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イマチニブ(商品名:グリベック)慢性骨髄性白血病の画期的治療薬の現在

監修●鈴木憲史 日本赤十字社医療センター副院長・血液内科部長
取材・文●星野美穂
発行:2014年9月
更新:2014年12月


第2世代の薬――イマチニブ治療は中止できるか?

◎服用を中止できるかという試験

第1世代のイマチニブ、第2世代のダサチニブ、ニロチニブによる治療が確立し、効果が上がってきたことにより、「薬を中止すべきかどうか」という問題が浮上しています。

慢性骨髄性白血病の治療目標は、まず、第一段階として血液学的完全寛解、そして最終的には細胞遺伝学的完全寛解を目指します。イマチニブ、そして第2世代の薬を組み合わせて治療することで、約8割の患者さんに半年ほどで血液学的完全寛解が得られ、細胞遺伝学的完全寛解も12カ月で達成できるようになりました。

しかし、現段階では、その後薬を一生服用し続ける必要があると考えられています。イマチニブも第2世代の薬も、病気を根本から治す薬ではなく、細胞を増殖させるシグナルを断ち切ることで異常な細胞を作らせない薬だからです。薬の服用を中止すれば、再び細胞の増殖が始まると考えられています。

そうした中、2010年にヨーロッパでイマチニブを投与したことにより分子遺伝学的完全寛解が2年以上得られている患者さんを対象に、イマチニブの投与を中止することが可能かどうかの大規模臨床試験が行われました。その結果、3年経った時点でも約40%が再発しませんでした。再発しても再度イマチニブを投与することにより再度寛解することも確認されました。

これを受けて、日本でも投薬を中止できないかといういくつかの臨床試験が始まっています(図6)。結果はこれからですが、中止できる条件が明らかになれば、患者さんに大きな福音となるでしょう。

なぜなら、新しい画期的な薬であるイマチニブは薬価も高く、医療費は患者さんやその家族に大きな負担となっているからです。薬を一生涯服用しなければならないということも大変なことですが、経済的な負担軽減は患者さんの最も大きな期待です。

図6 慢性骨髄性白血病に関する最近の臨床試験

◎服用の注意――自己判断は避ける

慢性骨髄性白血病は、健康診断やほかの病気での検査により、症状が出ていない慢性期に見つかることがほとんどです。薬の服用も症状がない中で始まります。そのため、薬を服用する意義が見出せず、医師の指示通りに服用しなくなるケースが少なくありません。

イマチニブは、毎日1回、必ず服用することで効果を発揮する薬です。治療の効果判定は染色体の数を計算して行います。思うような効果が得られないと医師は次の治療を考えなければなりません。

ところが、症状がないからといって飲む回数を減らしたり、服薬を勝手に止めたりしていると期待する効果が得られません。そのため、治療の判断を間違わせることにつながります。自己判断による服用量の調整や中止が起こらないよう、患者さんは慢性骨髄性白血病という病気の特徴を理解し、治療のモチベーションにつなげていくことが大切です。

またイマチニブは比較的安全な薬と言われていますが、注意すべき副作用もあります。一緒に摂取すると作用を強める、または弱める薬や食べ物もあります。服用する前に確認しておきましょう。

分子遺伝学的完全寛解=BCR-ABL融合遺伝子が検出されなくなった状態

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