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シスプラチン(商品名:ブリプラチン/ランダ)1980年代から変わらぬ化学療法の中心的存在

監修●西尾誠人 がん研有明病院呼吸器内科部長
取材・文●柄川昭彦
発行:2014年12月
更新:2019年7月


小細胞肺がんへの治療②進展型――シスプラチン+イリノテカン療法

海外では「シスプラチン+エトポシド療法」が標準治療ですが、日本では「シスプラチン+イリノテカン療法」も標準治療となっており、この治療が最もよく行われています。日本で行われた「シスプラチン+エトポシド療法」と「シスプラチン+イリノテカン療法」の比較試験(JCOG9511)で、後者のほうが治療効果に優れていることが証明されたからです(図4)。

図4 シスプラチン+イリノテカン療法の効果[進展型](JCOG9511)

この治療も4週で1コースとなっています。1日目にシスプラチンを、1、8、15日目(つまり1週間ごと)にイリノテカンを投与し、4週目が休みとなります。これを4コースまで続けます(図5)。

図5 シスプラチン+イリノテカン療法

シスプラチンの投与量は80㎎/㎡が標準とされています。「シスプラチン+エトポシド療法」ではこの量ですが、「シスプラチン+イリノテカン療法」では60㎎/㎡になっています。それによって、副作用の悪心・嘔吐が少し軽くなります。

◎副作用とその対策

代表的な副作用は、①悪心・嘔吐、②腎臓への負担、③長期使用した場合の末梢神経障害、などです。

シスプラチンによる悪心・嘔吐は、抗がん薬の中でも最も強い部類に入ります。強い吐き気や嘔吐が起こり、食事ができなくなるのが、かつては普通でした。しかし、制吐薬の進歩で状況は大きく変わりました。5-HT3受容体拮抗薬(カイトリル、ゾフランなど)の登場で、急性の悪心・嘔吐の9割は抑えられるようになりました。さらに、3日目くらいから現れる遅延性の悪心・嘔吐も、NK1受容体拮抗薬(イメンド)で抑えられるようになったのです。少し食欲が低下する人はいますが、現在では、実際に吐いてしまう人はまずいません。

腎臓への負担が大きいため、シスプラチンを投与するときは、大量の輸液(点滴による水分補給)が必要になります。1日に2~3ℓ入れるため、朝から晩まで点滴をしていなければならず、そのために入院が必要となります。また、大量輸液は心臓に負担をかけるので、心臓の機能も正常であることが必要です。

末梢神経障害は、長期的に使用した場合に現れます。���足のしびれのほか、難聴や耳鳴りが発現することもあります。

抗がん薬の悪いイメージを作ったシスプラチンの副作用ですが、制吐薬などの支持療法が進歩した現在では、苦しまずに治療を受けられるようになっています。

イリノテカン=商品名カンプト/トポテシン カイトリル=一般名グラニセトロン ゾフラン=一般名オンダンセトロン イメンド=一般名アプレピタント カルセド=一般名アムルビシン ノギテカン=商品名ハイカムチン

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