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免疫チェックポイント阻害薬で治療中、命に関わることもある副作用の心筋炎に注意を!
どのような治療がありますか?
まずはICIの投与を中止します。その後にステロイドパルス療法を行います。ステロイドは、副腎で作られる副腎皮質ホルモンの1つで、体内の炎症を抑えたり、免疫を強力に抑える作用があり、自己免疫疾患や炎症疾患に対する有効な薬剤として広く使われています。
ステロイドパルス療法は、大量のステロイドを3日間連続で点滴することを1クールとして、重症度によって1~3クール行う治療法です(図5)。

「ステロイドのみで効果が認められるのは4割程度です。効果が得られなければ、強力な免疫抑制薬を併用していきます」
ステロイドパルス療法によりトロポニン値が下がってくれば、ステロイドを減らします。しかし、量を減らすと再燃してしまうことがあり、心筋トロポニン値を確認しながら慎重に減量する必要があります。
「一度心筋炎になった患者さんは、治ったその後も定期的に心臓の検査が必要になります」
ICI投与中、おかしいと感じたら?
2017年に「日本腫瘍循環器学会」(The Japanese Onco-Cardiology Society)が設立され、がんとともに心臓病も併存して困っている患者さんに対して大きな一歩となりました。
「日常診療では、『がんと診断される3カ月前に、心筋梗塞になりました』、『心不全の治療をしています』などと言われる高齢のがん患者さんが多いと感じています。がん患者さんが心臓に問題を抱えているため、最適ながん治療が受けられないのは問題だと思っていましたが、今はがんを勉強している循環器医が増え、全国どこでも心臓病を抱えるがん患者さんは安心してがん医療を受けられる体制ができつつあります」
また、循環器専門医にもがんに対する研修制度が2024年度から設けられました。さらに腫瘍専門医についても、循環器のことを習得することになっていくでしょう。製薬企業も、薬剤の副作用については、各施設などで講習会を開いて、注意喚起を促しています。
「当院では、常勤の循環器専門医1名と非常勤の循環器専門医4名で心臓の治療をしています。夜間でもホットラインを設けていますので、何かおかしいと感じて連絡すれば、薬剤師から主治医へ連絡がいくシステムをとっています」
まとめとして田尻さんは、次の5つを挙げました。
▶️心筋炎はICI投与早���(~3カ月)に生じることが多い
▶️心臓irAEでは高率に心電図、心筋トロポニンの異常(変化)が生じるため、心臓irAEスクリーニングに心電図と心筋トロポニンが有用
▶️心筋炎に対してはステロイドパルス療法の早期開始が推奨される
▶️ICI同士の併用や他剤との併用は心臓irAEが増加し、重篤化・複雑化する可能性があり注意が必要
▶️心筋炎以外の心臓irAEにも注意が必要
最後に田尻さんは、「ICIでの治療中には、命に関わる事態になることもある心筋炎の発症の可能性もあるので、少しでもいつもと違ったらがまんせず、医療機関に連絡することが大切です。そのためには患者さんから、『緊急な場合はどこに連絡すればいいのか』を、主治医に尋ねておくことが大事です」と結びました。
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