と自信、今後の治療法の発展への期待が大きな力となっているのは確かだ。
実際、免疫チェックポイント阻害薬の新たな薬の出現、既存の抗がん薬との併用、さらには新たな遺伝子変異の発見など、がん薬物療法の分野はさらなる進化を遂げるだろう。治療継続の可否は、その恩恵を受けることができるためのカギとなりそうだ。少なくとも希望を抱いて治療に挑み続けることの大切さを、森さんは身をもって示し続けている。
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