ネクサバール(一般名:ソラフェニブ)分化型甲状腺がんの治療薬
知っておきたい!副作用
ネクサバールには特有の副作用があることも認識しておく必要があります。最も頻度の高い副作用は手足皮膚反応です。
軽度では、手足の皮膚の赤い腫れやほてり感、むくみ、角質が厚くなるなどの症状が見られるのみですが、中等度からは、痛みも出て、角質が剥がれたり、水泡ができたり、家事や日常で手足を使う作業に支障を来します。
重度になると、さらに痛みが増し、入浴や着替え、食事、トイレなどあらゆる日常行動に支障を来してしまいます。
副作用の程度に応じて、薬の減量や休止のほか、皮膚の治療も必要になるため、早めに主治医や看護師に相談しなければなりません。
多くの場合、治療開始後2週間以内に症状が出ます。事前に角質を除去する、保湿剤で保護する、皮膚への刺激をなるべくかけないように、履物や手袋などを工夫するなどの対策を行います。皮膚科の医師のアシストも借りながら治療を実施する場合もあります。
他にも、下痢や食欲不振、高血圧、低カルシウム血症などの副作用があります。そして、まれではありますが、重篤なものでは、肝機能障害や横紋筋融解症などもあります。いずれの副作用についても、いつもと違う症状が気になったらすぐに主治医に速やかに相談するべきです。
期待されるもう1つの薬 レンビマ
2015年3月には、ネクサバールに続くチロシンキナーゼ阻害薬として、*レンビマが保険承認されました(2015年4月現在薬価未収載)。分化型がんを対象にした国際第Ⅲ相試験(SELECT試験)で、レンビマとプラセボを比較したところ、無増悪生存期間中央値で、レンビマは18.3カ月とプラセボの3.6カ月に対し、かなりの効果を示しました(図4)。

奏効率においても、64.8%対1.5%と大きな差を示しました。
このレンビマも、腫瘍血管新生や腫瘍増殖のシグナル経路にかかわる、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)や幹細胞因子受容体(KIT)、がん原遺伝子(Rearranged During Transfection:RET)といった分子に作用して抗腫瘍効果を高めます。
レンビマの副作用は、高血圧、タンパク尿、疲労感などがメインで、ネクサバールの副作用と同様に日常的な管理が重要です。
甲状腺がんの治療は、手術が中心であるた��、これまで日本の場合はとくに、甲状腺・内分泌外科医がトータルで診療にあたってきました。
しかし、分子標的薬の登場により、薬物療法の専門家である腫瘍内科医や、多様な副作用に対応してくれる各科の医師、がん専門薬剤師、看護師などが、チームで治療していくことが、重要となってきています。
そして、薬の性質を熟知したうえで、どういう副作用が起こりうるのかをきちんと把握し、それをうまくコントロールして長く薬を使えるようにすることが大切です。
現在、このような状況を踏まえて、日本臨床腫瘍学会と日本甲状腺外科学会、日本内分泌外科学会、日本甲状腺学会、日本頭頸部外科学会の5学会による連携プログラムが立ち上がり、チームによる診療をより円滑に進める対策を取り始めました。
診療を受けるにあたっては、学会のホームページなどで、十分に下調べをして、経験豊富で、副作用対策も考慮しながら適切な治療をしてくれる病院や医師のもとで治療を受けてください。
*レンビマ=一般名レンバチニブ

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