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慢性リンパ性白血病の治療薬 FCR療法(フルダラ+エンドキサン+リツキサン)/アーゼラ(一般名オファツムマブ)/マブキャンパス(一般名アレムツズマブ)

監修●塚崎邦弘 国立がん研究センター東病院血液腫瘍科科長
取材・文●半沢裕子
発行:2016年4月
更新:2016年7月


アーゼラ――再発・難治性の治療薬①

CLLの多くは残念ながらやがて再発しますが、再発までの期間が長い場合は同じ治療が奏効することも少なくありません。さらに最近、再発・難治性CLL治療薬が2剤登場しました。2013年5月保険適用のアーゼラと、2014年11月保険適用のマブキャンパスです。

アーゼラはリツキサンと同じくCD20抗体ですが、認識する部位が異なります。2011年に海外で第Ⅱ(II)相試験が行われ、フルダラが効かなくなった症例、あるいは、フルダラが効きにくい大きなリンパ節病変がある症例に対し、奏効率47%の結果が得られました。

日韓共同の第Ⅰ(I)/第Ⅱ(II)相試験では再発・難治性の10症例に単剤投与され、7例で部分寛解(PR)しています。抗腫瘍効果はリツキサンより強いと考えられ、他剤との併用療法も試みられおり、今後が期待できそうです。

■投与法と副作用

用法・用量は、成人で週1回(初回300mg、2回目以降2,000mg)を8回まで点滴静注し、8回目の投与から4~5週間あけ、4週間に1回2,000mgを12回目まで投与します(図3)。

図3 アーゼラの投与法

代表的な副作用は輸注反応(点滴中または直後に起こる有害事象。関節痛、めまい、息切れ、蕁麻疹、嘔吐など)や、肝機能障害など。重篤な腎機能障害や血圧降下の報告もあり、注意が必要です。

マブキャンパス――再発・難治性の治療薬②

マブキャンパスは、成熟Bリンパ球ほかが発現するCD52というタンパク質を認識する抗体製剤です。フルダラが効きにくく、アルキル化剤(エンドキサン、Chlorambucil〔日本では未承認〕など)の治療歴があるCLLや、フルダラなどのプリンアナログでの治療歴のあるCLL を対象とした海外第Ⅱ(II)相試験で、単剤での有効性と安全性が確認されています。

日本でも再発・難治性のCLL患者対象の国内第Ⅰ(I)相試験が行われ、わずか6例中2例、つまり33%の奏効率の結果で承認されています。CLLがアンメット・ニーズ(患者数は少ないが治療薬の必要性が高い疾患)であるためと考えられています。

マブキャンパスがもう1つ特徴的なのは、17番染色体に欠失のあるCLLに比較的高い奏効を示す点です。このタイプのCLLは予後が悪く���効な手立てがなかったので、このタイプの患者にとっては大きな朗報と言えます。

なお、海外では初発治療でも、マブキャンパスがChlorambucilによる標準治療に比べて奏効率とPFSで勝り、奏効率は8割との結果も出ています。OSで勝らなかったため標準治療にはなりませんでしたが、欧米では初発の治療薬としても定着しています。

■投与法と副作用

用法・用量は1日1回3mgの連日投与からスタートし、1日1回10mgを連日投与したのち、1日1回30mgを週3回1日おきに点滴静注します(図4)。投与期間は開始から12週間までとなっています。

図4 マブキャンパスの投与法

マブキャンパスは有害事象にも注意が必要です。T細胞にも作用するため、免疫不全症状が強く現れます。感染予防は重要で、中でもニューモシスチス肺炎予防のST剤は必須です。また、サイトメガロウイルスの再活性化も起こりやすく、国内の試験では結核も出ています。輸注反応も非常に強く、警戒が必要です。

Chlorambucil(クロラムブシル)=国内未承認、商品名Leukeran(ロイケラン)

CLL治療の注意点――高悪性度への転化と二次がん

CLLについてはあと2つ、注意点があります。第1に悪性度の高いびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に突然転化することがある点です。急激にリンパ節や肝臓、脾臓が腫れたり、発熱や急激な体重減少が起きた場合にはこれを疑う必要があります。

第2に、CLLの患者には別ながんが起きやすいことです。腫瘍に対する免疫が低下するためと推測されますが、CLLの患者さんはCLLの検診だけでなく一般的ながん検診や成人検診も定期的に受けることが大切です。

それでも、早期発見例が多く、進行が緩やかなCLLは、定期的にモニターし、動きがあったら手を打つという点では、糖尿病や高血圧などの成人病にも似ています。今後、新薬もさらに増えると予想されていますので、患者さんには前向きに治療に取り組んでいただきたいと思います。

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