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新たに2つの選択肢が登場 再発・進行胃がん治療の化学療法 推奨の1次治療:SP療法(TS-1+シスプラチン)/同等の新1次治療:SOX療法(TS-1+エルプラット)/新たな2次治療:サイラムザ+タキソール併用療法

監修●陳 勁松 がん研有明病院消化器化学療法科副部長
取材・文●星野美穂
発行:2015年9月
更新:2020年3月


サイラムザ――セカンドチョイスに強力な戦力が登場

図4 進行・再発胃がんに対するサイラムザの効果
(全生存期間、RAINBOW試験より)

出典:Wilke H,et al:Lancet Oncol 2014;15:1224-35

●どんな薬?

2015年6月、再発・進行胃がんの治療薬として、分子標的薬「サイラムザ」が発売されました。

がん細胞は増殖・転移するときに、栄養や酸素を取り込むために新しい血管を作ります。これを「血管新生」といいます。サイラムザは、この血管新生を阻害する薬です。

●期待される効果

標準治療の化学療法を行い、効果がなかった、あるいは実施後に増悪が認められた進行胃がんの患者さんを対象に、サイラムザとタキソールを併用した群と、薬効のないプラセボとタキソールの併用群とを比較した「RAINBOW試験」では、サイラムザ+タキソール併用群の全生存期間の中央値は9.6カ月だったのに対し、プラセボ+タキソール併用群では7.4カ月という結果でした(図4)。

サイラムザとタキソール併用によって、がんが一定以上縮小する人は約30%、がんが増大せず維持できる人まで含めると、80%の人ががんの増殖を一時的に抑えることが期待できます。がんが縮小することで、がんによる症状の改善も期待できます。

●投与方法

標準治療とされるSP療法やSOX療法を実施して、効果がなくなった人への次の治療として行われます。

通常、サイラムザとタキソールを併用します。サイラムザは2週間ごとに注射で投与します。タキソールは1週間ごとに3週間連続で投与して、1週間休みます(図5)。

図5 サイラムザ+タキソール併用療法の治療方法

●知っておきたい!副作用と対策

◆タンパク尿

自覚症状はほとんどなく、尿検査でしか測ることができません。2週間ごとの治療日にはかならず尿検査を行い、尿にタンパクが出ていないかをチェックする必要があります。尿タンパク3+で休薬となります。

◆高血圧

治療が進むにつれて、血圧が上がってくることがあります。家庭血圧計でこまめに血圧をチェックしましょう。高血圧が続く場合は、降圧薬の服用を開始することがあります。

◆消化管穿孔

頻度は非常に少ないですが、胃に孔があく消化管穿孔を起こすことがあります。いつもと違う強い腹痛や吐血、下血などが起きたら、すぐに医療機関へ連絡します。

◆血栓

頻度は少ないものの、まれに血管内に血のかたまり(血栓)ができて血流が閉塞することがあります。静脈が詰まることが多く、手足の片側だけがむくむことがあれば、すぐに医療機関へ連絡します。

サイラムザ=一般名ラムシルマブ タキソール=一般名パクリタキセル

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