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スーテント(一般名:スニチニブ)転移性腎がんの1次治療で最も使われている薬剤

監修●湯浅 健 がん研有明病院泌尿器科がん分子標的治療・化学療法担当副部長
取材・文●柄川昭彦
発行:2014年10月
更新:2015年1月


2次治療で使われる薬――インライタ

1次治療でスーテントを使い、効果がなくなった場合や、患者さんが許容できないほど副作用が出た場合には、2次治療が行われます。がん研有明病院では、2次治療の第1候補はインライタです。

スーテントと同じように、VEGFRを標的とした分子標的薬で、血管新生を阻害することで、治療効果を発揮します。スーテントは他にいくつもの標的を持ちますが、インライタはVEGFRが主な標的となっています。

効果は優れていて、スーテントにも匹敵しますが、副作用が軽いのが特徴です。

2次治療についての臨床試験が行われ、その結果で承認されています。そのため、1次治療ではなく、2次治療以降で使われます。

2次治療にインライタが使われるのは、1次治療でスーテントを使用した場合だけではありません。インターフェロンによる治療が行われた場合も、ヴォトリエント(詳しくは後述)が使われた場合も、2次治療にはインライタを使う場合が増えています(図2)。

図2 インライタの服用法

インライタ=一般名アキシチニブ ヴォトリエント=一般名パゾパニブ

新たな1次治療薬――ヴォトリエント

2014年に転移性腎がんの治療薬として承認された分子標的薬です。標的とする分子はVEGFRで、スーテントやインライタと同じです。血管新生を阻害することで効果を発揮します(図3)。

図3 ヴォトリエントの服用法

日本では軟部肉腫の治療薬としての承認が先になりましたが、転移性腎がんの1次治療においても、スーテントとの比較試験の結果が明らかになりました。その結果、無増悪生存期間(PFS)でも、全生存期間(OS)でも、スーテントに対し非劣性であること(劣っていないこと)が証明されています(図4)。

ヴォトリエントの特徴は、副作用が比較的軽いことです。スーテントを投与したときと、ヴォトリエントを投与したときのQOLを比較した臨床試験では、ヴォトリエントのほうが圧倒的に良いという結果が出ています(図5)。したがって、これまでスーテントを使用していたような患者さんが、ヴォトリエントの投与対象ということになります。

現在、1次治療で最も使用されているのはスーテントですが、今後、ヴォトリエントに変わっていく可能性があります。

図4 スーテントとヴォトリエントの効果

無増悪生存期間中央値は、スーテント9.5カ月、ヴォトリエント8.4カ月で、有意差がないことが認められた。このほか、全生存期間についてもヴォトリエントがスーテントに劣らないという結果が出ている
(Motzer,R.J. et al:N.E.J.Med. 2013)
図5 スーテント、またはヴォトリエントを好む理由

ヴォトリエントとスーテントの両方を服用したことがある人について、副作用の面についてどちらの薬剤のほうが好ましかったかを選んでもらったところ、ヴォトリエントを好む人が80人(70%)、スーテントを好む人が25人(22%)だった。好む理由として挙げられたのは、上記のようなものだった(複数選択)(Escudier,B. et al: J. Clin. Oncol. 2014)

オプジーボ=一般名ニボルマブ PD-1(Programmed Cell Death-1)

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