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副作用はこうして乗り切ろう!「皮膚症状」

監修●山田みつぎ 千葉県がんセンター看護局通院化学療法室看護師長
構成●菊池亜希子
発行:2015年9月
更新:2020年2月


常日頃から皮膚のコンディションを整えておく

では、どのように対処すれば良いのでしょう?対策は、まず予防です。治療前に皮膚のコンディションを整え、薬剤による刺激に打たれ強い皮膚を作っておくと、症状が軽くすみます。

そもそも皮膚細胞は、基底層で作られて、細胞分裂を繰り返しながら徐々に表面へ押し上げられ、表面の角質層まで到達すると、垢になって剥がれおちます。これを約1カ月サイクルで繰り返しているわけですが、ここに分子標的薬が入ってくると、皮膚細胞が強烈なダメージを受けて壊れてしまったり、皮膚としての十分な機能を持たないまま表面に押し上げられてしまいます。

このような細胞が皮膚の表面に現れてしまうと、皮膚表面は荒れてガサガサな皮膚になり、アレルギー物質や細菌が容易に体内に侵入しやすくなったり、さらに細胞内の水分もどんどん蒸発してしまい、皮膚の状態はさらに悪化していきます。

ですから、常に皮膚を清潔で瑞々しい状態にしておくことがとても大切。このような皮膚は打たれ強く、たとえダメージを受けても回復が早いのです。

予防の要は3つの「保」……「保清」「保湿」「刺激からの保護」

まずは、「保清」。皮膚をきれいにすることです。ただし、タオルでゴシゴシこすらない。1番良いのは泡による洗浄です。柔らかい泡を皮膚に載せて優しくなでてあげると、泡が汚れを包み込んで洗い流してくれます。その際、せっけんはノンアルコールで低刺激、無香料のものを使いましょう。

次に「保湿」。ローション、乳液、クリーム、軟膏などいろいろな保湿剤がありますが、乾燥しているときは、深部にまで浸みこみやすいローションタイプを先に塗るのがおすすめ。クリームは、皮膚の表面に被膜をつくるので持続性はあるものの、皮膚の深部に浸みこみにくいので、ローションをしっかり塗った上に、クリームで被膜を作って潤いを閉じ込める、という方法が効果的です。

カギは塗り方。擦りこむのは皮膚を傷つける可能性があるため厳禁です。まず、保湿剤を手にたっぷりとって掌を合わせて体温で温め、皮膚の上から優しく押し当てる。塗り方を正しくするだけで、皮膚の状態が格段に良くなります。

保湿剤を塗るのは1日2~4回が目安です。最低でも、朝のお出かけ前と夜の入浴後。とくに入浴直後の水分をたっぷり含んだ肌に保湿剤を塗ると、皮膚の深部にまで浸みこんでくれます。

保湿剤には様々な種類があります。尿素系、ワセリン系、ビタミン系、ヘパリン類似系など。尿素系は角質を柔らかくする働きがあり、角質が肥厚して固くなるキナーゼ阻害薬タイプの皮膚症状に合っています。傷がある皮膚に塗るとピリピリ刺激を感じることもありますので、その場合はワセリン系などに変えましょう。

最後に「刺激からの保護」。とにかく、皮膚への不必要な刺激を避けるに尽きます。とくに紫外線対策はしっかりと。また、靴は底が厚くてやわらかいソールのものを選んで下さい。ヒールを履くときは、母指の裏や土踏まずに綿を入れて指先への負担を減らします。サンダルは中で足が動いて皮膚への刺激になりますので、甲までしっかり包み込むタイプにしましょう。手の指先を多く使う家事や日曜大工なども、手袋をはめるなどの工夫をお勧めします。

■図3 爪の切り方

爪は、爪周囲の皮膚に食い込まないためにも深爪しないように。引っかからない程度に角を残しながら、少し長めに切ることを心がけてください(図3)。

そもそも、いくつかの分子標的薬は、皮膚障害が重篤であるほど、がん細胞への薬の効果も大きいことがわかっています。もちろん、予防によって軽微に抑えても治療効果は同じ。ならば、心がけ1つで軽微にできれば、それにこしたことはありません。

ステロイドを怖がらないで

実際、皮膚障害が起きたら、すみやかに対処しましょう。まずは、予防時と同じく「3つの保」を続けること。併せて、ミノマイシンなどテトラサイクリン系抗生物質で、つらい症状を抑えることも可能ですから、医師や看護師、薬剤師に相談してみましょう。

爪囲炎になったらテーピングを。これは、爪と周囲の皮膚が摩擦で刺激されるのを防ぐために、爪と皮膚の間を広げるようにテーピングをします(図4)。ステロイドの塗り薬を使う場合は、集中的にしっかり塗って短期間で治す、これが正しい使い方。使い方さえ気をつければ、決して怖い薬ではありません。皮膚障害の頻度は高いので、出たときの対処法を医療スタッフに相談し、あらかじめ薬も処方してもらっておくことをおすすめします。

■図4 爪のテーピング法
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