アービタックス(一般名:セツキシマブ)/ベクティビックス(一般名:パニツムマブ)大腸がんの抗EGFR抗体薬
治療方法――FOLFIRI+アービタックス FOLFIRI+ベクティビックス
アービタックスとベクティビックスは、投与スケジュールが異なります。アービタックスが1週間に1回投与 注)、ベクティビックスは2週間に1回投与です(図4)。
薬の効果も現在のところ、大きな違いは出ていないため、投与スケジュールを考慮して、患者さんの利便性に合わせて薬を選択していくことになるでしょう。

知っておきたい!副作用と対策


抗EGFR抗体薬は、ほとんどの人に皮膚障害が出ることが知られています。
抗EGFR抗体薬は、EGFRに結合してがん細胞の増殖を抑えます。EGFRは正常な皮膚にも多く存在するため、そこに抗EGFR抗体薬が結合して皮膚細胞の増殖を抑えてしまった結果、皮膚障害を引き起こすと考えられているのです。
ただ、副作用が強く出ている患者さんは、薬が効いているという証でもあり、皮膚障害の副作用が強いほうが薬の効果も高いことが報告されています。
その一方で、皮膚障害により投与を中止するケースもあるため、皮膚障害をいかに予防するか、あるいは発現しても軽度で抑えるかが治療継続のカギとなります。
皮膚障害は、スキンケアや生活上の注意によっても軽度で抑えたり、予防することができます。具体的なスキンケアの方法(仕方)を紹介します。
スキンケアは、抗がん薬治療を開始する直前から行うことが大切です(表5)。
◆ざ瘡様皮疹=顔や胸、背中などにニキビのようなものが現れます。抗EGFR抗体薬に最も高い頻度でみられる皮膚症状です。投与開始後1~4週間で出現し、3カ月程度で回復することが多いです。
発症後はステロイド外用薬が有効です。予防のために、抗生薬の*ミノマイシンを服用することもあります。
◆乾皮症=手足や体など広範囲の皮膚が乾燥し、皮膚が粉をふいたような状態になったり、かゆみを伴うこともあります。投与開始から3~5週で出現することが多く、予防のために、*ヒルドイドや*パスタロンなどの保湿剤の外用薬を使います。程度に応じて、ステロイド外用薬を併用することもあります。
◆爪囲炎=手足の爪の外側が炎症を起こし、赤く腫れてしまう症状です。悪化すると爪の周りから皮膚が盛り上がり、強い痛みを伴います。感染を起こすとさらに治り難くなります。投与開始5 週後ごろにみられることが多く、軽症であれば洗浄による清潔保持、ガーゼ保護、冷却、テーピング指導で改善します。炎症が強ければステロイド外用薬を使用します。
*ミノマイシン=一般名ミノサイクリン *ヒルドイド=ヘパリン類似物質 *パスタロン=尿素製剤
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