子宮頸がんの化学療法 同時化学放射線療法(シスプラチン+放射線療法)/抗がん薬単独治療(シスプラチン+タキソール療法)
どんな治療?❷――抗がん薬単独治療
子宮頸管以外の臓器へ転移し治癒困難とされる場合(Ⅳ(IV)B期)や、局所治療では制御困難な再発患者さんに行われる治療法です。根治を目指すのではなく、延命を目的として使用されます。
標準治療のレジメンは、シスプラチンと*タキソールの併用療法(TP療法)と*カルボプラチンとタキソールの併用療法(TC療法)とシスプラチンの単独療法があります。
●臨床試験

進行・再発した子宮頸がん患者さん対象とした第Ⅲ(III)相試験として、シスプラチンとタキソール併用(TP療法)群と、シスプラチン単独群での比較が行われました。
全生存期間(OS)の中央値には改善が認められなかったものの、奏効率(ORR)はTP療法群が36%とシスプラチン単独群の19%よりも高く、無増悪生存期間(PFS)も4.8カ月対2.8カ月と、TP療法群のほうが長いという結果でした。
一方、副作用を少なくする目的で、シスプラチンを同じプラチナ製剤でより副作用が少ないカルボプラチンに変更したTC療法の臨床試験も行われました。その結果、TP療法群と、カルボプラチンとタキソール併用(TC療法)群では、後者は前者に比べて非劣性、つまり有効性が劣らないという結果が得られています。
子宮頸がんは進行すると、尿管をがんが圧迫し尿の通り道を塞ぎ、水腎症や腎不全などを引き起こすことが少なくありません。そうしたことが起こると、腎毒性予防のため投与前後に利尿を必要とするシスプラチンの投与が難しくなります。そうした場合、シスプラチンを同じプラチナ製剤でも腎毒性が低く腎機能に応じて投与量を決定できるカルボプラチンに変更して治療を行うという選択肢があります。
また、局所治療で制御不能の子宮頸がんに対して、これまでのTP療法と、*アバスチンを加えた治療法とを比較する国際共同試験が行われ、OSが有意に延長するという画期的な結果が得られています(図4)。
●投与方法
3週間を1コースとして抗がん薬を投与します(図5)。

シスプラチンやタキソールの投与前に、アレルギーや吐き気の予防薬を投与します。また腎障害を予防するために、輸液を大量に注入するため、点滴の時間は10時間を超えることもあります。
●知っておきたい副作用

◆骨髄抑制
白血球や好中球が減少することがあります。これらが減少すると感染症に罹患しやすくなるため、人ごみを避け、手洗いやうがいを積極的に行うことが大切です。
◆悪心・嘔吐/食欲不振
投与数時間~数日後に悪心・嘔吐、食欲不振を起こすリスクが高く、ガイドラインにおいて、*アプレピタント+5HT3受容体拮抗薬+*デキサメタゾンの予防的使用が推奨されています。悪心・嘔吐が強い間は、無理に食事を摂るより、食べやすいものを少しずつ口にするようにしましょう。
◆腎障害
腎機能障害の予防・軽減のため、大量の点滴を行います。患者さん本人も、水分を多めに取り、尿をたくさん出すようにしましょう。尿量の減少やむくみなどが現れたら、医師や看護師に連絡してください。
◆過敏反応
薬剤投与中や投与終了後に、息苦しい、ぜいぜいする、胸がドキドキする、皮膚が赤くなるなどの症状が現れたら、医師や看護師にすぐに知らせてください。
◆末梢神経障害
手首から先や、足首から下の部位に、しびれ、刺激感、灼熱感などが現れます。症状を緩和する方法として、マッサージや手足を温める、締め付ける靴や靴下を履かないなどの方法があります。
*タキソール=一般名パクリタキセル *カルボプラチン=商品名パラプラチン/カルボプラチン *アバスチン=一般名ベバシズマブ *アプレピタント=商品名イメンド *デキサメタゾン=商品名デカドロンなど *タキソテール=一般名ドセタキセル
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