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マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ! 第82回 3分間でボディスキャン<ボディスキャン:肩から上>(後編)

森川那智子 こころとからだクリニカセンター所長
発行:2025年3月
更新:2025年3月

もりかわ なちこ こころとからだクリニカセンター所長。カウンセラー・ヨガ指導家。心療内科と提携し、カウンセリングを中心に、ヨガ、リラクセーション、瞑想を取り入れた療法で、心と体のサポートに取り組む。『なんにもしたくない!』(すばる舎)『リラックスヨガ』(成美堂出版)『心がラクがずっと続くヒント』(青春出版社)など著書多数

ボディスキャンは、自分の身体を新鮮にみずみずしく感じるきっかけとなります。わたしたちは、「たった1回きりの人生」と口にはしても、この一瞬一瞬のかけがいのなさを思うこともなく、自分の身体にまことに無頓着に生きています。しかし、病気にかかると身体は覚醒します。

いつかではなく、今ここで

がんを患ったことで、「自分が今日ただ今、こうして生きていることは奇跡のようなものなのだと気づいた」と多くのがんサバイバーは言います。

けれども術後1年、2年、3年と時間が経つうちに、そのことを忘れていることが増えていきます。それはそれで順調な回復の証です。

けれども、ときには自分の身体を丁寧に味わうことが必要です。たった1回きりの人生だから。いつかではなく、今ここで。

その具体的な手立てが、マインドフルネス・ヨガでは用意されています。それがボディスキャンです。

ボディスキャンでは、何もしない。どこも動かさない。ただ呼吸とともにゆっくり注意を向けていくことで、自分の身体の部分と部分がつながり、部分は全体とつながり、統合され、しかも一瞬も滞ることのない、いわば流れとしての人体、今この瞬間瞬間に生きている自分という存在を感じられるで、やってみてください。

マインドフルネスはヨガの中心的概念

私が初めてマインドフルネスという言葉に出合ったのは1993年、今から30年以上前になります。『瞑想健康法』というタイトルの本でした。作者はジョン・カバット・ジン(Jon Kabat-Zinn)、よくありがちなハウツー本というイメージがして、購入したまましばらく積読でしたが、読み始めたときの興奮と衝撃は今も忘れられません。私がヨガに感じていたことが、そこに書かれていたからでした。ヨガの中心にある概念がマインドフルネスという言葉で表されていました。

マインドフルネス自体はヨガ(ヨガを抜かした説明をよく目にしますが、ヨガこそなのです)や仏教に起源を持つ概念であり、数千年の歴史がありますが、カバット・ジンが1979年に創設した「マインドフルネスに基づくストレス低減法(MBSR)」は、ストレスや痛みの管理に効果的なプログラムとして広く認知され、今では世界中で実践されています。

そのカバット・ジン博士が来日し、明治記念館で開催したワークショップに参加した折、縁あって博士とお話しする機会を得ました。ごく短い時間です。

博士は、自分の妻もヨガティーチャーをしていると微笑み、「ヨガをして���る人にはマインドフルネスはごく当たり前のことでしょう。でもわたしは身体が固いので、〝今ここ〟を味わうのにこんな複雑なシステムをつくる必要がありました」と、ユーモアを交えて、マインドフルネスを基にしたシステムを構築し、実践と研究を重ねることとなる、そもそものエピソードを披露してくれました。

『瞑想健康法』は『マインドフルネスストレス低減法』という書名で北大路書房より復刊されている

くつろぎのポーズから始まった連載

「がんサポート」いうがん患者さんとその家族をサポートするための月刊誌に、「森川那智子のゆるるんヨガdeほっ!」というタイトルで連載を始めたのは2009年11月号からでした。その最初に紹介したのが「くつろぎのポーズ」でした。

その後、2018年6月からは「マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ!」と改題して連載を続けてきました。

「くつろぎのポーズ」は、ヨガのもともとの言葉の意味は「死骸のポーズ」、わたしは「完全なくつろぎのポーズ」という言葉をつかっていますが、最終回のボディスキャンと同じポーズです。なんという一致でしょう。

<ボディスキャン:肩から上>(後編)

 

①仰向けになって、両足は腰巾よりやや広めに開き、両腕はわきを緩めてマットに緩やかに伸ばし、頭の下には低めの座布団なりタオルを敷きます。つまり、ヨガ・セッションではなじみ深い「完全なくつろぎのポーズ」です。ヨガ・セッションではとくに頭の下に何かを敷くことはしませんが、ボディスキャンのエクササイズでは時間をかけて(通常15~20分)行うので、猫背や背中が肉厚だと、仰向けになると顎が上がり、頸から後頭部にかけて収縮してしまいます。くつろぐことが目的ではないのですが、緊張を強いる要因は避けたい。そのためのクッションです
②前編から続けて行ってもいいし、後編だけ行っても「頭がすっきりとする」との感想が多いので、試してください。以前紹介したしたとき、椅子を使った姿勢をお薦めしましたが、それもOKです
③最初に肩、首の付け根あたりに注意を向けます。ネックレスをしていたらそのラインに沿って、今という瞬間にどんな感じかするか、呼吸とともに1周します
④注意集中のスポットライトを頸部に当てます。とくに何も感じなくてももちろんOK。また違和感を感じたら、どんな違和感か、冷たいのかごわごわした感じか、呼吸と同調しながらただ感じて受け取っていきます。喉に注意を向けます。途中で咳が出ても、そのままスキャンを続けていきます
⑤次はアゴ、口の中、唇です。前の④のときに感じたことをいったん忘れましょう
⑥頬、そして鼻。鼻の穴を通り抜ける空気を感じます
⑦耳、耳の奥。同じくらいの位置にある頸椎の先端が頭蓋骨にジョイントされています。側頭部もスキャンしていきます
⑧目と目の周り
⑨脳を底部からゆっくりスキャンするように注意を向けていきます
⑩額に注意を向け、脳の内部も静かにスキャンしていきます。頭皮は感覚がありますが、脳には体感がありません。でも呼吸と同調しながら脳の内部をスキャンして。静かに、静かにです
⑪動画では終了はカットしました。ご自身のペースでゆっくり目を開き、終了します

 

がんサバイバーやそのご家族でヨガのご体験がありましたら、ぜひ体験記などをお寄せください。kokokara@center.email.ne.jp

こころとからだクリニカセンター
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