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マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ! 第79回 自己肯定感がゆらぐとき<苦手なモノ・コトとの付き合いマインドフルネス>

森川那智子 こころとからだクリニカセンター所長
発行:2024年12月
更新:2024年12月

もりかわ なちこ こころとからだクリニカセンター所長。カウンセラー・ヨガ指導家。心療内科と提携し、カウンセリングを中心に、ヨガ、リラクセーション、瞑想を取り入れた療法で、心と体のサポートに取り組む。『なんにもしたくない!』(すばる舎)『リラックスヨガ』(成美堂出版)『心がラクがずっと続くヒント』(青春出版社)など著書多数

歳の瀬は何かと気ぜわしく、温厚な人でもいつもより少し気難しくなりがちです。どんなシチュエーションでも対人配慮を欠かさない人でも、内心イラっとしたり、人にも自分にも厳しくなりがちです。

腰痛や肩こりがひどくなったり、喉の調子がいがらっぽくなったり、便秘や下痢になったり。つまりストレス下の自分に起こりがちな症状がわかっていれば、自分がストレスにさらされていることに気づかされます。

明らかに怒りっぽくなっている、愚痴っぽくなっている、悲観的になっているなどの情緒面の変化が、ストレスサインという場合もあります。

気づいたそのときからだって遅くない、マインドフルネス・エクササイズを取り入れましょう。気ぜわしいときだからこそ、「3分間マインドフルネス」を。

〝忙〟という字をよく見れば、心が亡ぶと書いてある!

〝忙時〟の3分マインドフルネス

脊柱をスーッと立て、目をかるく閉じる。自分の呼吸に耳を傾けるように注意を向けます。

気ぜわしい時期というのは、やらなくてはと思っていることがつぎつぎと頭に浮かんできます。

「○○に行っておかないと……」「そうですか」

流れてきた考えをただ受け止め、また呼吸に注意を戻します。

チッと舌打ちしたくなるようなこと、頭を抱えたくなるようなことも浮かんできます。すぐに対処しないと、というようなことも。

どんな考えがきても、「そうですか」と受け止める。と同時に「いや、こんなことしている場合じゃない」と中断したくなったら、そのことを「そうですか」と受け止める。

なかなか呼吸に注意を向けにくいというときも、その思考の流れに気づき、また呼吸に戻します。

カウンセリングとマインドフルネス

以前、心理学者の河合隼雄の古典的名著『カウンセリングについて』を読みました。カウンセリング理論の創始者カール・ロジャースの「来談者中心療法」について、一般読者にもわかりやすい解説の中で、傾聴することの難しさにふれていました。

来談者に備わっている本来の力を信じて、その語りに耳を傾け、良いとか悪いとか価値判断しないで、ただ「そうですか」と耳を傾け、肯定することの深い意義について説いています。

これはマインドフルネス瞑想に通底すると、心打たれました。

心に痛みや葛藤を独力で解決しようとするとき、どうしても頭だけで考えようとします。こうあってほしい自分がそうではない自分に苛立ち、𠮟りつけ罵倒したり。他人に行えばハラスメント行為と断じられる���うなことを、自分には平気で続けます。

セラピストと向き合うとは、受け止めてもらっているという信頼関係のなかで向き合っています。友人でもない、知り合いでもない、パートナーでも親でもない。最初は見ず知らずの中立的な人と、そのための対価を支払い、時間を決めて向き合います。

セラピストと向き合うのは、自分の心の痛みや葛藤と自身が向き合うためです。そこには安全で静かな時間が必須です。

マインドフルネスとは〝1人で行うカウンセリング〟と言ってもいいでしょう。

〝心の筋力トレーニング〟という指導者もいます。

自分に備わっている本来の力を肯定し、信頼していく営みには、心の表層を雑多に表れる思いや考えの流れに気づき、しかし、そのどれにも飲み込まれず(飲み込まれている瞬間に気づき)、自分に戻れるということです。

<苦手なモノ・コトとの付き合いマインドフルネス>

それではマインドフルネスの実習を行いましょう。

なかなか習慣にならなくて――そうですか。でも今やってみましょう。今回は苦手なモノ・コトをどう扱うかをテーマにした実習です。

①チームメイトがちょっとミスをしたときなど、「ドンマイ、ドンマイ」と言って励ましますよね。Do not mind、「気にするな」といった意味合いです。
しかし、ここではマインドフルネス、すなわち「充分に気にする」です。
「また、ミスしちゃった」と、そのシーンが繰り返し浮かんでくることがあります。その都度、ただ受け止め、呼吸に意識を戻すのですが、何度も繰り返されるような場合の提案です
②そのことが思い浮かんだ瞬間に沸き起こってくる体の変化、例えば、首や肩や腕の筋肉感覚に注意を向けます。いくらか心の痛みを伴うことだったら、肩や腕の筋肉がこわばります。緊張に気づくことで、逆に痛みを伴うことなのだと気づけます
③緊張している身体の部分に注意を向けて、呼吸します。すると次第に緊張がやわらいできます。でもそれは緊張をやわらげるための行為というより、言いかえると目的志向的ではなく、プロセス志向的な態度で身体の緊張にただ注意を向けるということです

 

がんサバイバーやそのご家族でヨガのご体験がありましたら、ぜひ体験記などをお寄せください。kokokara@center.email.ne.jp

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