タキソテール(一般名:ドセタキセル)/イクスタンジ(一般名:エンザルタミド)/ザイティガ(一般名:アビラテロン)/ジェブタナ(一般名:カバジタキセル)去勢抵抗性前立腺がんの治療薬
どんな薬?――ザイティガ
男性ホルモンの合成を抑える薬です。従来から使われていたLH-RHアゴニストやLH-RHアンタゴニストは、精巣から血液中に分泌される男性ホルモンを抑えますが、前立腺がんが作り出す男性ホルモンは抑えられませんでした。ところが、ザイティガは、がん細胞が男性ホルモンを作るのも、しっかりと抑え込みます。それにより、去勢抵抗性前立腺がんに対しても、優れた治療効果を発揮します。
去勢抵抗性前立腺がんで抗がん薬治療後の患者さんを対象に、「ザイティガ+プレドニゾロン群」と「プラセボ+プレドニゾロン群」の比較試験が行われています。ザイティガを投与する際には、副作用防止のためにプレドニゾロンを併用します。この試験の結果、全生存期間中央値は、ザイティガ群が14.8カ月、プラセボ群が10.9カ月でした。
この後、抗がん薬治療前の去勢抵抗性前立腺がんを対象にした同様の比較試験も行われ、それでもザイティガの有効性が証明されています。
副作用としては、男性ホルモンが低下するので、それに伴う症状(筋力低下、体脂肪の増加、やる気の低下など)が現れます。日本人では、肝機能障害も比較的起こりやすい副作用です。
経口剤で、毎日服用します。
どんな薬?――ジェブタナ
タキソテールと同じタキサン系の抗がん薬です。タキソテールは、細胞内の物質を細胞外に運び出す役割をするトランスポーターと結合しやすいため、細胞内にとどまりにくい性質があります。それに比べ、ジェブタナはトランスポーターと結合しにくく、なかなか運び出されません。そのため、がん細胞内で高い濃度を維持でき、優れた効果を発揮します。
タキソテールで治療した後の去勢抵抗性前立腺がんの患者さんを対象に、ジェブタナと抗がん薬のミトキサントロンを比較した臨床試験があります。その結果、全生存期間中央値は、ジェブタナ群が15.1カ月、ミトキサントロン群が12.7カ月でした。
この臨床試験に基づき、ジェブタナの適応は、すでに抗がん薬治療を行った去勢抵抗性前立腺がんとなっています。
現在、タキソテールの前にジェブタナを使用する臨床試験が進められています。結果によっては、ジェブタナをタキソテールの前に使えるようになるかもしれません。
ジェブタナは副作用に注意が必要です。タキソテールに比べ、末梢神経障害や脱毛は少ないのですが、重い好中球減少が起こりやすいのです。感染が起きた場合には、危険な状態になることもあります。
G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)には好中球を増やす働きがありますが、昨年(2014年)末に、持続型G-CSF製剤が承認されて使えるようになりました。1回注射すると2週間効果が持続します。これを予防的に併用することで、ジェブタナは比較的安全に治療が行えるようになっています。
ジェブタナは3週間~4週間に1回、点滴で投与します。過敏反応を防ぐため、投与時に以下の薬剤を併用します。
❶抗ヒスタミン剤(クロルフェニラミンマレイン酸塩5㎎、またはジフェンヒドラミン25㎎)、❷副腎皮質ホルモン剤(デキサメタゾンリン酸エステル8㎎、または同等の副腎皮質ホルモン剤)、❸H2受容体拮抗剤(ラニチジン塩酸塩、または他のH2受容体拮抗剤)。
どの治療薬から使用するか?

去勢抵抗性前立腺がんになった場合、タキソテール、イクスタンジ、ザイティガ、ジェブタナという4種類の薬剤を治療に使用することができます。使う順番については、ジェブタナだけはタキソテールの後でないと使えませんが、他にはとくに決まりはありません。
何から使用するのがいいのかを示した臨床試験結果は、現在のところありません。こういった状況で、患者さんが何を選択しているかというと、イクスタンジを選ぶ人が多いようです。抗がん薬ではないというのが最大の理由。ザイティガと比べると、ステロイド薬を併用しなくてもいいのが、選ばれる理由のようです。
去勢抵抗性というのは、ホルモン療法が効かなくなった状態ですから、ホルモン療法薬とは異なる作用をもつタキソテールを選択するのも、理にかなっているといえます。しかし、抗がん薬に強い抵抗をもつ人が多く、タキソテールを選ぶ人はほとんどいません。これは、効果の面からすると残念なことですが、例えば脱毛の副作用が仕事に支障を生じる場合など、患者さんの生活に応じた選択は必要になります。
抗がん薬は全身状態(PS)がある程度よくないと使えないため、早い段階でタキソテールを使用したほうがいい、と主張する専門家もいます。
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