マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ! 第80回 蛇は東洋では再生や復活の象徴<コブラのポーズ>

年の初めに巳年にちなみ「コブラのポーズ」を取り上げます。
以前にも取り上げましたが、もう一度じっくりと。
再生を象徴する蛇
ところで蛇というと、西洋ではキリスト教の影響を受け、エデンの園でイヴに禁断の果実を食べるようそそのかした存在のため、「邪悪」や「誘惑」といったネガティヴなイメージで表現されるようになりました。しかし、古代ギリシャでは蛇は癒しの力を持つ存在でした。医学のシンボル「アスクレピオスの杖」は蛇が絡んでいるデザインです。
一方、東洋では蛇が脱皮を繰り返すことから、「再生」や「復活」の象徴として表現されてきました。ヒンドゥー教の代表的な神様シヴァ神(ヨガを創出したといわれている神様です)は、髪にコブラがまきついている姿がよく描かれます。守護や神聖の象徴なのです。
それでも、実際に蛇に出くわすと腰が抜けるほど驚かされます。以前、目黒の「自然教育園」に行ったときのこと。寒いけれど天気のいい冬の昼下がり、池に張り出した大きな百日紅の枝に、ほとんど動かず日向ぼっこでもしている風情の、前腕くらいの太さをした青大将に気づいたとき、それはもう声を失いました。周りに何人か人はいたのですが、うかつに話題にしてはいけないような圧倒的な存在感を放っていました。
静かに後ずさりしてその場をあとにしました。相手は熊じゃないのに。
しなやかさと力強さを
「私の生活は、ほとんど仕事を軸に組み立てられていました」
家庭を持ちながら、子育てをしながら、しかし、仕事では年々重責をまかされるようになっていたMさん。
50歳の健診で、ほんの小さながんが見つかり、標準治療を開始されました。ステージ1の乳がんで、部分切除も十分な小ささではありましたが、全摘出を選び、生検の結果、化学治療になりました。
「こんなときだから、無理をしないでおこう。可能な限りしっかり休もうと思いました」
入院、手術、傷の回復、化学療法という大変な経験をしながら、会社に行き仕事するというそれまで当たり前に過ごしていた人生が、いかに時間もエネルギーも会社での仕事にさいていたかに、あらためて気づかされたというのです。
「定年退職後の人生の予行演習をさせてもらったというか、それが大きな収穫でした」
日が高いうちにマーケットに買い物に行き、魚や野菜を選び、「楽しいんですよね。考えてみれば、1日のうちの1番いい時間を会社で仕事することに使っていたものね。仕事が終わってからの限られた時間で買い物を済ませている生活と比べ、生活者という実感が持てるの」
仕事で得ていた充実感を失くしたら「どうやって生活していくのだろう」と定年後の人生に抱いていた漠然とした不安。定年後も契約社員で��事を続けることになるのだろうとなんとなく思っていたこと、会社で仕事を続けるのが一番の安全策であると思い込んでいたこと、それらがこの病気休職中に、働くことは好きだから何かやっていくと思うけど、「別に会社を離れてもいいのかも」と考えるようになったというのです。日々の暮らしの充実は、そういうこととは違う次元のことだと思えたそうです。
「それにがんを患いながら、10年後、20年後の人生を平気で考えてるってすごいですよね(笑)」
もともとしなやかで力強いMさんでしたが、ひと皮もふた皮も脱皮して「再生」という言葉がふさわしいくらいだと思ったものでした。
がんを体験することは、本当にその人固有の体験です。家族がいてもサポートがあっても、身体は激変を体験し、全身で適応しようとたった1人で闘っています。
そうしたつらく厳しい体験ではあっても、その体験を通して「再生」につながる気づきがもたらされることもあるのですね。だからと言って、無理やりのようにポジィティヴにとらえる必要はもちろんありません。
<コブラのポーズ>はコツが掴めてくると、しなやかさと力強さ、そして癒しを感じられるポーズです。寒さで丸まりがちな背中を優美に伸ばせます。
<コブラのポーズ>
今回は、うつ伏せで下背部を意識集中した呼吸からはじめます。背面の腰、腎臓がある場所に掌を当ててみてください。手の暖かさが気持ちいい場所です。
①うつ伏せの姿勢で穏やかに呼吸します。額の下に手を重ね、肩や腕を緩ませ、両かかとをいったん合わせてから緩めると、全身リラックスできます。
吐くときに背中を沈めるように深く息を吐きます。吸うときは背中の、さっき掌を当てたところ(下背部)を持ち上げるようにして息を吸う。ていねいにゆっくり3回
②スタートの姿勢をとります。
胸の脇に腕を立てて手のひらを下に向けます。特段意識しないでいると、肘がゆるっと開き加減になるので、脇を締め、肘を後方に引きます。ポーズが進むと両肘は後方やや下方に引くように意識します。両かかとを閉じ、肛門を閉じます。顎を引き、額をマットにつけます。このスタート姿勢がマインドフルにできれば、コブラのポーズは7割完成です
③はじめに息を軽く吸って、吐きながら顎をジワーっと前に伸ばします。喉を十分に伸ばしますが、まだ顎はマットについたままです
④息を少しずつ吸いながら顎から上げていきます。首の一番上の椎骨から順々にマットから離して、持ち上げていくイメージで。背筋を使って、背骨の反る力だけで背中を起こします。
息を継いで、腕の力を使い、へそをマットにつけたまま反れるだけ反らします。このとき肘はやや下方に引くようにします。かかとはともすれば開きたくなるところですができるだけ閉じて、腿の内側、肛門を閉じています。下背部に刺激がもたらされますが、意識集中するだけでもOK。この姿勢を保ちながら4~8呼吸
⑤順序を逆に②に戻し、①のうつ伏せくつろぎのポーズを取りリラックス。下背部に意識集中して呼吸で息を整え、もう一度
がんサバイバーやそのご家族でヨガのご体験がありましたら、ぜひ体験記などをお寄せください。kokokara@center.email.ne.jp
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