バイオシミラーとジェネリック医薬品との違い バイオ後続品“バイオシミラー”の開発状況と今後の展望
すでに承認されたバイオシミラー
日本では、がん領域においていくつかのバイオ医薬品が特許切れを迎え、バイオシミラーが登場してきている。
悪性リンパ腫の治療で使われるリツキシマブのバイオシミラーは、製薬会社のサンドが、2017年9月に承認を取得し、2018年1月に提携する協和発酵キリンが販売を開始した。日本化薬も開発に取り組んでおり、現在第Ⅲ相の臨床試験が進行中である。
乳がんや胃がんの治療で使われるトラスツズマブのバイオシミラーは、2018年3月に、日本化薬と韓国の製薬会社であるセルトリオンが承認を得た。ただし、適応は胃がんだけで、乳がんは含まれていない(表3)。

肺がん、大腸がん、卵巣がんなどの治療で使われるベバシズマブも、バイオシミラーの開発が進んでいる。
「バイオ医薬品の先発品が、次々と特許切れの時期を迎えています。当然、それを見越して、何年も前からバイオシミラーの開発が進められていたはずです。これからも、新たなバイオシミラーが次々と登場してくるでしょう。国もそれを進めようとしています。医療費の抑制につながるのはもちろんですが、それだけではなく、日本の技術力を向上させるという面でも、バイオシミラーへの期待は大きいようです」(山口さん)
ジェネリック医薬品の薬価は、基本的には先発品の50%となっている。ジェネリック医薬品が広く使われるようになれば、それだけ国全体の医療費を下げることができる。もちろん、患者さんの負担も軽くなる。
バイオシミラーの薬価は、先発品の70%が基本となっている。ジェネリック医薬品より高いのは、開発が困難なのに加え、臨床試験が必要になるなど、承認までの負担が大きいことも関係しているようだ。ただ、バイオシミラーの開発が進んでいるバイオ医薬品は、もともと高額な薬剤が多いので、薬価が30%下がることによる影響はかなり大きい。
ただ、患者の負担がどの程度減るかについては、一概には言えないようだ。
「がんの治療でバイオ医薬品を使用した場合、多くは高額療養費制度の対象となりますから、バイオシミラーにしたからといって、負担額が70%になるわけではありません。複数回使用した場合には、バイオシミラーのほうが負担額が大きくなる場合がある、といった試算もあります。条件によって異なるので一概には言えませんが、全体としては、負担軽減につながるのではないでしょうか」(西垣さん)
正しい知識を持つことが大切
まだスタートしたばかりのバイオシミラーだが、その開発は急ピッチで進められているようだ。今後、新しいバイオシミラーが次々と登場してくることになるのだろう。
「治療を受ける患者さんには、ぜひ正しい知識を持っていただきたいと思います。バイオシミラーは先発医薬品と全く同一の物質ではないわけですが、それを“似て非なるもの”と考えてしまったら、これで大丈夫なのかと心配になるでしょう。そうではなくて、製造方法は異なるけれど有効成分は同じ、ということが理解できていれば、いたずらに不安に陥ることなく、治療を受けられると思います」(西垣さん)
「ジェネリック医薬品が登場したばかりの頃は、信用できないという意見もありましたが、現在では、抵抗感なくジェネリックの抗がん薬が使われています。バイオシミラーもそうなっていく可能性が高いと思います。海外ではすでに使い始めている国もありますが、特に問題は起きていないようです」(山口さん)
がん医療を大きく進歩させた抗体薬などのバイオ医薬品。それらが特許切れの時期を迎えたことで、これからはバイオシミラーが大きな役割を担う時代になりそうである。
*リツキシマブ=商品名リツキサン *トラスツズマブ=商品名ハーセプチン *ベバシズマブ=商品名アバスチン