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タキソール(一般名:パクリタキセル)/パラプラチン(一般名:カルボプラチン)卵巣がんのTC療法

監修●尾松公平 がん研有明病院婦人科
取材・文●星野美穂
発行:2015年5月
更新:2019年7月


再発時の治療

再発卵巣がんの治療は、一般的に再発したと思われる病巣の全部か一部を採取し、病理組織学的に悪性腫瘍(がん)を確認し、その後に抗がん薬治療が行われます。

初回の化学療法は、プラチナ製剤とタキサン製剤を併用して3~6サイクル行われます。初回治療終了後、再びがんの増殖が確認された状態になると再発となり、その場合は、再び抗がん薬治療を行います。

最初の治療が終了してから、6カ月以上経過してからの再発の場合、初回治療の多くは、プラチナ製剤を用いた多剤併用療法が行われますが、プラチナ製剤を使用した薬剤が効いたと判断され、プラチナ製剤を含んだ組み合わせの薬剤で治療を行うことがほとんどです。

一方、6カ月以内の再発の場合は、初回治療とは異なる薬剤を単剤で使います。

昨年(2014年)、分子標的薬アバスチンが卵巣がんにも使えるようになり、海外で行われた臨床試験の結果から、再発の場合にもアバスチンによる治療を受ける患者さんも増えることが予想されます。

アバスチンを使う場合は、タキソールやカルボプラチンなどと組み合わせて使用します。

アバスチンには、胃や腸に穴が開く(消化管穿孔)副作用があるため、胃潰瘍などの持病がないか、卵巣がんが腸に癒着していたり、食い込んでいないかを確認して使用する必要があります。

アバスチン=一般名ベバシズマブ

卵巣がん治療の考え方

エンドキサンとシスプラチンの併用療法(CP療法)の時代から比べると、TC療法が標準治療となったことで、卵巣がんの5年生存率は大きく向上しました。それでも卵巣がんは、大腸がんなど遺伝子型による個別化治療が発展してきたがんに比べて、発展が遅れているという現実があります。組織型によっては治療に反応しにくいタイプがあることもわかっており、その場合、その後の治療をどう考えるかは迷うところです(図4)。

図4 卵巣がんの各組織系の特徴

抗がん薬が効きにくいタイプにおいても、現在はTC療法が第一選択になっている

実際にがんが治療に反応しなかった場合には、それ以上治��しないという選択肢もあり得ます。副作用をおして無理に治療を続けると、そのために命を縮めることもあるからです。

ただし、最初から治療しないという選択もまた、治癒の可能性を消してしまいます。「治療はやってみないとわからない」というのが現実なのです。大切なのは、治療のゴールをどこに置くかを、医師と話し合っておくことです。

患者さんは「がんが完全になくなる」ことを治療のゴールとして考えがちですが、一方で医師は、「今以上に悪くならないこと」、「がんが消えないまでも小さくなり、症状を軽くすること」を抗がん薬の効果として評価していることもあります。

自分が治療に何を求めているのかを医師に伝え、同じゴールを目指して情報を共有していくことが、より良い治療につながっていきます。

エンドキサン=一般名シクロホスファミド シスプラチン=商品名ブリプラチン/ランダ

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