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ザーコリ(一般名:クリゾチニブ)/アレセンサ(一般名:アレクチニブ)肺がんのALK阻害薬

監修●西尾誠人 がん研有明病院呼吸器内科部長
取材・文●柄川昭彦
発行:2015年4月
更新:2015年8月


どう使う?――2つのALK阻害薬

◎遺伝子検査が必要

表3 ALK融合遺伝子を有する肺がん患者に多くみられる背景

日本肺癌学会バイオマーカー委員会:肺癌患者におけるALK遺伝子検査の手引き第1.2版2011より改変

ザーコリやアレセンサなどのALK阻害薬を使用するには、がんの組織を調べ、ALK融合遺伝子が存在することを確認する必要があります。この検査の結果が出るまでに、2週間ほどかかります。

非小細胞肺がんの治療では、まずEGFR(上皮成長因子受容体)に変異があるかどうかを調べる検査が行われます。イレッサなどのEGFRチロシンキナーゼ阻害薬が使えるかどうかを調べるのです。

ALK融合遺伝子を調べる検査は、この検査と同時に行われる場合もありますし、EGFR遺伝子変異陰性であることが確認されてから行われる場合もあります。ALK融合遺伝子をもつのは非小細胞肺がんの約5%ですから、この検査を全員が受けると、95%は陰性という結果になります。

無駄を避けるためには、EGFRの検査を先行させ、EGFR変異陰性の患者さんにALK融合遺伝子の検査を行うのが合理的です。ただし、この方法だと、同時に2つの検査を行うのに比べ、検査結果が出るまでに時間がかかってしまいます。

ALK融合遺伝子は、比較的若い人、女性、非喫煙者や軽度喫煙者、非扁平上皮がんの人に多い傾向があります(表3)。これに当てはまるような場合には、ALK融合遺伝子の検査をぜひ受けるべきでしょう。

◎1次治療または2次治療で使用

検査の結果、ALK融合遺伝子をもっていた場合には、ALK阻害薬を使用できます。ザーコリは1次治療での有効性が証明されていますから、1次治療から使うこともできます。

ただ、EGFRの検査結果が陰性であることを確認してから、ALK融合遺伝子の検査を受けた場合、前述したように検査結果が出るまでにさらなる期間を要します。そのため、すでに通常の抗がん薬による化学療法を開始していることも多いはずです。その場合には、2次療法としてALK阻害薬を使用します。

ALK融合遺伝子をもつ場合には、1次治療か2次治療で必ずALK阻害薬を使うことを勧めます。ザーコリとアレセンサのどちらを使うかについては、両者の比較試験の結果が出ていないので、現時点では明確なことは言えません。

2種類のALK阻害薬を使うことで、さらに生存��間を延ばせる可能性もあります。

イレッサ=一般名ゲフィチニブ

服用方法――ザーコリ、アレセンサ

ザーコリとアレセンサは、いずれも経口薬です。1日に2回、連日服用します。

ザーコリは1回に1カプセル。アレセンサは1回に8カプセル(40㎎×7カプセル、20㎎×1カプセル)です。数を間違えないように注意する必要があります(図4)。

図4 ALK阻害薬の服用方法

◎知っておきたい!副作用と対策

ザーコリの副作用としては、視覚異常、吐き気、下痢、浮腫などがあります。ただ、通常の抗がん薬に比べ、副作用が軽いのが特徴です。

視覚異常では、物が二重に見える、目の端に光がちらつく、かすみ目などの症状が現れます。日常生活に支障が出るほどではありませんが、夜間の車の運転には注意したほうがよいと言われています。

吐き気は出ない人のほうが多いのですが、出た場合には制吐薬をしっかり使い、治療を継続することを考えます。

アレセンサは、ザーコリよりも副作用が軽い印象があります。たまにみられるものとして、味覚異常、発疹、便秘が挙げられます。

ザーコリもアレセンサも、まれに重篤な副作用が起こることがあります。どちらも間質性肺炎が起こることがあるとされているので、注意が必要です。

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