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GIST(消化管間質腫瘍)の治療薬 グリベック(一般名イマチニブ)/スーテント(一般名スニチニブ)/スチバーガ(一般名レゴラフェニブ)

監修●尾阪将人 がん研有明病院消化器センター肝胆膵内科副医長
取材・文●伊波達也
発行:2016年5月
更新:2019年7月


どんな薬?スーテント

■薬の特徴

グリベックに耐性ができてしまった後の2次治療の選択肢として、現在エビデンス(科学的根拠)が認められているのがスーテントです。チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の一種で、腫瘍や血管新生に関与する複数のプロテインキナーゼの活性を阻害するマルチキナーゼ阻害薬と言われる薬です。2008年に保険収載となりました。

例えば、グリベックによる治療の効果が2年間で低下した場合でも、スーテントの服用により、その後、約半年間の奏効、約1年間の生存が期待できます。

■治療スケジュール

1日1回4カプセル50mgを食後に4週間服用して、2週間休薬します(図3)。ただし、副作用のためになかなかスケジュール通りに服用できないケースも多いです。その場合は37.5mg連日投与や投与スケジュールを変更するなどの工夫が必要です。

ヨーロッパの臨床試験では、投与量とスケジュールを守った群と医師が調節した群では、後者のほうが長期の治療成績がよかったという報告があります。減量や投与スケジュールのアレンジで治療を長期継続することが重要なのです。

図3 スーテントの投与法

■知っておきたい副作用

グリベックに比べると、副作用が強く、手足症候群、血小板や白血球の減少、高血圧、甲状腺機能低下症、稀に心不全などの重篤な副作用もあるため、日常的な十分な管理と注意が必要です。

スーテント=一般名スニチニブ

どんな薬?スチバーガ

■薬の特徴

GISTの進行・再発例に対して、2013年に承認されたのがスチバーガです。病勢が進んでグリベックやスーテントの効果が見られなくなった場合や、副作用のために使用できない場合に行う治療です。スーテント同様、マルチキナーゼ阻害薬と言われる薬です。

3次治療薬が登場したことで、さらに約半年間は生存期間を延ばせるようになりました。つまり、切除不能のGISTでも、1次治療のグリベックを100人受けたとすると、途中で耐性ができても、2次治療、3次治療と継続すれば、50人は5年間の延命が可能になってきています。切除不能の症例では、胃がんは生存期間約1年、大腸がんでは約2年半ですから、それらと比較するとかなり良好な成績ということができます。

■��療スケジュール

1日1回160mgを食後に、3週間服用し(2週間の場合もある)、1週間休薬します(図4)。スーテントと同様に、患者によって投与方法を考えていくことが重要です。

図4 スチバーガの投与法

■知っておきたい副作用

やはりスーテント同様、グリベックに比べると副作用が強く、手足症候群、皮疹、高血圧、下痢、食欲減退、疲労などの副作用が出ます。手足症候群や高血圧は、治療後2カ月以内に出ます。肝機能障害、血小板減少、間質性肺疾患など重篤な副作用が出ることがあるため十分な注意が必要です。

スチバーガ=一般名レゴラフェニブ

GISTの治療で大切なこと――ぜひセカンドオピニオンを

GISTの治療の第1選択は冒頭でも述べた通り手術ですが、他の固形がんと異なり、手術不能の場合でも、薬物でコントロールしていくことが可能な病気と言えます。

そこで重要なことは、初期の治療戦略をどう立てるかです。希少がんであるため、GISTの治療について経験豊富な施設や医師のもとを訪れるか、セカンドオピニオンを受けることが大切です。施設の情報を得るには、『GIST研究会』などのホームページが参考になります。

治療ができないと判断されたケースでも、グリベックによる治療が奏効し年単位の生存期間が得られたり、手術が可能になる場合もあります。治療中は、有害事象をマネジメント(管理)しながら、適切な投与をできれば、地域の医療施設と連携しての治療も可能です。

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