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エルプラット(一般名:オキサリプラチン)大腸がん治療に画期的変化をもたらした薬剤

監修●水沼信之 がん研有明病院消化器センター・消化器化療担当部長
取材・文●星野美穂
発行:2014年5月
更新:2014年8月


代表的なレジメン ❷XELOX療法(ゼロックス療法)

XELOX療法は、FOLFOX療法で使うエルプラットと5-FUの代わりに、経口薬のピリミジン拮抗薬ゼローダを投与する方法です。ゼローダのXELと、エルプラットを表すOXを組み合わせたレジメン名です。また、ゼローダを同じ経口のピリミジン拮抗薬であるTS-1に変えた、SOXという治療法もあります。

どちらもエルプラットに経口の抗がん薬を併用するため、FOLFOX療法に比べて点滴の時間が短いというメリットがあります。治療のための受診の頻度も、FOLFOX療法は2週間ごとであるのに対し、XELOX療法、SOX療法は3週間ごとでよく、患者さんの負担が少ない治療法といえます。治療成績もFOLFOXと同等です。

《投与法》XELOX療法は、3週間を1サイクルとして、1日目にエルプラットを投与、その後2週間ゼローダを1日2回、14日間にわたり服用するという治療法です(図4)。15日目から22日目までは休薬し、また23日目から治療を繰り返します。

図4 XELOX療法

●術後補助療法(アジュバント療法)

FOLFOX療法やXELOX療法、SOX療法は、手術後の再発を予防するための術後補助療法(アジュバント療法)にも使用されます。

術後補助療法の種類については、いずれの治療法でも生存率に大きな違いはありません。そのため、自分で薬の管理ができる患者さんには、より負担の軽いXELOX療法やSOX療法が選ばれることが多いようです。

ゼローダ=一般名カペシタビン TS-1=一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム

知っておきたい! 副作用と対策

◎しびれの症状は具体的に医師に伝える

エルプラットで特徴的な副作用は、手足や口のまわりのしびれや痛みといった、「末梢神経障害」です。

この副作用は、冷たい缶コーヒーを握った途端、手がビリビリとしびれるというように、冷たさ、寒さなど「寒冷刺激」がきっかけとなって出やすいものです。そのため、寒い時期には手袋をする、エアコンの冷気に直接当たらないようにする、冷たいものは持たない、飲まないなどの注意が必要です。

末梢神経障害は、点滴投与中から始まることがあります。治療開始当初はしびれが起きても数時間で回復しますが、投与回数が増えるに従ってしびれの症状も重く、時間も長くなっていきます。しびれの症状が重くなってきたら、エルプラットの投与中止を考えなければなりません。

医師は薬の効果��副作用の発現状況を比べて、治療を考えて行きます。患者さんからの詳細な報告は医師の手助けとなります。そのため、具体的なしびれの症状を医師に伝えることは、非常に重要です。

例えば、「5回目の治療終了後から、2週間にわたって、ひじまでがしびれた」など、しびれのあった期間やしびれた部位などを具体的に伝えます。

図5 しびれの症状

一方、医療者は、より詳細に症状を聞き取ることが大切です。「箸を落としやすくなったりしていませんか」「つまづくことが増えていませんか」など生活の変化を問うことで、患者さんも気づきにくい症状の悪化を推察することができます。(図5)

エルプラットの末梢神経障害には、以前はビタミンB6やB12、漢方薬なども使用されましたが、今はあまり効果がないことが確認されています。末梢神経障害が出たら、投与中止が一番の対処法です。我慢してしまうと、しびれが取れるまでの時間が長くなります。治療を中止してしびれが治れば、治療を再開することもできます。

◎アレルギー反応と吐き気

アレルギー反応も、エルプラットで起こりやすい副作用の1つです。投与中から起こることがあり、息苦しさや寒気、のどが締め付けられるなどの症状が起こります。特に5、6コース目から10コース目あたりで起こりやすいことが知られています。手足が赤くなる、熱くなるなどで、アレルギーの出現を知ることができます。観察していちはやく見つけることが大切です。

また、エルプラットを使用すると、30~90%の患者さんに吐き気が出るといわれています。制吐薬は、吐き気が起こる前に飲み、我慢せす、なるべく経験しないようにしましょう。

◎アドバイス ― 生活に合った治療選択を

エルプラットは、しびれなどの末梢神経障害が起こることから、手先の感覚が影響を及ぼす仕事をもつ人には向かない薬剤です。例えば、トラックの運転手やピアノ教師などは、エルプラットの入っていないレジメンであるFOLFIRI療法など、ほかの治療を検討したほうがよいでしょう。

また、生活や仕事の状況により、通院にかけられる時間や便利な投与方法も異なります。少しでも快適に治療を長く行うためには、自分の使用する薬剤の特徴について知っておくとともに、主治医に生活や仕事について詳しく伝え、より適した効果のある治療法を考えて行くことが大切です。

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