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次々に開発される免疫チェックポイント阻害薬とその併用療法
有望な免疫チェックポイント阻害薬との併用療法
そして、現在模索されているのが、免疫チェックポイント阻害薬の併用療法、また、免疫チェックポイント阻害薬と抗がん薬や分子標的薬との併用療法だ。
作用機序の異なる薬剤の選択肢が次々に増え、がんの薬物療法は、がんの種類別(臓器別)だけでなく、前述のMSI-Hなど特定の因子別に、がんを横断的に治療することが検討されるようになってきた。
先のヤーボイとオプジーボの免疫チェックポイント阻害薬同士の2剤併用療法による腎細胞がんに対する治療、殺細胞性抗がん薬の*パラプラチンと*アリムタと、免疫チェックポイント阻害薬のキイトルーダとの3剤併用による非小細胞肺がんに対する治療。さらに殺細胞抗がん薬のパラプラチンと*タキソールと、分子標的薬の*アバスチンと免疫チェックポイント阻害薬のテセントリクの4剤併用による非小細胞肺がんに対する治療など、今後ますますさまざまな組み合わせでの併用療法が増えていきそうだ。
このように進行がんに対する治療に加えて、今後は放射線療法、化学放射線療法などと組み合わせた術前および術後の補助療法としても適応拡大を目指す開発が増えていきそうだ。
「今後、さらに免疫の仕組み、バイオマーカー、検査および治療面でさまざまなことが解明されていくことで、がん免疫療法により恩恵を受ける患者さんの割合は徐々に増えていくことが期待されます」
管理が重要な免疫チェック阻害薬の副作用
一方、免疫チェックポイント阻害薬は、従来の薬物とは異なる副作用があることも注意しなくてはならないと北野さんは話す。
「免疫チェックポイント阻害薬は、副作用についての管理も重要です。免疫を司る治療であるためです。通常、自己の細胞や組織を認識して攻撃するT細胞受容体を持ったT細胞は、胸腺(きょうせん)という臓器で排除されるか、寛容状態になりますので、ほとんどヒトでは自己免疫疾患は発症しません。ただ、自己の細胞を認識するT細胞が残ってしまっている場合は、免疫チェックポイント阻害薬でこれらのT細胞を誤って活性化してしまい、副作用が出ることがあります」
副作用は全身にさまざまなものが発現する(図4)。

ここでは、全部を詳細には説明しないが、皮疹(ひしん)、下痢・腸炎、肝障害、薬剤性肺炎、��経障害、重症筋無力症、甲状腺機能障害、下垂体(かすいたい)不全、副腎不全、1型糖尿病など、それぞれの頻度は低いものが多いが、ときに重篤(じゅうとく)な副作用を生じることもありうる。
「ただし、がんの薬物療法に精通した腫瘍内科医などが在籍していて、それぞれの副作用に対処できる各種診療科が揃ってチーム体制が整備されている病院では、ほとんどのケースでしっかりと対応していただけると思います。ぜひ、そういう病院を選んで受診してください」と北野さん。
現在、新薬開発の過半数が免疫チェックポイント阻害薬とそれを含む併用療法であり、全世界で2千以上の臨床試験が行われているという。
今後、免疫チェックポイント阻害薬が、がん薬物療法の開発をリードしていくのは間違いなさそうだ。
*ヤーボイ=一般名イピリムマブ *オプジーボ=一般名ニボルマブ *キイトルーダ=一般名ペムブロリズマブ *バベンチオ=一般名アベルマブ *イミフィンジ=一般名デュルバルマブ *テセントリク=一般名アテゾリズマブ *パラプラチン=一般名カルボプラチン *アリムタ=一般名ペメトレキセド *タキソール=一般名パクリタキセル *アバスチン=一般名ベバシズマブ
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