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自分が納得した治療を受けるために 個別化治療の鍵〝分子標的薬〟 効果・副作用・コストを知る

監修●田村研治 国立がん研究センター中央病院乳腺・腫瘍内科科長
取材・文●柄川昭彦
発行:2013年12月
更新:2019年9月

価格が高い薬なので費用対効果を考える

分子標的薬は、従来型の抗がん薬と比べて高額である。金額は薬の種類によって様々だが、分子標的薬の薬剤費だけで、1カ月で数十万円になるのが普通である。健康保険が3割負担なら、その3割が支払い額となる。

「分子標的薬が高額なのは、開発に費用がかかるためです。様々な遺伝子レベルの研究が必要ですし、臨床試験を行うのにも手間とお金がかかっているため、どうしても高額になってしまいます」

治療費が高額になった患者さんをサポートするシステムとして、高額療養費制度がある。該当する場合、この制度を活用することで、支払い額を減額することが可能だ。

「日本では、医療費に関して費用対効果(コストベネフィット)を考えることがあまりありません。しかし、例えばイギリスでは、費用対効果が治療を選択する際の重要な要素となっています。ある治療に対して、どれだけ費用がかかり、どれだけ効果があるのかを考えるわけです」

承認されている分子標的薬に、何らかの効果があることは間違いないが、ある効果を得るために、どれだけ費用がかかるかは様々である。

「どんなに費用がかかっても、効果があるなら治療を受けたい人もいるでしょう。わずかな効果にそんな費用がかかるなら、私はその治療を受けなくてもいい、と考える人もいるでしょう。患者さんが効果や費用に関して十分な情報を持ち、よく考えてみることが大切です」

そのためには、病院の相談支援センターなどで相談することが勧められるそうだ。

高額療養費制度=1カ月間(同月内)に同一の医療機関で計上した自己負担額を世帯単位で合算し、自己負担限度額を超えた分については保険者(全国健康保険協会、公的医療保険組合等)によって支給される制度

分子標的薬の開発はまだまだ進んで行く

今後、分子標的薬の開発は、どう進んでいくのだろうか。

「非小細胞肺がんにおけるEGFRの変異は、がんの増殖を促すミューテーション(変異)なので、ドライバーミューテーションと呼ばれています。分子標的薬の開発では、新たなドライバーミューテーションを発見し、それを標的とする薬剤を開発することを目指しています。このとき、ドライバーミューテーションを、バイオマーカーとして利用できれば理想的です」

分子標的薬の登場で個別化医療が進んだが、個別化すればするほど、ある薬剤が効果を現す患者さんは限られてくる。したがって、今後は、対象になる患��さんは少ないが、その人たちには非常によく効く、というタイプの分子標的薬が多く登場することになるのだろう。

「分子標的薬の開発は、患者数の多い5大がんを中心に進んできました。しかし、これからは、患者数の少ない希少がんに対する分子標的薬の開発も、期待されています」

分子標的薬が使われるようになって10年余り。現在も、新しい分子標的薬の開発が、急ピッチで進められている。

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