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悪性神経膠腫の治療薬 テモダール(一般名テモゾロミド)/アバスチン(一般名ベバシズマブ)/ギリアデル(一般名カルムスチン)

監修●田部井勇助 日本赤十字社医療センター脳神経外科
取材・文●柄川昭彦
発行:2016年2月
更新:2016年6月


ギリアデル――切除部位に留置する 手術の効果を高める薬

グレード3以上の悪性神経膠腫では、手術した部位に留置するギリアデルという薬を使用することもできます。この薬が使われるのは、腫瘍を全摘出に近い状態まで取り除けた場合です。それでも残存していると考えられる腫瘍細胞を攻撃するため、手術中に、脳の切断面を覆うように、1円硬貨大の薬を留置します。その後2~3週間にわたって、じわじわと薬の成分が染み出し、治療効果を発揮するのです。

ギリアデル=一般名カルムスチン

治療スケジュール

悪性神経膠腫の治療は、「手術→術後補助療法→維持療法」という流れになっています(図2)。

図2 悪性神経膠腫の治療の流れ

術後補助療法では、放射線治療とテモダールを併用し、必要に応じてアバスチンを追加併用します。期間は放射線治療が行われる6~7週間です。この間、経口薬のテモダールは連日投与、点滴のアバスチンは2週間おきに投与されます(図3)。

ただ、アバスチンには傷が治りにくくなる「創傷治癒遅延」という副作用があるため、手術後に4週間あけてから使用する必要があります。手術後4週間以内に術後補助療法を開始する場合でも、アバスチンだけは術後4週間以降から始めるようにします。

術後補助療法が終了したら、4週間の休薬期間をとり、維持療法に移行します。テモダールは4週サイクルで、最初の5日間のみ連日投与。アバスチンは2週間おきに投与します(図4)。テモダールの1回の投与量は、術後補助療法より維持療法のほうが多いのですが、4週間の総投与量は、維持療法のほうが半分以下になっています。

図3 テモダール+アバスチン+放射線の治療(術後補助療法)
図4 テモダール+アバスチンの治療(維持療法)

知っておきたい副作用

■テモダールの副作用

テモダールでよく現れる副作用は、吐き気や便秘などの消化器症状です。これら���症状が強い場合には、服用前に制吐薬や便秘薬を使用します。維持療法では、5日間の服用が終了しても吐き気が起こることがあります。その場合には、遅発性の吐き気に効く制吐薬が使われます。

テモダールによる骨髄抑制は比較的軽いのですが、白血球の中でもリンパ球が減少しやすいのが特徴です。稀に重い感染症を起こすことがあるので、それを防ぐためにST合剤(サルファ薬と抗菌薬の合剤)を併用することが推奨されています。

■アバスチンの副作用

アバスチンの副作用は、出血、血栓塞栓症、タンパク尿、高血圧、創傷治癒遅延などが代表的なものです。脳出血、脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓症などの重篤な事態を引き起こすこともあります。

高血圧が多くの人で生じるので、必要に応じて降圧薬を使用し、血圧を適切にコントロールすることが大切です。それが出血による合併症を防ぐのにも役立ちます。

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