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イクスタンジ(一般名:エンザルタミド)去勢抵抗性前立腺がんの新たな一手

監修●湯浅 健 がん研有明病院泌尿器科担当副部長
取材・文●星野美穂
発行:2014年8月
更新:2014年11月


イクスタンジの投与法

◎対象となる患者さん

2014年6月現在では、投与の対象となる患者さんは、ホルモン療法後、タキソテールを使用して効果が消失した去勢抵抗性前立腺がんの患者さんです。

◎服用方法

イクスタンジは経口の薬です。1日1回、4錠を通常は朝に服用します。(図4)。

◎今後の可能性

前記のPREVAIL試験の結果では、タキソテールを使う前にイクスタンジを使用しても生存期間の延長を示していることから、抗がん薬使用前でも効果が期待できると考えられています。

しかし、承認申請において、最初の臨床試験であるAFFIRM試験の結果で評価されているため、現状ではタキソテール使用前のイクスタンジ使用は保険では認められない可能性があります。将来的にPREVAIL試験の結果が評価されれば、抗がん薬の使用前にイクスタンジが使えるようになるかもしれません。

◎費用

イクスタンジの薬価は、1カプセル40mg3,138円です。1日の投与量は4カプセル160mgですので、1日の薬価が薬1万2,000円。1カ月で約40万円。1年では約500万円になります。

患者さんは3割負担で、高額療養費制度も使えますが、それでも負担は小さくありません。また、公的な医療費負担も膨大なものになります。

ちなみに、ゾラデックスは1カ月1回の注射で約3万9,000円、カソデックスは1日1回1錠で910円です。

LH-RHアゴニスト製剤や抗アンドロゲン薬など、現在すでに行われている治療は多くの患者さんにいったんは効果が認められています。中には、ホルモン療法のみで10年以上も効果が続く患者さんもいます。こうしたリーズナブルな薬剤が存在することもあり、イクスタンジの使用順位は、将来的には臨床試験の結果によって変わる可能性もありますが、現状では既存のホルモン療法施行後、タキソテールを使ってからになります。

図4 イクスタンジの投与法

知っておきたい!副作用と対策

イクスタンジはホルモン療法薬のため、副作用は抗がん薬と比べて比較的軽いといわれています。臨床試験でよく見られた副作用は疲労や背部痛、便秘、関節痛でした。

イクスタンジの服用と関係があるかどうかは明らかになっていませんが、プラセボ群よりイクスタンジ群に高血圧が多かったと報告されています。降圧薬を服用することで対応できるので、血圧をチェックすることが大切です。

また、日本では報告されておらず、海外でも非常に頻度は少ないですが、痙攣発作を起こすことがあります。イクスタンジの成分に痙攣を誘発する物質があることが認められており、てんかん、脳卒中を起こしたことがあるなど痙攣発作を起こすリスクが高い人は慎重投与とされています。

イクスタンジは発売されて日が浅い薬です。これから多くの患者さんに使用されることで、臨床試験ではわからなかった副作用が現れることがあります。

患者さんやご家族は、身体の様子をよく観察し、細かく医師や薬剤師と連絡を取り合って治療を行っていくことが大切です。

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