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がんになっても快適に暮らすヒント Vol.2 病院で行うアピアランス(外見)支援の効果
プログラム受講後は患者さんのQOLが上がり
家族にもよい効果がもたらされた
山崎 相互に良い効果をもたらしたのですね。さて、気になる研究の結果は?
池田 まだ分析途中で中間報告になります。正式な実施期間は2014年5月から2015年8月までの17カ月間で参加者72名中、有効数は57名。分析が終わっているのは1月までで参加者43名中有効数は32名です。そのうちの28名は、ご家族にもアンケートに協力をしていただき、ペアデータを取っています。ご家族は、ご主人や成人したお子様が協力をしてくださいました。
分析は、がん患者特有のQOLを評価する尺度FACT-Gで行い、プログラム実施前後のQOLに有意な差が認められました(図表3点)。

QOLスコアが有意に上昇し、受講後1カ月後にも受講前よりも高かった

「精神状態」については、受講直後も1カ月後も、上昇していた
患者さんは、Beauty Ringの1回目では86%が脱毛しておらず、2回目で抜け始め、終了1カ月後には約80%が脱毛しています。回を追うほど化学療法で体力も落ちていますから、通常はQOLスコアが下がるといわれています。しかし、研究参加者では、プログラム受講直後は有意にQOLスコアが上がっていて、プログラムを終えた1カ月後もプログラムを受ける前よりは上がっていました。とくに、FACT-Gの内訳の中でも「精神状態」のスコアが継続して上がっている点も注目したい点です。
山崎 治療で脱毛が進み、体調も下がっているのに、多くの人のQOLが維持され、気持ちが上がっているということですね。ご家族に関してはいかがでしたか?
池田 家族は第二の患者と言われ、抑うつ状態になりやすいのですが、WHO5という、うつの尺度で測ったところ、28ペアのうち、19人の患者さんはスコアを上昇あるいは維持してました。その19人の患者さんの家族をみてみると、13人のスコアが上昇あるいは維持していました。プログラムに参加していない家族にも効果が表れたという結果を得られたことは、家族看護の研究をしている私としても嬉しい結果でした。前向きに治療に取り組む妻や母をみて家族で会話がはずんだという記述も多く寄せられました。この結果は海外の学会などでも発表しましたが、とても良い反応でした。

プログラムに参加していない家族にもいい効果が表れている
山崎 患者本人だけでなく家族への効果がわかったことは、本当に大きな成果だと思います。
池田 はい。今後はこの結果をどう現場で生かしていくかが、次の課題だと思っています。
山崎 多くの患者や家族のQOLに役立てられたらうれしいです。
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