悪性神経膠腫の治療薬 テモダール(一般名テモゾロミド)/アバスチン(一般名ベバシズマブ)/ギリアデル(一般名カルムスチン)
ギリアデル――切除部位に留置する 手術の効果を高める薬
グレード3以上の悪性神経膠腫では、手術した部位に留置する*ギリアデルという薬を使用することもできます。この薬が使われるのは、腫瘍を全摘出に近い状態まで取り除けた場合です。それでも残存していると考えられる腫瘍細胞を攻撃するため、手術中に、脳の切断面を覆うように、1円硬貨大の薬を留置します。その後2~3週間にわたって、じわじわと薬の成分が染み出し、治療効果を発揮するのです。
*ギリアデル=一般名カルムスチン
治療スケジュール
悪性神経膠腫の治療は、「手術→術後補助療法→維持療法」という流れになっています(図2)。

術後補助療法では、放射線治療とテモダールを併用し、必要に応じてアバスチンを追加併用します。期間は放射線治療が行われる6~7週間です。この間、経口薬のテモダールは連日投与、点滴のアバスチンは2週間おきに投与されます(図3)。
ただ、アバスチンには傷が治りにくくなる「創傷治癒遅延」という副作用があるため、手術後に4週間あけてから使用する必要があります。手術後4週間以内に術後補助療法を開始する場合でも、アバスチンだけは術後4週間以降から始めるようにします。
術後補助療法が終了したら、4週間の休薬期間をとり、維持療法に移行します。テモダールは4週サイクルで、最初の5日間のみ連日投与。アバスチンは2週間おきに投与します(図4)。テモダールの1回の投与量は、術後補助療法より維持療法のほうが多いのですが、4週間の総投与量は、維持療法のほうが半分以下になっています。


知っておきたい副作用

■テモダールの副作用
テモダールでよく現れる副作用は、吐き気や便秘などの消化器症状です。これら���症状が強い場合には、服用前に制吐薬や便秘薬を使用します。維持療法では、5日間の服用が終了しても吐き気が起こることがあります。その場合には、遅発性の吐き気に効く制吐薬が使われます。
テモダールによる骨髄抑制は比較的軽いのですが、白血球の中でもリンパ球が減少しやすいのが特徴です。稀に重い感染症を起こすことがあるので、それを防ぐためにST合剤(サルファ薬と抗菌薬の合剤)を併用することが推奨されています。
■アバスチンの副作用
アバスチンの副作用は、出血、血栓塞栓症、タンパク尿、高血圧、創傷治癒遅延などが代表的なものです。脳出血、脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓症などの重篤な事態を引き起こすこともあります。
高血圧が多くの人で生じるので、必要に応じて降圧薬を使用し、血圧を適切にコントロールすることが大切です。それが出血による合併症を防ぐのにも役立ちます。
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