スーテント(一般名:スニチニブ)転移性腎がんの1次治療で最も使われている薬剤
2次治療で使われる薬――インライタ
1次治療でスーテントを使い、効果がなくなった場合や、患者さんが許容できないほど副作用が出た場合には、2次治療が行われます。がん研有明病院では、2次治療の第1候補は*インライタです。
スーテントと同じように、VEGFRを標的とした分子標的薬で、血管新生を阻害することで、治療効果を発揮します。スーテントは他にいくつもの標的を持ちますが、インライタはVEGFRが主な標的となっています。
効果は優れていて、スーテントにも匹敵しますが、副作用が軽いのが特徴です。
2次治療についての臨床試験が行われ、その結果で承認されています。そのため、1次治療ではなく、2次治療以降で使われます。
2次治療にインライタが使われるのは、1次治療でスーテントを使用した場合だけではありません。インターフェロンによる治療が行われた場合も、*ヴォトリエント(詳しくは後述)が使われた場合も、2次治療にはインライタを使う場合が増えています(図2)。

*インライタ=一般名アキシチニブ *ヴォトリエント=一般名パゾパニブ
新たな1次治療薬――ヴォトリエント
2014年に転移性腎がんの治療薬として承認された分子標的薬です。標的とする分子はVEGFRで、スーテントやインライタと同じです。血管新生を阻害することで効果を発揮します(図3)。

日本では軟部肉腫の治療薬としての承認が先になりましたが、転移性腎がんの1次治療においても、スーテントとの比較試験の結果が明らかになりました。その結果、無増悪生存期間(PFS)でも、全生存期間(OS)でも、スーテントに対し非劣性であること(劣っていないこと)が証明されています(図4)。
ヴォトリエントの特徴は、副作用が比較的軽いことです。スーテントを投与したときと、ヴォトリエントを投与したときのQOLを比較した臨床試験では、ヴォトリエントのほうが圧倒的に良いという結果が出ています(図5)。したがって、これまでスーテントを使用していたような患者さんが、ヴォトリエントの投与対象ということになります。
現在、1次治療で最も使用されているのはスーテントですが、今後、ヴォトリエントに変わっていく可能性があります。

(Motzer,R.J. et al:N.E.J.Med. 2013)


*オプジーボ=一般名ニボルマブ *PD-1(Programmed Cell Death-1)
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