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免疫チェックポイント阻害薬との併用療法で大きく前進 新たな進行期分類が登場した子宮体がんの現在
免疫チェックポイント阻害薬との併用療法で治療はどのような変化が?
子宮体がんの薬物療法は、進行再発がんに対してレンビマ(一般名レンバチニブ)と免疫チェックポイント阻害薬(ICI)のキイトルーダ(一般名ペンブロリズマブ)の併用療法(LP療法)が承認されたことで、新しい時代を迎えることになりました。
従来は抗がん薬による治療が中心でした。術後療法ではプラチナ製剤を含む2剤併用療法が行われ、成績がよく外来で治療できるTC療法(パクリタキセル+カルボプラチン併用療法)が多くの施設で行われていました。
「進行再発に対しても、それまで抗がん薬治療を受けていなければTC療法。術後療法でTC療法を行っている場合でも、再発までの期間が6カ月~1年以上ならTC療法が選択され、6カ月未満の場合には抗がん薬の単剤治療を行っている施設が多かったと思います」
2018年になると、MSI-high(高頻度マイクロサテライト不安定性)の固形がんに、キイトルーダが承認されました。遺伝子の変異に対して臓器横断的に使えるようになったのです。
「子宮体がんにはMSI-highの患者さんが多いのですが、それでも17%ほど。また、MSI-highのがんは、再発リスクは中程度であり予後はさほど悪くありません。そのため、MSI-highの患者さんがキイトルーダを使えるようになっても、得られる恩恵はあまり大きくなかったのです」
そういった中で、レンビマとキイトルーダを併用するLP療法が、2021年に承認されました。MSI-highなどの遺伝子変異に関係なく、進行再発子宮体がんの治療薬として承認されたのです。
本来、キイトルーダはMSI-highの患者さんに効くのですが、MMRが維持され、MSIではない患者さんにも、LP療法が有効という結果が出たのです。それを示した臨床試験が「KEYNOTE-775試験」でした。キイトルーダにチロシンキナーゼ阻害薬のレンビマを併用し、その相乗効果によって、遺伝子変異に関係なく有効性を示すことができたのです(図4)。

ただ、LP療法が使えるのは、すでに化学療法を行っている患者さんです。初回の再発で抗がん薬治療の経験がなければ、標準治療はTC療法などのプラチナ併用療法となっています。
「KEYNOTE-775試験でLP療法が優った対象は、抗がん薬の単剤治療で、TC療法ではありません。それで初回再発治療は今でもTC療法が標準治療なのです」
進行再発がんに対する初回治療でTC療法を行い、その後再発した場合、ガイドラインではLP療法が推奨されています。化学療法を行って再発した人を対象とした臨床試験は、LP療法の臨床試験しかないからです。ただ、LP療法が優ったのは単剤治療との比較で、TC療法に優ったわけではありません。
「正解があるような、ないような状態なのです。そこで実際には、1年未満で再発したらLP療法がいいのではと思います。1年以上たってからの再発なら、ガイドラインには書いてないですけど、もう1回TC療法を行ったほうがいいと考えて治療している施設も多いのではないかと思います」
がん免疫が関与することもあって、LP療法で病変消失まで持ち込めた患者さんの成績はかなり良く、生存率が長く維持されることがわかっています。
新たなICI併用療法の試験が進行中
進行再発の子宮体がんに対して、TC療法と免疫チェックポイント阻害薬を併用する治療法の臨床試験が複数進行中です。
●RUBY試験:TC療法へのドスタリマブ(一般名)の上乗せ効果を検証
●NRG-GY018(KEYNOTE-868)試験:TC療法へのキイトルーダの上乗せ効果を検証
●AtTEnd試験:TC療法へのテセントリク(一般名アテゾリズマブ)の上乗せ効果を検証
●DUO-E試験:TC療法へのイミフィンジ(一般名デュルバルマブ)とPARP阻害薬リムパーザ(一般名オラパリブ)の上乗せ効果を検証
これらの臨床試験の結果によっては、進行再発子宮体がんに対する薬物療法の選択肢が広がり、より複雑化することが考えられます。
新しい妊孕性温存療法への期待も
子宮体がんの標準治療は子宮全摘なので、治療によって妊孕性は失われますが、子宮体がんの4%程度は、20代、30代で発病します。そこで、がんが早期で、高分化がんであれば、子宮を温存して、ホルモン療法を行うことができます。これが妊孕性温存療法です。
「従来から行われてきたのは、子宮内膜全面掻爬といって、子宮内膜を見ないで掻爬する方法です。現在はそれしか保険が通っていませんが、『子宮鏡手術』という方法もあります。子宮鏡という子宮手術用の内視鏡を子宮の入り口から挿入して、子宮内膜に突出している病変を子宮鏡で確認しながら、子宮鏡の先端にある電気メスで切除する手術です。この方法を併用することで、治療成績が向上する可能性が海外の研究で示されています」
今後、子宮鏡手術が子宮体がんの妊孕性温存療法でも行えるように、保険適応の拡大が期待されています。
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